放映直前特番 さすらいは復讐のあとで
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テロップ「『さすらいは復讐のあとで』」

ある大学の門。二人の青年が並んで出てくる。
赤星(腕を頭に回して空を見上げる)「そろそろ卒業かー、案外早かったな。なあ黒羽、お前卒業したらどうすんだ?」(テロップ「赤星 竜太」)
黒羽(両手を広げて)「さあて、どうするつもりだろうかね」(テロップ「黒羽 健」)
赤星「なんだよそりゃ!まるで他人事だな」(ちょっと真面目な顔で)「・・・なあ黒羽、何だったらよ」
黒羽、赤星の目の前に人差し指を突き出し左右に動かしてみせる。
黒羽「おっと。喫茶店の手伝いなら、ご免こうむるぜ」
赤星「お前みたいなの、客商売に雇えるかよ!」

二人して笑うが、突然女性と子供たちの悲鳴が。

赤星「なんだっ!?」

道路で倒れている女性と園児たち。側に黒い高級外車が急停車する。
中から黒服、サングラスの男が。

男1「先生よ、そろそろ色よい返事をもらおうか!!」(女性を無理やり立たせる)
赤星(男の腕をひねり上げて)「やめろっ!」
男1「いてっ!な、なんだてめえは!」(殴りかかる)
黒羽(拳を受け止めて口笛)「よしな兄さん。穏やかじゃねえぜ」

車の中から3人の男が。

男2「何やってんだ!」
男3「生意気な坊やたちだ。畳んじまえ!」
赤星「望むところだ!行くぜ黒羽っ!」
黒羽「やれやれ、やっぱりそう来ましたか」

襲い掛かる男1〜4を叩きのめす赤星と黒羽。女性が悲鳴をあげる。
男3が女性を車に引きずり込もうとしている。

赤星「しまった!」

が、何者かが男の耳を思いっきり引っ張り上げた。

男3「な、何モンだ!!」
飛島「飛島四郎。と言っても知らんだろうがね、山登り好きの貧乏学生さ」
(テロップ「飛島 四郎」)

男3をギターでぶっとばして女性を助ける。

男4「ちくしょう、構ってられるか!行くぞ!」
男2「覚えてやがれ」

車に乗って逃げていく男たち。

赤星「もう二度とツラ見せるんじゃねえぞ!!・・・大丈夫でしたか?」

女性と園児たちに駆け寄る赤星。

女性「ええ、助かりました。あの人たち、私の勤めている幼稚園の敷地を狙っているんです」
赤星「なんて連中だ!!・・・まさか、あいつら最近この辺を騒がせてるブラックハート団!?」
女性「はい・・・」
赤星「聞いたか黒羽!・・・・黒‥‥」

にらみ合う黒羽と飛島。

赤星「お、おい二人とも」

殴り合いを始める二人。だが突然腕を組んで笑い出す。

黒羽「はっはっはっは、おい飛島!久しぶりじゃないか」
飛島「元気そうだな黒羽!その格好、相変わらずだぜ」

抱き合って肩を叩きあう二人。

黒羽「ああ、赤星、こいつは・・・」
赤星「知ってるさ。4歳の頃から一緒に育った兄弟以上の親友、飛島四郎!」(飛島に手を差し出す)「黒羽から話は聞いてるよ。オレは赤星竜太!黒羽の大学の仲間だ」
飛島「ああ」(赤星と握手)「オレが飛島だ。よろしく赤星」
黒羽(二人の肩に手を置いて)「おやおや、もう仲良しかい。・・・・ん?」

しゃがんで足元の紙切れを拾う。

赤星「なんだ、そりゃ」
黒羽「今夜零時 横浜港4番コンテナ」(メモ書きを読み上げる)「・・・・ブラックハートのお兄様方の落し物のようだぜ」
赤星「黒羽、知ってたのか!」
黒羽(紙切れをヒラヒラ振って)「今夜あたりお届けしましょうか?」

無言でうなづく飛島。

赤星「おう!」

女性、3人に声をかける。

女性「あの、この子たちがどうしてもお礼をしたいらしいんです。もし差し支えなければ、園の方まで来ていただけませんか?」
園児1「お兄ちゃん、一緒に遊ぼー!」
園児2「ねえ、一緒に来てよ〜」
赤星「ははっ、しょうがねえなあ・・・・よしっ!」(園児を抱き上げて)「兄ちゃんたちも一緒に行くよ!」
黒羽「やれやれ、しょうがねえのはこっちだ」(まんざらでもなさそうに)

幼稚園バスに乗る3人と女性、園児たち。赤星は歌を歌ったり、飛島はギターを弾いたり楽しそう。黒羽は園児にまとわりつかれて若干迷惑そうだが我慢。

赤星「でも大変ですね、ブラックハート団に土地を狙われてるなんて」
女性「ええ、周りの家や店も取り上げられました。・・・でも私たちだけは頑張ろうって、園の人たちも」
赤星「オレたちでよかったら、力になりますよ!な、黒羽、飛島!」
飛島「ああ。・・・・・・・これは、まさか」
黒羽「みんな静かに!・・・・」
赤星「運転手さん車止めて!!」 

幼稚園バス急停車。神経を研ぎ澄ませる3人の耳に、微かな秒針の音。時限爆弾の映像。

赤星「爆弾だっ!!」

騒然となる車内。3人、急いで子供たちを降ろす。

赤星「みんな離れて!!」
黒羽「飛島、降りろ!オレがバスをどこか遠くへ・・・ぐっ」

飛島に腹を殴られうずくまる黒羽。飛島、その隙にエンジンをかける。

黒羽「お前一人で行かせるか!」

バスの窓に飛びつく黒羽。

飛島「降りろ黒羽!このままじゃお前まで巻き添えだ!」

仕掛けられた爆弾。針は刻々と起爆時間に近づいていく。
道路脇の木にぶつかってバスから落ちる黒羽。

黒羽「飛島!!」

バス、大爆発。

黒羽「飛島ーっ!!」

駆け寄る黒羽。その後ろから赤星が走ってくる。
間一髪でバスから飛び降りた飛島、だが重傷を負っている。

===***===

病室。飛島、うっすらと目を開ける。
赤星「気がついたか!」
飛島「・・・ここは・・・・」
赤星「病院だよ。しかしすげえなあんた!普通ならこんなケガじゃすまねえんだってよ!」
飛島「そうか、そんなケガを・・・」

ギター(飛島の物)の音色。壁にもたれていた黒羽がベッドに近づく。

黒羽「心配させやがって」
飛島「山男がこれくらいで死んでたまるか」

急に病室の外が騒がしくなる。
 
赤星「なんだ?」
黒羽「急患だろ」

突然ドアが開く。入ってくるスーツ姿の男。

黒羽「西条先輩!」
赤星「西条さん!?」
西条「黒羽、赤星くん・・・・!」(飛島を見て)「友達か」
黒羽「はい。しかしなぜ先輩がここに?」
西条「3人とも今すぐこの病院を出ろ!さっきこの病院に爆弾を仕掛けたという脅迫状が来た!」
赤星「何だって!?一体誰が・・・・」

遠くで爆発音。

西条「いかん!爆弾の一つが爆発した。すぐここを出るんだ!」

3人、患者たちを安全に逃がす。大きな爆発音。病棟が揺れ天井から細かい瓦礫が落ちてくる。
黒羽、辺りを見回す。飛島がいない。
突然銃声。銃声のする方に走っていく黒羽。落ちてきた蛍光灯を跳んで避ける。
着地して顔を上げると、銃弾を何発も受けている飛島。

黒羽「飛島ーっ!!」

倒れる飛島。黒羽、駆け寄って抱き起こす。

黒羽「飛島!!」
飛島「く・・・・黒羽・・・・」(目がかすんで見えていない)

力なく手を上げる。黒羽、その手を握る。

黒羽「ここだ!ここにいる!!」
飛島「黒羽・・・オレは、オレは許さねえぜ・・・あんな、爆弾なんか使う奴ら・・・・」
黒羽「ああ!」
飛島「ケ・・・ケガが治ったら、オレは闘う・・・・お前と、二人で、な・・・・」
黒羽「ああ!!・・・・・・・・飛島・・・・飛島!」
 
ガクリと力が抜ける飛島。返事はない。

黒羽「飛島――っ!!!」

死んだ飛島を抱き締め、涙する黒羽。



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