6 偶然のハグ | ||||||||
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トランクスは、ブルマから距離を取って注意深く歩くのに必死で、彼女との会話はほとんどうわの空だった。 これも心に誓った3箇条を守るためである。 予定外にこんな時代に来てしまった以上、何も知らない若き日の母との接触は出来る限り抑えねばならない。ほんの些細な行動でも、未来を大きく変える可能性があることを、トランクスは承知していた。 西の都は夏。ブルマに付き合って、必要な部品を買いそろえに街に出ると、道路はごった返し、騒音は絶えない。誰もが、何不自由なく幸せに見えた。 オレの時代と比べたら、どの時代も幸せってことになってしまうけど。 不意に逃げまどう人々の悲鳴。 焼き払われた街の残骸。 それらが彼の脳裏によみがえった。 はっとして立ち止まると、ブルマの姿がない。あわてて気持ちを静め気を探ると、彼の時代と変わらない慣れ親しんだ母の気を、通りの向こう側に感じた。 路上のワゴンでホットドックを買っているようだ。彼はほっとして、ベンチに座ってブルマを見ていた。出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んだ、ただでさえ男の理想のような身体をさらに強調する露出の高いファッションは、道行く男性の目にかなりとまっている。遠くから見ていると、男達が彼女を振り返って行くのが良くわかった。 そのとき、高校生のような少年の一団が彼女に近づいていった。 「ブルマ」 振り向くとブルマのクラスメイトの男子生徒たちだった。いつもつるんでカッコつけてる連中だ。 「何よ。あんたたち放課後まで男同士でデートしてんの?」 「ふん。今日はいつも連れて歩いてるヤムチャがいなくて寂しいんじゃねーのか? せっかくのヒモに逃げられて残念だったな」 「ヤムチャがいると怖くてあたしに近づけないくせに、ヤムチャがいないとずいぶん威勢がいいのねぇ」 少年たちはムッとしたが、リーダー格の体格の良い少年が場を仕切った。 「寂しいくせに強がるなよブルマ。オレ達が相手してやるからちょっと付き合えよ」 彼がブルマの腕を掴んだ。 「離してよ!」 「いいからこいよ!」 腕を引き寄せて、少年がブルマの腰に手を回した。まわりの人間は、いかにも悪そうな彼らに口出しできないでいた。そのとき 「手を離せ」 「ト、トラン……」 少年の後ろにトランクスが立っていた。他の少年達は唖然としている。いつのまに現れたのか見えなかったのだ。 「ぁあ!? なんだと!?」 「その薄汚い手を今すぐ離せといってるんだ」 「うるせえ!この野郎!!!」 少年が繰り出したパンチを、体重移動だけですっと避けると、トランクスはボディに一発、拳を突き上げた。少年の身体が10センチほど浮き、どさりと落ちる。 「死んではいない。いますぐこいつを連れてとっとと失せろ」 目をむいて倒れている少年を見て、仲間はごくりとつばを呑むと、一目散に逃げ出して見えなくなった。 「トラン!」 ブルマは駆け寄ってきてトランクスに抱きついた。お色気作戦とか、深い意味はなく、嫌味なヤツをやっつけたヒーローに対する感激と感謝の気持ちだった。 「強いのね〜!!! びっくりしちゃった!」 引き締まった厚い胸にぎゅっと抱きつくと、妙に落ち着いた暖かい気分になる。まるで家族と肩を抱き合うみたいな感覚。もし兄弟がいたら、こんな感じだろうか…… 「わぁぁぁぁ!!!」 ブルマが考えていたとき、叫び声を上げてトランクスが大きく飛び退いた。せ、接近しない! 接近しない! と心の中で繰り返すのだが、端から見ると、目を固くつむって聞き取れない言葉をぶつぶつ唱えるその様子は限りなく怪しい。 「なに祈ってんのよ?」 「い、いや……べつに」 |
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