放映直前特番 さすらいは復讐のあとで
(前編)
<後編>
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飛島の位牌。「法雲道四成居士」と戒名。その下に遺影。
西条「飛島君は・・・12発の弾丸を受けていたそうだ。あの火の中で」
棺の前に座っている黒羽。赤星、離れたところで正座している。
黒羽の後ろで淡々と語る西条。
西条「犯人の特定は出来ていないが・・・・」
不意に立ち上がる黒羽。黙って遺影を見つめていたが、棺の横に立てかけたギターを持ち、出て行く。
赤星
(立ち上がって)「黒羽っ!」
赤星、西条と目が合う。西条、冷静に赤星を見るが、赤星は気まずげ。
赤星「あの・・・それじゃあオレもこれで」
西条
(苦い顔で軽くうなずき)「・・・・。あとはオレがやっておくよ」
赤星、黒羽を追って出て行く。
日が沈んでいく。夕日を見つめて立ち尽くし、ギターを弾く黒羽。
その後ろ姿を見ている赤星。
黒羽、ギターの弦を手で押さえ音を止める。無言でポケットから小さな紙を取り出す。
しばらくそれを睨み、またポケットに入れる。ギターを肩に担ぎ去っていく。
赤星
(心の声)「黒羽・・・・・」
深夜零時。横浜港。黒服の男たち。どこからか鋭い靴音、黒いマントと眼帯、
ステッキを持った男、ブラックスターが現れる。
ブラックスター「ぬかりはないな?」
男1「はい。病院の30億は入りましたし、あの幼稚園も土地を寄越すと言って来ました。バス爆破が利きましたな」
ブラックスター「ふっふっふ・・・あとはここで地獄組組長地獄龍が来るのを待つばかり・・・か」
突然ギターの音色と口笛。慌て出す男たち。
男2「な、なんだっ!」
男3「どこだ!?」
暗がりの中からゆっくりとした足音。僅かな灯りにその姿が見えてくる。
男4「あっ!あの野郎あの時の・・・」
ギターの曲が終る。姿がはっきりと見える。
黒羽「また、お会いしましたネ♪」
ギターを肩に担ぎ、ウインク。
男5「ボス、あのガキです!あいつが邪魔しやがって・・・」
ブラックスター「ほお、あの若造が・・・」
黒羽
(紙を取り出してヒラヒラ振りながら)「落し物ですよ」
ブラックスター「目障りだ、始末しろ!」
黒羽に襲い掛かる男たち。黒羽、それを次々と叩きのめしていく。
最後の一人をギターで殴り飛ばし、ブラックスターを返すギターで指差す。
黒羽「ブラックハート団ボス・ブラックスター!幼稚園バスを爆破し、その上病院を爆破し30億円を脅し取った話はしっかり聞かせてもらったぜ」
ブラックハート「ふん・・・!それで・・・どうするつもりだ? お前にはそれを話す機会はもうない・・・」
黒羽「何!?」
ブラックスター「これを見るがいい若造!」
いつのまにかやって来ていた地獄龍。昼間助けた幼稚園の先生を人質にとっている。
ブラックスター「いいタイミングですなあ地獄龍さん」
地獄龍「全く、いいところを頂いて」
黒羽「く・・・・」
ブラックスター
(黒羽を顎で示して)「・・・・片付けろ」
どこからか現れた大勢の部下たち。黒羽を殴り蹴り、叩きのめす。
黒羽、人質を取られて抵抗できない。
ブラックスター「はっはっはっはっは!!いいぞ、もっと苦しめてやれ!」
地獄龍「地獄の苦しみを与えてから殺せ!!」
ひたすら耐える黒羽。限界が近づいていく。
赤星「そこまでだブラックハート、地獄組!!」
ブラックスター「何っ!!」
地獄龍「何者だ!?」
黒羽「フッ・・・・・」
コンテナの上に立つ赤星。黒羽に親指を立てて見せる。
コンテナから飛び降り、虚を突かれた地獄龍から幼稚園の先生を助け出す。
黒羽、その隙に男たちを蹴散らす。赤星と黒羽、並んで立つ。
黒羽「幼稚園バスを爆破しただけでは飽き足らず、あまつさえ病院まで爆破したブラックスター! 許せん!!」
赤星「それに加担し人質まで取る地獄龍! 貴様もだ!!」
赤星と地獄龍、黒羽とブラックスターの戦い。
赤星、地獄龍の拳銃を蹴りで弾き飛ばし、腕を取って投げ飛ばす。伸びる地獄龍。
ステッキの先から針を飛ばすブラックスター。黒羽、それをギターで弾き返し、
顎を蹴りつける。倒れるブラックスター。
容赦ない黒羽、ブラックスターの首を掴んで持ち上げる。
黒羽「飛島四郎という男を殺したのは貴様だな!!」
ブラックスター「ち、違う!私はそんな男は知らん・・・」
黒羽
(ブラックスターの顔を横殴り)「嘘をつけ!!」
ブラックスター「す、すまん!!・・金なら払う! 許してくれ」
黒羽
(さらに首を締め上げ)「やはり貴様か・・・貴様が飛島を殺したんだなっ!!」
ブラックスター「ぐぇっ・・・・」
(首を締められて気絶)
パトカーのサイレン。だんだん近づいてくる。
黒羽立ち上がり、何かをブラックスターの体の上に投げつける。
数台のパトカーが到着し、その一台から西条が出てくる。
西条「これは・・・!」
気絶しているブラックスターのところへ駆け寄り、体の上にあるカードを取り上げる。
赤いバラのマークに『この者 爆破殺人犯』と書かれてある。
港から遠く離れた海辺。東の空が白んでくる。
赤星、波打ち際に立つ黒羽に歩み寄る。
赤星「これからどうすんだ」
黒羽、無言で小さな紙を渡す。名刺。
赤星
(それを読んで)「佐原・・・探偵事務所 所長 佐原俊吉・・・・」
黒羽「西条さんの繋がりで、そこからお呼びがかかっててね」
赤星「探偵か」
(名刺を返して)「派手な探偵だぜ」
2人、苦笑。
黒羽「・・・・喫茶店は手伝えそうにねえ」
赤星「残念だぜ」
赤星、何かを振り切ったように黒羽の顔を見る。
赤星「それじゃあな!」
赤星、去っていく。お互いに振り向かない。
完全に見えなくなった赤星。
黒羽、ギターを握る手に力がこもる。朝日が昇り始める。
黒羽「飛島――――っ!!!」
テロップ (3年後)
佐原探偵事務所の看板。2階の窓から中が見える。
こぎれいなフロア、いくつかの机の上に書類や資料が山積み。
佐原(電話口で)「はい、はい承知しました。は、それでは・・・」(電話を切って)「健!おーい、どこに行ったんだね健は。瞳、健は見なかったかい」
瞳「さあ、何しろ健さんのことだから。お仕事?」
佐原「困ったなあ・・・護衛の仕事だって言うから、こういうのは健じゃないとなあ」
瞳
(くすくす笑いながら)「たまにはお父さんがやってみたら?」
佐原「へっ?・・・あのね瞳、私はお父さんですよ。今さら護衛なんて勤まる訳ないでしょ」
突然ドアが開く。黒羽登場。
黒羽「お呼びですか、おやっさん」
佐原「健〜。まったくもう、ほっつき歩いてちゃ困るよ。お仕事ですよ、お仕事」
黒羽(書類をちらりと見て)「護衛ですか」(瞳の口調を真似て)「たまにはおやっさんがやってみたら?」
笑う瞳。渋い顔の佐原。
佐原「あのねえ健、無茶は言うんじゃありませんよ」
黒羽「またまたご謙遜を。この前天海山一家をお一人で潰したのは、どこのどなたでしたかな?」
佐原「それはまた別だよ、別。それよりきちんと書類見なさい」(書類を突き出す)
黒羽(書類をうけ取り)「はいはい。・・・・ふん、Z機構日本本部、田島十兵衛博士・・・聞いたような名ですねえ」
佐原「ともかく早く来てほしいそうだ。行ってくれるな健」
黒羽「くれるな、なんて野暮ですよ、おやっさん」(敬礼もどきのポーズ)「それじゃ、行ってきます」
ギターを持って出て行く黒羽。
とある研究所。会議室。何人もの科学者が集まって、一人の青年の話を聞いている。
赤星「その男なら必ずいけます! 条件は完全に満たしています」
横のケースを見る。中に黒いスーツ。
赤星「リーブス・プロジェクト、プロトタイプ2号、ブラックリーブス!」
スーツのアップ。テロップ(ブラックリーブス・スーツ)
突然ギターの音色。科学者たち、驚いてドアに注目。赤星は背を向けたまま。
黒羽
(ヒュ〜ウと口笛を一吹き)「ブラックリーブスねえ」
その後ろに田島博士。黒羽、目深にかぶった帽子を少し上げる。
黒羽「いやな色だぜ」
赤星、振り返り黒羽と向き合う。
赤星「やっぱり手伝ってもらうぜ。喫茶店」
黒羽「フッ」
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