第9話 名犬物語! 特訓・リーブチャクラム
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オズベースの医務室。部屋から出てくる洵。黒羽・翠川・瑠衣と葉隠博士に笑顔を見せる。

翠川 「先生、リーダーはっ!?」
洵  「大丈夫!ちょっと見は大ゲサだけど、どうってことないからね」
瑠衣 「ホント!?ホントね洵先生!……よかったぁ」

一気に緊張を解く瑠衣。ドサッと座りなおす。翠川、葉隠も溜めていた息を吐いた。黒羽、帽子を被りなおす。

洵  「うん。まあ普通の人なら重傷だったと思うけど、あの人だしね…それにスーツもあったんだし。 ああ…スーツの方も問題ないってさ。  すぐ元通りになるって」
(部屋を見回して) 「…そう言えば黄龍くんは?」
翠川(身を乗り出して) 「それなんですよ!姿が見えないんです。あいつ、怪人を追っ払ったあとどっかに消えちゃって」
洵  「ええっ?消えたあ?」(全員の顔を見回して)
黒羽(突き放すように) 「フッ、何てこたあない!フリスビーをしに公園に行ったのさ。 いいご趣味だ」
瑠衣 「…そうなんですか?」
黒羽 「そうだよ。なーに腹が減ったら戻ってくるさ」

洵  「…………」(ふとドアに目をやって) 「あっ、だめだめ輝くん。今は面会謝絶」

病室のドアノブに手をかけている翠川。不満そうな顔になる。

翠川 「えーっ、でも、リーダー大丈夫なんでしょ?」
洵  「だーめ。ちょっとでも早く治って欲しかったらね」
翠川 「ちぇ〜」

しぶしぶドアから離れる翠川。乱暴に椅子に座る。

黒羽 「いい子だ坊や、物分りがいいぞぉ」

翠川の頭を撫でる黒羽。スネたように横を向く翠川。黒羽、笑って翠川の肩を叩く。洵に耳もとで囁く。

黒羽 「お医者様ってのは辛いな先生。大丈夫、この黒羽健が責任持って病室には誰も入れさせませんよ」

洵、急にうろたえだすが、厳しい顔を作る。

洵  「な、何がです? 医務室の責任者は僕ですけど」
黒羽 「フッ。まったくいい男だぜ、ドクター洵」

突然瑠衣の声。

瑠衣 「あれ?そう言えばお姉さまは…?」




医務室内。ベッドで眠る赤星。ベッドの横に椅子をつけて座る有望。薄く目を開ける赤星。

赤星 「………あれ…………有望! どうしてここに…」(起き上がろうとするが) 「いてて! あ〜けっこう効いたなあ」

無表情に赤星の様子を見ている有望。

赤星 「そうだ!有望、みんなは? 大丈夫だったのか? あの怪人……あ! しまったスーツが! あれがダメになったら……」
有望 「バカ!!」

ビクリとなる赤星。有望、厳しい表情。目に涙が浮かんでくる。

有望 「黒羽くんから聞いたわよ。いくらスパイダルとの戦いだからって………カッコつけないでちょうだい」
赤星 「有望……」 




場面転換。いきなり振り向く黒羽のアップ。

黒羽 「もちろん!スーツの修理に決まってるさ。科学主任のやることがそれ以外にあるかい」
瑠衣 「あ、そっか。やっぱりお姉さまって大変……」
黒羽 「さあさあ、分かったら上に上がろうじゃないか。確かケーキの余りがあったはずだからな」
翠川 「えっ、何ナニ?こないだのバナナケーキ?」
黒羽 「そうだよ〜坊や」

翠川と瑠衣の背中に手をやって上に上がっていく黒羽。角を曲がる寸前、敬礼もどきの挨拶を洵に残していく。

(溜息をついて) 「参るよ、あの人は……」(真面目な顔になって葉隠に) 「瑛那くん、本当にどうしたんですか?ちょっと妙でしたよ、黒羽さん」
葉隠 「ん?……うむ、黄龍くんはの……」




トレーニングルーム。飛び交うチャクラム。的に当たり損ね、床に落ちる。

黄龍 「くそっ……!」

どさりと座り込み、肩で息をつく。脳裏に現れ消える映像。黒羽『お前以上の人材なんざあ掃いて捨てるほどいるんだ!』剛『まるでイエローリーブスみたいだ!』『イエローリーブスはオレのヒーローなんだ』ブラック『ホーンブーメランに対抗できるのはお前のリーブチャクラムだけだ!』ホーンブメランに撃墜されるリーブチャクラム。苦しむレッド。走り去っていく剛とジョン……。

立ち上がる黄龍。2対のチャクラムを握りしめ、再び構え、狙いを定める。



喫茶森の小路。カウンターに翠川・瑠衣、壁にもたれかかる黒羽。カランカラン、とドアベル。振り向く3人。剛とジョン。

剛  「あの…ここ、犬も入っていい?」
瑠衣(にっこり笑って) 「うん、大歓迎よ」
  
瑠衣、剛の近くまで入ってしゃがみこむ。

瑠衣 「かわいいわね、何てお名前?」
剛  「ジョンだよ」
翠川 「こっち座りなよ!ほら、こっちこっち」

大きく手招きする翠川。隣に座る剛、足元にジョン。

黒羽 「何にします、坊っちゃん」
(振り返って) 「お兄ちゃん店の人?」
黒羽 「まそんなところさ」
剛  「あっ、でもオレ金持ってないや。……あのさ、ここにキリュウって兄ちゃん来てない? 髪の長い兄ちゃん」

翠川 「キミ、あいつの友達?」
剛  「知ってんの? ここにいるからって聞いて来たんだ」
翠川 「うん、知ってるんだけど…ごめんな、今どこにいるか分かんないんだ」
瑠衣 「あ、そうだわ!」(パンと手を叩いて黒羽に振り向き) 「ねえ黒羽さん、瑛那さん確か公園に行っ……」

黒羽(慌てて遮るように) 「お〜っとっとぉ瑠衣ちゃん待った待った。坊っちゃん、黄龍のお兄さんは今ちょっと大事なお仕事中だ。用があるなら言ってごらん。お兄さんたちから伝えておこう」
剛  「分かった、じゃあ頼むよ。オレ剛、こっちはジョン。キリュウの兄ちゃんにフリスビー教えてもらってたんだ。明日も公園でやってるから、その仕事終ったら来てくれよなって伝えてくれよ。……それでさ……」
急に黙り、うつむく剛。

黒羽(微笑んで剛の顔を覗き込み) 「どうした?」

剛、顔を上げる。怒った顔。

剛  「イエローリーブスは兄ちゃんの言ってたとおりだったって伝えてよ!」

椅子から飛び降り、走り出す。ジョンがあとを追う。

剛  「それじゃ!」

勢いよくドアを開けて走り去っていく剛、ジョン。呆然と見送る3人。思い切ったように黒羽の顔を見る翠川。

翠川(詰問口調で) 「黒羽さんっ」

黒羽、ゆっくりと肩をすくめて軽く首を横に振る。

黒羽 「こいつは怖い顔だ。何か怒られるような事、しましたか」
翠川 「誤魔化さないで下さい!」

瑠衣も眉を寄せて黒羽ににじり寄る。

瑠衣 「黒羽さん〜、何か隠してるでしょ」
  
左右から睨まれる黒羽。翠川・瑠衣を見比べ、口笛をひと吹き。両手を広げる。

黒羽 「こりゃまずいな。こいつはとんだ名探偵2人組だ」

突然スタッフルームから出てくる赤星。もう普段通りの姿。黒羽、助かったとばかりに笑顔を向ける。

黒羽 「よう赤星!ケガはもう大丈夫そうだな、さすがは鬼の赤星殿。ほーら坊や瑠衣ちゃん、君たちのリーダーのご帰還だ」
赤星 「なんだよその鬼ってのは! ところで、黄龍の奴すげえじゃねえか。トレーニングルームで特訓してたぜ」

帽子を押さえて溜息をつく黒羽。

翠川 「えーっ!?」
瑠衣 「そうだったんですか!?」
赤星 「そうだったって、なんでお前ら知らないんだ?」
翠川 「黒羽さんがもったいぶって隠してたんですよ!」
黒羽 「そりゃ言いがかりだ」
翠川 「言ってくんないんだもん黒羽さん!オレ、行って手伝ってきます!」
瑠衣 「瑠衣も!」

走り出す翠川と瑠衣。手を伸ばし何か言いかける黒羽。が、それより先に、

赤星 「待て!!」
 
スタッフルーム前で立ち止まる翠川・瑠衣。赤星、黙って首を横に振る。

翠川 「でも、一人より何人かいた方がいいですよ!」
瑠衣 「それに、たった一人でなんて……」
黒羽(小声で) 「やれやれだぜ。だから教えたくなかったんだ」
赤星 「これは黄龍の問題だ。それに…イエローリーブスって存在の問題でもある。一人で何とかさせるんだ」

瑠衣 「でもっ」
翠川 「リーダー、行かせて下さい!オレだって何かしたいんです!」
瑠衣 「瑠衣も、何もできないのはイヤ!」
赤星(静かな口調で) 「ダメだ。こればっかりは一人でしか乗り越えられない」

仕方なく黙りこむ翠川・瑠衣。黒羽のギターの音。





深夜。灯りを細くした森の小路。カウンターに赤星と黒羽。

赤星 「まだやってんのかな、黄龍の奴」
黒羽 「らしいねえ。さっきも格納庫で寝ようと思ったら、トレーニングルームでドンパチうるさくて寝るどころの騒ぎじゃねえ。あれじゃあオズブルーンがかわいそうだ」
赤星(くすくす笑って) 「"瑛ちゃん"が心配なら素直に見に行きゃいいんだ。無理すんなよなっ」
黒羽 「してません」
赤星 「してますーっ」
黒羽 「してません」
赤星 「してます」
黒羽 「してません」赤星 「してます」黒羽 「してません」赤星 「してます」
   「してませ」 「して」 「してま」 「してる!」
黒羽 「し・て・ま・せ・ん」

ギターで赤星の腹をつつく。

赤星 「いてっ! いててて…!」
黒羽 「おやおや。これっくらいで大ゲサなこった」
赤星 「ケガつっつきゃいてえに決まってんだろ!」

黒羽 「ほお、そうかい。坊やたちの前じゃずいぶんと平気そうだったもんでね。オレはまたてっきりケガなんざすっかり治っちまったかと思ったぜ」
赤星 「そうそういきなり治るかよ」
黒羽 「有望さんの看病でもか?」
赤星 「あいつは科学者だぜ。医者じゃねえよ」

黒羽、肩をすくめ両手を広げる。溜息。首をかしげる赤星。

赤星 「しかしよ…黄龍の奴、どう出るかな」
黒羽 「どうでしょうかねえ」
赤星 「またまた」

赤星、ふと真面目な面持ちに。黒羽、どことなく浮かない顔。

赤星 「大丈夫だ。黄龍ってのは確かに立ち回りは下手かもしれねえが気持ちの優しい男だ。男の優しさは本当の強さがなけりゃあ生まれてこねえ。本当の強さってのは腕っぷしなんかじゃねえさ…」

赤星、黒羽の背中を叩く。

赤星 「心配すんなって」
黒羽(ニヤリと笑い) 「してませんさ」




オズベース、司令室。大きく伸びをする葉隠博士。コーヒーをすする田島博士。

葉隠 「ふわあああ……。一晩番をしてみたが、結局スパイダルは動きなしじゃったのう」
田島 「そうですね…」

突然警報。ガタッと立ち上がる葉隠・田島。機械音を発しながら飛んでくるサルファ。

サルファ 「エマージェンシー・エマージェンシー!CP3ぽいんとニ次元ノ歪ミ発生」



格納庫に集まる赤星・黒羽・翠川・瑠衣。

赤星 「行くぞ、今日こそ絶対に奴を倒す!」
翠川 「ラジャー!」
瑠衣 「瑛那さんは?」
黒羽 「別行動の指令だ。CP3ポイントで合流する」

セクターに乗る翠川、瑠衣。

翠川 「エイナさ、きっとすごい技、マスターしたんだぜ!」
瑠衣 「うん!瑠衣たちも頑張ろうね!」
翠川 「ああ!…あっ、ちょっと待った!」(エンジンをかける瑠衣を止めて) 「無茶は禁止だよっ」

瑠衣、にっこり笑って親指を立ててみせる。手を打ち合わせて走り出す2人。


オズブルーンのハッチを開ける黒羽。隣でレッドハリケーンに乗り込む赤星。

赤星 「助かったぜ」
黒羽(オズブルーンの操縦席に座ってチッチッチ…) 「オレの希望を言ったまでさ」
赤星 「希望だけじゃねえさ。オレは来てくれると信じる!」

同時にハッチを閉める赤星、黒羽。

黒羽 「よおし、オズブルーン!GO!!」
赤星 「オズリーブス、発進!!」




市街地。飛び交うホーンブーメラン、破壊される建物。逃げる人々。崩れる建物の向こうから現れるマルキクワンガー。後ろで飛んだり跳ねたりするアセロポッドたち。

レッド 「待てっ!!」

振り返るマルキクワンガーとアセロポッド隊。レッドを中心に並んで立つオズリーブス4人。後ろにレッドハリケーン、グリーンセクター、ピンクセクター。

レッド 「龍球戦隊!」
レッド・ブラック・グリーン・ピンク 「オズリーブス!!」
マルキクワンガー 「現れたなオズリーブス、今日こそ貴様らを葬り去ってくれる!!」
レッド 「行くぜみんなっ!!」

アセロポッド隊を蹴散らす4人。主に殴るレッド。蹴るブラック。飛び跳ねるグリーン。相手の力を受け流し投げるピンク。全員消え去る。

レッド(マルキクワンガーを指差し) 「罪もない人々を苦しめ、あまつさえ町を破壊するマルキクワンガー!許さん!!」
マルキクワンガー 「黙れこわっぱめ!!」
レッド 「リーブライザー!」(言いつつ装着) 「とおっ!!」

レッドのパンチ、マルキクワンガーの顔に炸裂。続けて何発も殴りつける。

ピンク 「行くわよっ、マジカルスティック電磁サイクロン!」

マジカルスティックの先から電光、マルキクワンガーの体を縛る。

マルキクワンガー 「ぬおおおお…………!!」
レッド 「今だ!喰らえっ!!」
マルキクワンガー 「甘いわぁ!!」

電磁サイクロンをかき消し、レッドを弾き飛ばす。転がって受身をとるレッド。

グリーン 「くそっ、ミドトンファー!」(言いながら構える) 「といやっ!」

打ち合うグリーン、マルキクワンガー。ツノでミドを持ち上げ、投げ飛ばす。グリーン、地面に投げ出される。入れ替わるようにブラック。

ブラック 「こいつは近寄れんぜ、ブラックチェリー!!」(と言って取り出して) 「とりゃあっ!」

放つ矢。マルキクワンガーに命中、爆発。

マルキクワンガー 「ええい、痒いわ!!邪魔だ、今すぐ始末してやる!!」

ホーンブーメラン飛ぶ!

レッド 「まずい、あの技だ!」

避ける4人。が、レッドとグリーン、ブラックとピンクを2本のブーメランが追いかける!

ブラック 「しまった!ホーミングか!……ぐあっ!」(喰らって倒れる)
レッド(振り返り、駆け寄る) 「ブラック!…うわあっ!」

レッドも喰らう。怪我の上にヒット。

ブラック 「赤星!」
グリーン 「はっ!危ないピンク!!」

ピンクに迫るホーンブーメラン。

ピンク 「きゃあっ!」

キーン!と効果音。地面に落ちるホーンブーメラン。

マルキクワンガー 「なにいっ!?」
レッド 「あれは!」
ブラック 「もしや!」
グリーン 「ああっ!!」

空中で弧を描くリーブチャクラム!受け止める黄色いスーツに手袋の手!建物の上に立つイエローリーブス!

イエロー(名乗りポーズ) 「イエローリーブス!!」

4人に拳を見せるイエロー。

イエロー 「だらしないぜ、みんな!」
レッド 「ああ!待ってたぜイエロー!」

建物から飛び降り、4人の所に駆け寄るイエロー。

レッド 「マルキクワンガー!オレたちの本当の力、見せてやる!!」

ホーンブーメラン、マルキクワンガーの頭に戻る。

マルキクワンガー 「ぐっ…………フン!今のは見事であったと褒めてやろう! だがそれもまぐれよ!」

ツノをもとに戻し、突然背中を向けて似げだすマルキクワンガー。

レッド 「しまった!追うぞ!!」
4人 「おう!!」



走る5人。ひと気のない港。

レッド 「くそっ、どこへ行った!」
ブラック 「暗黒次元に逃げやがったか」

突然、マルキクワンガーの高笑い。声のする方に注目する5人。

マルキクワンガー 「ふわっはっはっはっはっは!!ここだ!!」

建物の影から現れるマルキクワンガー。その腕に剛少年を抱えている!

イエロー 「しまった!!」
マルキクワンガー 「どうだぁオズリーブス、手も足も出まい! 一歩でも動けばこのガキの命はないぞ!!」
(腕から逃げようともがき) 「助けてーっ、オズリーブス!!」
マルキクワンガー 「黙れ!!」(剛の首に爪を当てる) 「何もできん貴様らなど物の数ではないわ!!」
レッド 「くっ……なんて奴だ!!」
ピンク 「あ、あの子は……!」

イエロー、再び剛の言葉が脳裏をよぎる。

イエロー 「……剛………」
マルキクワンガー 「はーっはっはっはっは!! まずは小生意気なイエローリーブス!! 貴様からだあ!!」

攻撃に移ろうとするマルキクワンガー。が!横から飛び掛り噛み付くジョン! 思わず腕の力が抜け、その隙に逃げ出す剛。

剛  「ジョン!!」

喜び合う剛とジョン。しかし、マルキクワンガーは怒る。

マルキクワンガー 「邪魔しおって犬畜生めが!!許さんぞ!!」

腕を振り下ろすマルキクワンガー!が、間一髪で飛び込み、剛とジョンを救うイエロー。

イエロー 「冗談じゃないぜ!許さんのはこっちだっ!!」
剛  「イエローリーブス……!」
イエロー 「さっ、早く!」

避難する剛とジョン。それを見届けるイエロー。

マルキクワンガー 「おのれぇ〜揃いも揃ってこうるさい奴らよ!! 死ねイエローリーブス!! 今度こそ真っ二つに引き裂いてくれる!!喰らうがいい、ホーンブーメラン!!」

回転しながら縦横無尽に飛ぶホーンブーメラン。散らばる4人、だがイエローは動かない。2対のリーブチャクラムを構えるイエロー。(BGM:イエローテーマ曲 「黄色い砂塵イエローリーブス」)

イエロー 「見せてやるぜオレの技を!! リーブチャクラム・クラッシュローリングシュート!!」

光を発し猛スピードで飛ぶチャクラム。それに迫るホーンブーメラン。2対がぶつかりあい、爆発が起こる。

マルキクワンガー 「ぬううっ!?」

煙を上げ落ちるホーンブーメラン。2つとも折れている。戻ってきたチャクラムを受け止めるイエロー。

マルキクワンガー 「ま、まさかホーンブーメランが! 本当に通用せんとは………!!」

驚愕し2、3歩あとずさるマルキクワンガー。

レッド 「やったぞイエロー!! よしみんな、リーブラスターの力を一つにするんだ!!」
4人 「おう!!」

5人並んで技のポーズ。

レッド 「リーブラスター!!」
 
5つの銃口を近づける。5つの銃口に重なるように、5つの星と龍の紋章の入った玉の映像が重なる。

5人 「リーブスプラズマシュート!!」
マルキクワンガー 「ぐわあああああああああ!!!」

大爆発、マルキクワンガーの最期。5人、勝利ポーズ。




スパイダル基地。

シェロプ 「おのれまたしてもオズリーブスめ……!!」

どこからか現れる他の幹部3人。

ゴリアント 「ぐへへへへ、オレっちも見てたぜシェロプ!! ザマぁねえやな、おめえんとこの手下どもはよ!」
アラクネー 「ハッ! 詰めが甘い、我らスパイダル地球侵略軍のいい恥さらしだわ!」
スプリガン 「これだから困るんだお坊ちゃま育ちはよ…ええ?侯爵様よ」

シェロプ 「く………。フッ、はっはっはっは、やはり平民! 己のことを棚に上げるのはお得意と見た。貴様らも作戦失敗は同じことであろう? んん? しかもみな失敗と言っても私以上の成果は上げられず…」

言葉につまる3人。そこへ響くゆっくりとした足音。

アラクネー 「司令官…!」
BI 「シェロプよ。貴様の作戦は失敗に終った。この責任を何とする!」
シェロプ 「お言葉ですが、司令官殿……」
BI 「黙れ! そなたの言い訳など聞きたくもないわ!」

  BI、手から電流を発する。苦しむシェロプ。

シェロプ 「ぬっ、くおおおお…!」

  電流を解除するBI。膝をつくシェロプ。

BI 「その痛みは24時間続く。痛みに耐えながら首領Wの御為、何をすべきか考えるがよい……」

  立ち去るシェロプ。

ゴリアント 「ヘッ! いい気味だぜおすまし野郎!」
スプリガン 「おいおい、あんまり言っちゃあかわいそうだぜ。 あとで見舞いにでも行ってやろうじゃねえか」
BI 「ゴリアント、スプリガン、アラクネーよ。次なる作戦は講じてあるのであろうな?」
アラクネー 「もちろんですわ司令官。我ら四天王、全ては首領Wのために」
BI 「うむ。期待しているぞ」

アラクネー、拳を肩の前に。スプリガン、崩した敬礼。ゴリアント、左右の拳をぶつける。3人同時に、

アラクネー 「ははっ」
ゴリアント 「へい!」
スプリガン 「アイアイサー」






喫茶森の小路。思い思いの場所に座って談笑する5人。

黄龍 「まっなんてーの? オレ様ちょっと本気にさえなったらあの通りって感じ〜?」
翠川 「悔しいけどすごかったなー、クラッシュシュート!」
黄龍 「クラッシュ『ローリング』シュート!」
瑠衣 「瑛那さんホントにかっこよかったわvv特訓の甲斐、あったわね!」

黄龍(急に焦り出す) 「へっ?……な、なにそれ?え、誰かそんなことしてたの? やっだなー瑠衣ちゃん、オレ様が特訓なんてカッコわりーことする訳ねーじゃん!」
 
4人の顔を見る黄龍。笑顔の翠川、瑠衣。苦笑気味の赤星、そっぽを向いている黒羽。黒羽をちらりと見やる赤星。黒羽、帽子の下でニヤリ笑い。

黄龍 「なっ、なんだよその面ぁ〜」
黒羽 「さあーて、なんでしょう?」(帽子の鍔を上げて) 「君に分かるかな」
赤星(堪えきれず笑い出す) 「黄龍、観念しろ!みんな知ってんだよ」
黄龍 「は、はあ?リーダーまで何言って…」

ドアベルが鳴って、剛とジョン来店。

剛  「兄ちゃんいる!?」
黄龍 「おっ! 来たな剛、バッチタイミング!」

店内に入る剛とジョン。堰を切ったように勢い込んで話し出す。

剛  「なあなあ、兄ちゃん! オレ、イエローリーブスに助けてもらったんだ!!」
黄龍 「おおっ! マジマジ〜? やったじゃん剛!!」
剛  「こないだあんなこと言ったけどさ、やっぱりイエローリーブス、めちゃめちゃカッコよかったぜ! イエローリーブスはやっぱりヒーローさ!」
黄龍 「だろ〜!? はははっ」

じゃれるように話す黄龍と剛。

剛  「でもさ、ジョンだってすげーんだ! 怪人と戦ったんだぜ、ジョン!」
黄龍 「マジかよ〜! えらいぜジョン!!」

黄龍、ジョンの頭を撫でる。尻尾を振って一声鳴くジョン。剛、黄龍の腕を引っ張る。

剛  「兄ちゃん行こ! オレ、もっと練習してイエローリーブスより上手くなるんだ!」
黄龍 「OK!じゃオレ様も鬼コーチ変身! みたいな?」

店を出て行く剛、ジョン、黄龍。黄龍、ドアを開けたところで振り返る。

黄龍 「黒羽!」
黒羽 「んん?」
黄龍 「確かにレッドとかブラックは強えよ? グリーン頑張ってるし ピンクもかわいいけど………」

満面の笑顔で親指を立てる黄龍。

黄龍 「子供たちのヒーローは、やーっぱイエローリーブスっしょ!」

笑いながら店を飛び出す黄龍。立ち上がる翠川、瑠衣。

翠川 「待ってよ、エイナ、オレも行く!」
瑠衣 「瑠衣も! こう見えてもフリスビー得意なんだから!」

場面転換、外の黄龍たち。店から飛び出してくる翠川、瑠衣。そのあとでゆっくり出てくる赤星と黒羽。

赤星 「はははっ、しょうがねえなあいつら。瑠衣ちゃんはともかく、20歳過ぎてガキなんだからなあ」
黒羽 「フッ、以って他山の石とせよって言葉を知らんらしい」(軽く肩をすくめる) 「しかし赤星!話を蒸し返すようだが、無学なオレに教えちゃあもらえまいかね」
赤星 「何だ?」

黒羽、2本指で帽子の鍔を上げる。その指で赤星を指差す。

黒羽 「男の本当の強さ……」(ギターを肩に担いで) 「とは、だ……」

一瞬驚いたように目を見開く赤星。ふっと走る黄龍の背中を眺める。

赤星 「‥‥自信だ!」

赤星、勢いよくドアの札を返す。『CLOSED』

赤星 「おーい、待てよみんな! オレたちも行くぜ!」

親指を黄龍たちに向ける赤星。フッと笑う黒羽。

剛・ジョンと走る黄龍、後ろから翠川・瑠衣。さらに後ろの赤星・黒羽の映像にナレーションが入る。

N 「激しい特訓の末、イエローリーブスとしての自信と実力を身につけた黄龍瑛那! マルキクワンガーは倒したが、いつまた強敵スパイダルの怪人が放たれるか分からない。 負けるな、5人の戦士たち! 戦え! 龍球戦隊オズリーブス!!」


    (おしまい)
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