その2:ウルトラマン80の最終回

正直言ってコラムの2回目がウルトラマン80になるとは予想してませんでした。ほとんど最終回しか見てないから、作品に対して失礼な気もしますが、どうしても書きたかったんです。

最近夫が80を借りてて見ていて私もちらちらと見てたんですが、最終回だけは思わず姿勢を正しました。もう古い作品だからネタバレを承知で最終回のあらすじを書きます(これからウルトラマン80を見るのを楽しみにしている、という方は、どうぞ読まないで下さい)。

ウルトラマンシリーズはM78星雲人が「地球人の体を宿主にしてる」パターンと「人間の姿に変化してる」って二通りのパターンがあります。前者代表はウルトラマン、後者代表はウルトラセブンでしょうか? で、ウルトラマン80も後者タイプで、ヤマトという地球人の姿に化けて、UGM(これが警備隊)の隊員になってます。

ラス前で80は負傷しますが、そこでなんと隊長に正体がばれちゃう(ヤマトの方はばれたことを知らない)。そして彼が故郷に呼び戻されていることも隊長は知ってしまいます。
そして最終回に出現した強力怪獣。隊長はヤマトに内勤を命じ、他の隊員たちに「80の力を借りずにUGMだけでこれを倒す」と檄を飛ばす。だけどピンチが訪れて飛び出していくヤマト。それを追いかけてきた隊長はこう言うんですね。「今までのことを感謝している。だがその体でもう変身しないでくれ。地球は地球人の手で守らなければならない」

そして隊長自らも出動し他の部隊の救援もあって見事に怪獣を倒します。つまりウルトラマン80の最終回はウルトラマンは登場しないんですよ! ラストショットでM78星雲に帰るために変身するだけで。最後にはなんとヤマト=80のお別れ会もあったりします。基地の中でおつまみとか用意して、シャンパンで乾杯して、お互いがんばっていこうみたいな。

ぱっと見ると、お別れ会ってのが妙におかしかったり、ヒーローものとして子供はちょっとがっかりするかもしれないんですが、色々考えてみるとこの隊長の行動がものすごく自然な気がするんです。

仕事やっててピンチが訪れたとしましょう。この開発が間に合わない! みたいな。そこに正体不明のでも明らかに外部の人が覆面して助けにきてくれるシチュエーションを考えてみて下さい。でもってその人、報酬も受け取らずに行っちゃうんですよ。その上毎回毎回‥‥。

なんです?「産業スパイに違いないから、気をつけろ」ですって? そりゃ、そうですね、実際そーゆー人がいたら怪しすぎますが、ここはぜひ性善説に立って下さい! その人はぜったい悪い人じゃないってことで。その前提に立てば、次は「やっぱ、自分たちでなんとかせねば。よそ様にめーわくかけちゃイカン」ってのが、ごく自然な発想ってもんじゃないでしょうか。

ウルトラシリーズは元来、この点で構造的なジレンマを抱えたシリーズなんですね。「自分たちの星を守るのに宇宙人の手を借りなければお話が成立しない」という。
80は明確な形でそれに対して一つの結論を出したと思うんです。

あと、改造人間or宇宙人系のヒーローでは「たとえ○○が△△△でも○○は○○だ」って論旨がよくでてきます。ウルトラセブンの最終回。自分の正体を告白するダンに対してアンヌが「人間であろうと宇宙人であろうとダンはダンだわ」と言うシーンは歴史に残る名シーンでしょう。たとえ正体が地球人じゃなくたって既に仲間として築き上げてきた信頼が崩れることはない。もうその通りだし、人間そうでなきゃいかんでしょう。

で、80の場合、それとはアプローチが逆なところがまた面白い気がするんです。

80がヤマトだったから80も仲間だ‥‥じゃなくて、
ヤマトが他の星からきた80だから、これ以上迷惑かけちゃいけない。無事帰って欲しい。

セブンのラストがあくまで地球人をベースに置いて、でも異なる種族であっても人同士として仲間になれるという流れなのに対し、80は宇宙人を宇宙人と認めた上で尊重しようとしている気がして、それはそれで凄くいい感じだって思ったわけなんですね。

ヤマトはもともと中学校の先生で、前半は学園物の雰囲気が多いところも面白かったです。ちょっと教訓めいた話とかも無理なく通ってる気がして。いやいやなかなか。

ということで、80の最終回は見事、私的「好きな最終回」の仲間入りしました。今までは「ウルトラセブン」と「破裏拳ポリマー」(アニメです)の二つだったんですよ。ギャップありすぎですな。
2003/3/4

(戻る)
background by Little Eden