熱 雷 3
 
僕が強かったから、この人の呪縛が解けたのだとしたら、僕は強くてよかった。

僕の持つ力が非常識で‥‥‥、僕が普通じゃない人間なのだとしても‥‥

それがこの人をこんなに素直にしているのなら、僕はそのことに感謝する。



「僕も大好きだよ」

僕は彼女をすくうように抱き上げると、くるりと仰向けて彼女を抱きしめる。驚いてちょっとだけ声をあげた彼女が、僕の上で、すぐに子猫のようにくつろぐ。

たおやかに、まとわるように、身体にかかる重みは、羽根のように軽く、大地のように重い。


「ねえ、悟飯君。もう一度、言ってみて?」

彼女の声にちょっとだけ悪戯っぽい響きがこもった。どこか子供がすがってくるように、僕の腕に手を絡ませる。

僕は目を閉じた。
雷はまだ鳴っている。
この人が雷など怖がらないことを知った上で、小さな子供にするように、その髪をそっと撫でて囁く。

「僕は、君が大好きだ」


僕は君が大好きだ。


君が望むなら、僕はいつも君の側にいるだろう。

君は、君の、本当に大事なもののためにだけ、必死になればいい。

それ以外は僕がみんな護ってあげる。

父から受け継いだこの力を惜しむことなく、

君がいつまでものびやかに笑っていられるように、僕は全てを護ろう。

海も、大地も、吹き渡る風も、この星も‥‥

この遠ざかる雨と熱雷さえも‥‥。

(おしまい)