第22話 遊園地でドッキリ!乗っ取られたヒーローショー!
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登場前にステージの上部にいるリーブス5人。イエローとピンクのリーブレスが振動。隣り合わせにステージを覗き込む二人。
輝 in PL「まずいんじゃない?」
黄龍 in YL「ああ‥‥」
スタント1 in RL「どうしたい? 新入りさんたち、心配か?」
スタント2 in BL「大丈夫だよ。下、エア、引いてあるんだし」
黄龍 in YL「ははっ、そーっすねー! ほらー、怖がんなくていいってさーっ」
黄龍、輝の背中を叩くと見せかけて強く押す。輝、ステージに、落ちる。

輝 in PL「わあっ」スタント1、2「おいっ」
黄龍 in YL「やっべーっ だいじょーぶ〜?」(続いて飛び降りる)
輝、エアマットの上に見事に着地、続いてその隣に黄龍が飛び降りてくる。
輝 in PL「誰が怖がってんのさ、もうっ」
黄龍 in YL「悪いって〜。さ、あいつら助けるぞ!」

尻餅をついたハリケンブルーと、そこに襲いかかろうとしているマゲワッパ
ハリケンブルー「わあっ」
輝、間に飛び込んできて、マゲワッパの腕をスティックで受け止める。
ハリケンブルー(小声で)「ま、まだ、出番じゃないだろ?」
輝 in PL「上から落ちちゃったのっ 早く離れてっ」
マゲワッパがなおも押し込む。スティックが折れる。輝、捕まる寸前で離脱。
(小声で)「な、なんて力だ‥‥。まさかっ」

ハリケンイエロー「わっ や、止めろ‥‥わああーっ」
マゲワッパに両腕を掴まれ持ち上げられるハリケンイエロー。横から飛び込んでくる黄龍。体当たりするように、マゲワッパを突き飛ばす。
黄龍 in YL「目ぇ 覚ませって〜!」
掴みかかってくるマゲワッパの手をかわしてストレートをぶち込むが効かない。
黄龍 in YL「いってー!!」(拳を振って)
マゲワッパ、襲いかかってくる。黄龍身をかがめてそれをよけると、ハリケンイエローを押しやるように離れる。
ハリケンイエロー(小声で)「な! なんで、あんたらだけ?」
黄龍 in YL(小声で)「あとも、すぐ来るってば! それよりこいつらヘンだぜっ」

いきなりのYLとPLの大活躍に、会場中大歓声。
と、そこへ次々に飛び降りてくるRL、BL、GL
レッドリーブス「ジャカンジャ! 卑怯なマネは‥‥」
パペ in 怪人1(最後まで聞かずに)「オズリーブス!! 待ってたぞーっ いけーっ」
怪人1とマゲワッパ1子供を2名押さえたまま。かなり怯えている子供。
ハリケンには見向きもせずに、オズリーブス5名に襲いかかる怪人2とマゲワッパ4人。

===***===

舞台裏、楽屋の様子をうかがう、赤星、黒羽、瑠衣。ハリケンの3人がよろめいて戻ってくる。
ハリケンレッド「な、なんかあいつらヘンですよ!」
スタッフ1「誰が、ホン変えたんだ!」
ハリケンイエロー「ホンとかそーゆー問題じゃないっすよっ」
スタッフ2「また昨日みたいなことが?」
演出家「しかし、全員でおかしくなるなんてありえん。ちょっと力が入りすぎたんだろう。役者が乗ってるのはいいことだ! さあ、君たちも早く戻りたまえ!」

黒羽(進み出ようとする赤星を引き止め)「着装して行こう。その方が話が早い」
赤星「確かに!」
瑠衣「さすが黒羽さん!」
3人「着装!」
3人の着装


レッド「皆さん!」
演出家「え? 君たちまで戻って来ちゃ、ダメじゃないかっっ」
レッド「そーじゃなくて! 我々はオズリーブス‥‥」
演出家「そんなことはわかっとるっ」
ピンク「もうっ めんどうだわっ あたしたち、こーゆーものです! マジカルスティックっ」
ピンク、いきなり側にあったベンチにスティックをうち下ろす。ベンチ、ばきりと割れてブスブスと煙をあげる。

スタッフ1「せ、先生‥‥。舞台‥‥ちゃんと5人とも居ますって‥‥」
演出家「げ‥‥ほ‥‥ほんもの‥‥?」
レッド(ピンクの行動に一瞬固まったが持ち直して)「‥‥‥‥そうです。で、早速ですが、舞台に出ている方々、スパイダルに操られている可能性があります!」
演出家「なっ、なんですって!」
ブラック「奴らは子供を人質にとっている。ヘタに刺激すると‥‥‥‥」

会場の子供たちの悲鳴。オズリーブスたち、マジでやられている。
レッド「ま、まずいっ やつらの狙いは俺達だ! やられちまうぞっ」
演出家(舞台に飛び出そうとするレッドをとめて)「今、あなた達が出ていったら、ショーを真実だと思っている子どもたちの夢は丸つぶれです!」

(いきなり声が割り込む)「いい方法があるわ!」
皆が振り返ると、トレンチコートにサングラスの小柄な女性(実は茜)
レッド「ね‥‥」
ピンク「あ‥‥」
ブラック(レッドとピンクの口をぱっとふさいで)「ご協力感謝します。で、その方法とは?」
茜「あなた達がハリケンジャーのスーツを着て舞台に出れば、問題はないわ!」

演出家(驚く3人を後目に)「な、なんて名案なんだっ!! (ADに)君! すぐ予備のスーツを用意して! (3人に)で、皆さん、その間に急いでこれを覚えてください!!」
三人(いきなり紙を渡されて)「???」
演出家「ハリケンのキメ台詞です!!!」

===***===

レッド、ブラック、グリーンの3名のリーブス、ノックアウトされている。会場中、悲鳴と声援が入り交じっている。イエローとピンクに怪人とマゲワッパたちが迫る。
パペ in 怪人1「へへーっ あと2名でおしまいだー。楽勝だぁーっ」
輝 in PL(小声で)「ど、どうする、エイナっ? こうなったら着装するしか‥‥」
黄龍 in YL(小声で)「ここで着装したら、完璧ばれるぜ。くっそー、みんな何してんだよっ」

(と、声が響く)「そこまでだっ」(ステージに走り込んでくるハリケン3人!)
レッド in HR「やい、てめーら‥‥っ! とにかく! これ以上好き勝手にゃさせねーぜ!」
パペ in 怪人1「なにっ きさまら、倒したはずだっ」

レッド in HR「俺達、‥‥‥ハリケンジャーが、そう簡単にやられるかっ!」
パペ in 怪人1「だからっ ハリケンジャーは、おいらたちだっ」
レッド in HR「へ? ちょ、ちょっと、そーゆー話だっけ?」
ピンク in HB「いーかげんにしなさいよっ そんな正義の味方がいるわけないでしょっ」
パペ in 怪人1「ハリケンジャーはオズリーブスと戦うおいらたちだーっ!」

輝 in PL「うそ‥‥。りっ‥りーだーたち‥‥だ‥‥‥」
黄龍 in YL「なんかややこしくなってきたな〜。よしアキラ、とにかくでかい声出すなよ。黙って俺様についてこいって!」
輝 in PL「はいっ エイナさんvv」(ピンクのかわいいポーズとかわいい作り声で)
黄龍 in YL「げっ‥‥‥‥。てーめー、あとで覚えてろ‥‥‥‥」

ブラック in HY「なにか勘違いしてるようだな! 日本にはな! たくさんの熱い心を持ったヒーローがいるんだ! お前さんたちと戦うのはオズリーブスばかりじゃない! 貴様ら、それでもハリケンジャーだと言い張るなら、正式に名乗って見ろっ」
パペ in 怪人1「え? な、名乗りだぁ――っ???」
ブラック in HY「できないなら、こっちからいくぜ!」

レッド in HR「風が哭き、空が怒る、空忍ハリケンレッド!」
ピンク in HB「水が舞い、波が踊る、水忍ハリケンブルー!」
ブラック in HY「大地が震え、花が詠う 岡忍 ハリケンイエロー!
        人も知らず世も知らず、影となりて悪を討つ。忍風戦隊!!」
3人「ハリケンジャー!!!」

会場歓声。舞台袖で見ている演出家とコート姿の茜。
演出家「よ、よかった、決まった!」
(見ているうちに盛り上がってなぜか関西弁になっている)「みんな、やるやないか! あとは、うまいこと子供助けて、リーブス助けて、はよチェンジせな!」

輝 in PL「黒羽さん、かっこいいーっ」
黄龍 in YL「長台詞が赤星サンに回らなくてよかったって感じ? よしっ こっちもいくぜ!」
名乗りに見とれているマゲワッパの隙をついて子供達を救出する黄龍と輝。
パペ in 怪人1「逃がさんぞー!」
黄龍たちに襲いかかる怪人1。作り物の鎌のような武器を振り下ろすが、飛び込んできたレッド、腕で受けとめる。その腕を一瞬だけ金色の光が包む。

黄龍 in YL(それに気付き)「なーるほど!」(キメた口調で)「恩にきるぜ、ハリケンレッド!」
レッド in HR「いーから、早く行けって!」(スタッフのいない舞台下手を示す)
黄龍 in YL(やっぱりキメた口調)「ピンク! 子供たちを頼む!」
輝 in PL(かわいい声で)「はいっ」
2人のやりとりに、ずっこけそうになるレッド。黄龍、気を失ったグリーンリーブスを担ぎ上げ、子供を庇うように舞台袖に消える輝の後を追う。

ピンク in HB(痛んでいるブラックリーブスに声をかけて肩を貸す)「しっかりして下さいっ」
連れていこうとしたところに怪人2が暴れ込んでくる。そこに飛び込んでくるブラック in HY。怪人2を押しとどめる。
ブラック in HY「くっ なんて力だっ」
ピンク in HB「だ、大丈夫っ あ‥‥、イ、イエロー?」
ブラック in HY「彼を早く! あっちだっ」(黄龍たちの消えた側を示す)

ステージ上で戦うレッド in HRとブラック in HY。レッドリーブスを救出しようとするが、怪人2名とマゲワッパに妨害されて思うようにいかない。

(舞台袖で)「ああ、あかんで! こら、先生! 早いトコ舞台に発煙筒でも放り込んでや!」
演出家「かっ、完璧だ! 貴女! 次回のショーでおぼろ役やる気ありませんかっ!?」
(演出家の襟元をつかんで揺さぶる)「んなこと言ってるまに、早よしーなっ!!!」

ステージに仕掛けてあった発煙筒が一斉に煙を噴き上げる。
パペ in 怪人1「こ、今度はなんなんだーっ」

煙が薄くなった中、ステージトップに立つ5人のシルエット。本物のオズリーブス登場。
ブラック「待たせたな、ジャカンジャに化けたスパイダル!」
イエロー「あんたたちのお相手は、やっぱ俺たちっしょ!」
ピンク「小さい子をまきこむなんて、絶対許さないわっ」
グリーン「今度は容赦しないよ! 覚悟してっ!」
レッド「地球の平和と子どもたちの夢は、俺たちが護る! 龍球戦隊!」
5人「オズリーブス!!!」

5人ステージ中央までいきなり飛び降りてくる。会場大歓声。
パペ in 怪人1「な、なんで、倒した連中がぞろぞろ出てくんだーっ」
グリーン「子どもたちを助けるために、ちょっとお芝居してただけだいっ」
ブラック「そろそろ本気出させてもらいましょうか!」

パペ in 怪人1「よーし! こーなったらこっちもだー! 元に戻って、かかれーーっ」
マゲワッパ5人、ジャンプ一瞬、アセロポッドの姿に変わる。会場、どよめく。
レッド「これでこっちも思いっきりやれるぜっ!」

襲いかかってくるポッド。受けるレッドとイエロー。
レッド「気をつけろ! 速いっ」
イエロー「まったくっ」
イエロー、かわしてポッドの鳩尾に一発。相手のストレートを払ったレッド、膝蹴りを決める。

ブラック「まわせっ」
レッド「頼むぜっ」
イエロー「ほいよっ」
レッド、イエロー。ポッドの腕を掴んで振り回すように3人の方へ

グリーン「ルートンファーっ」
ピンク「マジカルスティック!!」
ポッドの額にトンファーとスティックがヒット。舞台奥にいるブラックに押しやる。
ブラック「さーて、こっちでオネンネしてもらいましょうか!」
ブラックがポッドを次々に払い倒す。倒れたポッド消える。会場はまたどよめき。「どーやってんだっ」「きっと下に潜れるようになってるのよっ」等々

そのブラックに襲いかかろうとするアセロポッド。
イエロー「リーブチャクラム!!」
ステージの端からチャクラムが飛び、ポッドを倒す。
ブラック「はい、もういっちょう」
ブラック、ポッドを引き倒し、ポッド消滅。会場の前列の席上を飛んでイエローまで戻ってくるチャクラム。子供達大喜び。

パペ in 怪人1「くっそー! こうなったらガキどもを襲えーっ!」
2体のポッドが会場側へ行こうとする。
ピンク「待ちなさい!」
グリーン「行かせないよっ」
グリーンとピンク、ステージ端からポッドの頭上を飛び越えて、観客席とポッドの間に立つ。

レッド「あ、おいっ」
ブラック「待つんだ!」
トンファーとスティックがポッドの額にヒットしようとした瞬間、2体のポッド、後ろから足をすくわれて倒れる。払ったのは後ろからすっとんできたレッドとブラック。
ピンク「あらっ」
グリーン「そうだったっ」

ブラック「お前さんがた、職場放棄はいかんな」
レッド「戻ってもらうぜっ!」
レッドとブラック。倒れたポッドの腕を掴んでぐいっと引き上げると、それを肩に担ぎ上げ、ぶんまわし、ステージ奥に投げる。
イエロー「は〜い、お帰りなさいってねーっ」
ポッドを押さえ込み、次々に額にチャクラムを打ち付ける。ポッド消滅。
イエロー「わわっ!!」
後ろからいきなり怪人1に掴みかかられる。怪人2も迫る。ピンチ! だが、他の連中を見ると‥‥
イエロー「おっ、おいーっ 何やってんだよっ」

なりゆきで会場に降りてしまった4人。子供達の握手責めに合っている。
子供1「がんばってね、ピンク! いっつも応援してるんだよ!」
ピンク「ありがとv すっごく嬉しいわvv」
子供2「ボク、体操やってるのっ グリーンみたいになれる?」
グリーン「きっと、なれるよ! ちゃんとがんばればねっ」
子供3「ひとみね、ブラックの大ファンなのー! 感激っ」
ブラック「それはどうも。じゃあ、お嬢ちゃん、ちゃんと席ついてて下さいよ?」
子供4「レッド! ぼくも仲間にいれてよっ!」
レッド「え!? あ、じゃ、じゃあ、ちゃんと勉強してだなっ‥‥‥‥」

イエロー「こらー! 4人ともっ まだ終わってねーってのっ」
レッド「わりいわりいっ じゃ、みんな! まだ残ってるから、応援してくれよなっ」
4人、慌ててステージに飛び乗る。レッドとブラック、イエローから怪人を引きはがす。操られた2名の怪人vsリーブス。

グリーン(小声で)「この人達はきっと操られてるだけだよ。気をつけてっ」
ブラック(怪人2のほうに顎をしゃくってレッドに)「とにかくわかりやすい方から片づけるか」
レッド「よし、まかせろっ!」

レッド、怪人2に突っ込んでいく。素早い動きを見せる怪人2だが、レッド、腕をかいくぐって、拳をぶち込む。
レッド(崩れた怪人を抱きとめて)「こんなもんかな? やり過ぎてねえといいけど‥‥」

パペ in 怪人1「くっそーっ」
ブラック(怪人1に向き直って)「で? お前さんはいつまでそこにいるつもりだ?」
パペ in 怪人1「な、なんのことだー」
イエロー「わかってんだぜー。そいつにとりついてやがんだろーがよー?」
ピンク「いい加減、出てきなさいよっ」
グリーン「卑怯だよっ」

ブラック「待て待て。相手が小さくなって出てきて、その上、万が一飛べるようなヤツだとやっかいだ。挑発するんじゃない」
パペ in 怪人1「へ? 小さくて飛べるとやっかいなのか?」
イエロー(ブラックをちらりと見てその意図を悟り)「そーゆーこと。今の状態ならあっさり倒せるけどなー。小さくて飛べると、ちょーっと手に負えないぜ〜?」
パペ in 怪人1「よーし! 驚くなよっ」
パペッティア、怪人1の頭の上に出てくると、だっと飛び上がる。崩れる怪人1をイエローが支える。

ブラック(それを少し見送ってつぶやく)「‥‥やれやれ‥‥。だが見逃しちゃあ、やれんな」
ブラック(おもむろに矢をつがえて)「ブラックチェリー!!」
空中でパペッティア、爆発。

5人ステージ中央に集まる。会場から大歓声と拍手。思わず手をふる5人。
と、そこに上手から何本もの発煙筒が投げ込まれる。放り込んでいるのは茜。
レッド「撤収だ!」
ブラック「イエローとグリーンは、戻って死んだフリしてたほうがいいな」
ピンク「あと、もうひとがんばりねvv」
イエロー「そりゃねーよー」グリーン「ほんとっ」

煙が晴れると、ステージには誰も居ない。子供達のオズリーブスを呼ぶ声だけが響き渡る。


===***===

下手の控え室。黄龍と輝が、あとの沢山のスタントを助け起こしている。マゲワッパ・スタントも裏でのびていたのだった。
演出家「大丈夫かっ」
黄龍「ああ、センセイ。怪人役の人、救急車で運ばれたよ。警察病院だって。でーも、みんなもけっこうやられちゃったねー。一応病院で見てもらったほうがいいと思うよ〜。」
演出家「君たちはケガは?」
輝「オズリーブスに助けられたから助かったけど。でも、危なかったよ、おじさん」
演出家「で! 本物のオズリーブスはどこに行ったんだっ!」
輝「知らないよー。とにかく舞台から出てけって、それだけしか言われてないもん」
演出家「残念だっ 来週の出演を依頼しようと思ってたのにっ」

黄龍(こけて)「ちょ、ちょっと、センセイさ。そりゃ無理っしょ!」
演出家「そーいえば、本物のイエローリーブスのしゃべり方も、君に似ていたな」
黄龍(焦る)「え? そ、そうだった? いやー、嬉しいな〜! じ、実は俺様、アイツの隠れファンでさー けっこー意識してマネしてたんだよね〜」
演出家「そうだったのか。しゃべり方を注意して悪かったな。たぶん本物のイエローは君より大分しっかりしてるんだろうがな。スーツを着た君とはよく似ていたよ」
黄龍(憮然たる表情で)「あ、ありがとさん‥‥」(輝、笑いこらえている)

演出家「しかし残念だー! また本物に出演してもらえたら、こんなに凄いことはないのに! せめておぼろさんの彼女だけでも捕まえたかったなぁ‥‥」
(微笑んで)「おじさん、ほんとにヒーローショーの仕事、好きなんだね」
演出家「子供にはヒーローが必要なんだよ。ヒーローの生き様を心に刻んで、忘れなければ、きっとまっすぐ歩いていける。くじけそうになった時も、がんばってたヒーローのことを思い出して欲しいんだよ! だから、私は、たとえマンネリと言われようと、まっすぐに頑張るヒーローを、子供達に見せ続けたい。子供の夢を作り続けたいんだ!」

(ちょっと感動して)「おじさん‥‥」
演出家「そうだ、君たち、しばらくここでバイトする気はないかな?」
黄龍「残念だけど、俺達、他に仕事、あるからさ」
演出家「そうだな。あ、これ、今日のギャラだ。突然に無理いってすまなかった。助かったよ。よーし! みんなとにかく病院だ! でもって次は水曜日だぞーっ」
スタントたち「おーっ」
身体を押さえながらよたよたと出ていくスタントたちと、それを助けたり声をかけながら出ていく演出家。黄龍、輝、微笑んで見送る。

===***===

翌朝、森の小路「森の小路」。朝食の片づけ中。カウンターの中で洗い物をしている黄龍が、皿を一枚落として割る。

黄龍「あーあ」
瑠衣(カウンターを拭きながら)「もー、瑛那さんったら‥‥」
赤星(奥から出てきて)「どーしたー?」
黄龍「ゴメンって。皿、一枚割っちまった」
赤星「へ? 皿? い、いい。気にするなっ」
黄龍「でもさ、これ、せーっかくの十枚揃い‥‥」
赤星(何か言いかけた瑠衣の口をふさいで)「いーからっ。さっ、片づけだ、片づけっ!」

黒羽(瑠衣に近寄って)「瑠衣ちゃん‥‥旦那、どうしたんだ?」
瑠衣(くすくす笑って)「今朝ね、朝の支度しながら、赤星さんに話してあげたの」
黒羽「何を」
瑠衣「四谷怪談と番町皿屋敷のあらすじ」
黒羽「じゃ、オレの目玉焼きが焦げてたのも、サラダにやたら胡椒がかかってたのも全部そのせいか?」
瑠衣「だって、常識として、知っといた方がいいと思ったんだもん‥‥」
黒羽「‥‥‥‥まだ道遠しってわけですかい‥‥。ところで、坊や?」

(卓上の小さな観葉植物の鉢に水をやりながら)「なあに、黒羽さん」
黒羽「オレとしては、どうもその小指が気になるんだがな」
輝の水差しの取っ手を持つ手、小指が立っている。
輝「あー、昨日の後遺症だー‥‥」(いきなり思い出してがっくりと疲れる輝)「もー、信じらんないー」
黄龍(にやにやしながら)「でも、テル〜。お前、すっげー似合ってたぜ〜」
輝「なんだよっ エイナッ」

黒羽「そこまでだ、二人とも。まったく、こんなところをあの子供達が見たらがっかりだぞ」
瑠衣「でも‥‥みんな、ほんとにほんとに信じてたよね。ハリケンジャーもオズリーブスも‥‥」
赤星「俺もガキん時、ヒーローごっこして、よく高いとこから飛び降りたりしてたっけ」
黒羽「それこそ『危ないからオズリーブスのマネは絶対にやめようね』のクチだな」
黄龍「そりゃ、いいぜ!」(5人とも大笑い)

赤星「でもな、子供の時に悪に憧れるヤツはいねえ。みんなごく素直にヒーローに憧れんだろ? それ考えるとさ、きっと本質的には人間は悪くねえって思えるよ」
輝「うん。オレもそう思うよっ。その時の気持ちをみんながずーっと覚えてたらいいのにね」
黄龍「確かにね〜。もし、そうなら、犯罪だけじゃなくて、汚職とか、政治腐敗とかもマジになくなるぜ? 博士に頼んで、そーゆー薬とか開発してもらったら、いいんじゃねー?」
黒羽「ヒーロー薬ですかい? ま、問題は色々ありそうですがね。ただ、世の中、忘れっぽいヤツが多いのもまた事実だからな」

瑠衣(にっこり笑って)「じゃ、瑠衣、すっごくラッキー!」
赤星「何が?」
瑠衣「それを、忘れてない人たちとこうして居られるからー!!」

黒羽、瑠衣の背中に手を回し笑んで頷く。黄龍と輝、手を叩き合わせる。赤星、微笑んでそんな4人を見ている。


N「周りに流されて、ずるいことや悪いことをしてしまいそうになった時、君の心の中で必ずそれに反対する声が聞こえてくるだろう。それが君の中にあるヒーローの心。ほかの誰も見ていなくても、君の中のヒーローはいつも君の側にいて、君を見ている。そいつと一緒にがんばる君こそ、明日のヒーローだ!!」


===***===(エンディング)===***===
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