その3:黒羽に教えられたこと――快傑ズバット

快傑ズバット。 龍球戦隊裏話と銘打ってあるコラムでこれを外すわけにはいきません。龍球のブラックである黒羽健は、早川健がモデルですから‥‥

メタルヒーローですとかライダーですとか簡単には説明できません。ズバットはズバットとしか言いようがないんです。他に似たようなヒーロー作品はありません。小林旭の渡り鳥シリーズを変身ヒーローでやった‥‥とよく本に書いてありますが、きっとそうなんだと思います。そしてその空前絶後の個人ヒーローを戦隊に組み込んでみたのが、うちの龍球戦隊と言えるかもしれません(笑)。

私がズバットを見たのは2001年になってからです。でも名前は20年前から知っていました。夫がよく早川健のマネをしてたんですよ(笑) 仲間内でもウケてました(笑) でも私には元ネタがわからない。皆の話を総合すると、皿を投げたり、ワイングラスを重ねたりして日本一勝負をするらしい‥‥(←当たっていると言えなくもない‥‥)。とにかく当時の私は、宮内さんを知らなかったので、それでギャグじゃなくてかっこいいヒーロー番組‥‥と言われてもワケがわかりませんでした(笑)。

実は私が特撮を本格的に見始めたのは大人になってからなんです。子供の頃は1号、2号ライダーを少し、それからウルトラセブン〜エースぐらいまで見た記憶があります。でもその後何も見てなくて、結婚後にライブマンの本放送を見てはまりました。ですから伴直也さんを初めて認識したのはライブマンの星博士、宮内さんを初めて認識したのはウインスペクターの正木本部長‥‥。夫や夫の仲間たちが伴さんだ! 宮内さんだ! と騒ぐ中、私だけが「それ、誰?」‥‥という状況でした(苦笑)

いい友人に恵まれたおかげでライブマン以前の特撮も色々見ることができました。それでもズバットだけは見る機会に恵まれず、13年を経てやっと見ることができたのです。
感想は‥‥いや、あちこちで書かれているのとまったく同じです。こんな番組よく作ったと思いますよ。そして宮内洋さんがいなければ絶対この番組はできなかったでしょう。わざわざブルドーザーのシャベルに乗ってギター弾きながら登場して‥‥それでもサマになるって、いったいどういう人なんだ(笑) 動作一つ一つ、なんか笑っちゃうのに、かっこいい‥‥。

「主人公がこういうことやってね」って言葉で言うとふざけてるとしか思えない。なのに絶対ギャグじゃない。そして「主人公は何やらせても日本一で、すごくキザでね」って聞くと、作りすぎじゃないのそれ、と思うのに、実際見ると何とも言えず魅力的‥‥。これはいったいなぜなのか、本当に不思議でした。

私はそれを、黒羽というキャラクターによって教えられた気がするんです。

龍球戦隊が生まれる少し前、ゆうさんが「今、宮内洋という役者にすごく惹かれている」というメールをくれたことがあります。確かV3をご覧になってだと思うんですが。それで私が、それならぜひズバットを、とお勧めしました。案の定(って言うのか?)、ゆうさんはとってもズバットを気に入られて、それで黒羽健というキャラクターが生まれたわけです。

そして、ゆうさんの書いた黒羽のキャラ設定を読んで、ああそうか‥‥と思ったことがありました。それは「礼儀正しい」というキーワードでした。

早川は一匹狼だし、勝手にどんどん「悪をやっつけ」ちゃうし、むちゃくちゃっていえばむちゃくちゃなんです。そのうえ何でも「日本一」で思いっきり「キザ」です。だけどそれが決してイヤミにならないのは、常に他人に対する思い遣りを忘れてないからなんですね。

そしてもう一つ。ゆうさんの書いた黒羽を読んだり、自分が書いていて気がついたこと。
黒羽ってちょっと人とハズれたことやっても全部「地」なんですよ。その上おおらかというか、自分が人と違ってても全然気にしてないんですね。ある意味すごい"天然"。これが早川健が妙なことやってもギャグにならない秘密‥‥なのかもしれません。

黒羽というキャラを通して、ゆうさんにズバットや宮内さんの魅力を教えてもらった気がして、ああ、こういうこともあるんだって、感慨深いものがありました。

最初、龍球の設定が持ち上がった頃は、仮にもあの早川健をモデルにしたキャラを戦隊の一人にしちゃうなんて、あまりの暴挙と思ってました。だけど、新命じゃなくて早川健であっても、グループヒーローの一人として、実はとってもいい活躍ができたんじゃないかと思い始めた今日この頃です。
2003/04/03

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