第30話 心つなぐ手
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昨夜の雨で墓碑は洗われて、朝の光の中にむしろ美しく映えていた。

早朝の墓地はどこか荘厳な気持ちになる。ゆっくりと砂利を踏みしめて歩きながら、赤星はそう思った。両手にぶら下げた手桶の中には少しだけ開きかけた黄や白の菊が放り込まれている。見慣れた石の並びの中を歩いていき、一つの黒御影の前で立ち止まった。

的場家之墓。

いつものように、しばしその伸びのある筆勢を見つめる。軽く一礼して墓に踏み込み、手慣れた手つきで玉砂利のすき間の雑草をむしり始めた。花受けに水を注いで雨水を追い出すと、持ってきた菊を生け、残りの水で周囲を洗い流す。春の風から庇うように一巻きの線香に火を付けると、二つの束に分けて立て、片膝をついた。

(すんません‥‥。的場のやつ、まだ見つからなくて‥‥)
両手を合わせながら、いつから自分は、的場本人でなく、ずっと昔に死んだというその両親に話しかけるようになったのだろうと思った。ここに眠る夫妻の一人息子が行方不明になって、もうすぐ11年という歳月が流れようとしている。
本来であれば肉親しか知ることのできない捜索の状況を時々西条に教えて貰っているが、その行方はいまだわからない。日々の忙しさの中で墓参が惰性と化していることを詫びながらも、それでもこれが唯一の希望の糸のような気がして、赤星は、年に数度のこの行事を止めることができないでいた。

立ち上がって空の手桶を掴み、墓から下りた時だった。さっきから聞こえていた足音が、同じ区画の角を曲がって来たのがわかって、そちらを見やった。

きびきびと歩いてくるのは、真っ白なスーツを着た一人の男だった。こんな時間だというのに、色の濃いサングラス。少しウェーブのかかった柔らかそうな前髪の下からくっきりと形のいい眉がのぞく。黒い革手袋をはめた手に真っ赤な薔薇の花束を持っていた。


赤星の手から、手桶が滑り落ちて、渇いた音を立てた。


歩いてくる男はけっして大柄ではない。だが、その呆れるほど気障な服の下には、驚くほど鍛え抜かれた肉体が隠されている。一切隙がない歩き方。何かあれば鞭のように反応するに違いない身体の運び。だがその気配には確かに覚えがある。赤星は、その姿から目を離せなくなっていた。

男は、赤星がたった今参った墓の前で立ち止まると、踵だけでくるりと墓石の方に向きを変えた。古代ギリシャの彫刻を思わせる端正な色白の横顔を、赤星は声もなく見つめる。と、赤みのある唇の端がにっとつり上がった。ごく自然にサングラスを外して胸ポケットに入れたが、赤星の目にはそれがスローモーションのように映った。

「‥‥的場!!」

この男の名は、的場 陣。

西高校にいた赤星が2年に進級した春、隣の学区の北高校に転校してきた。拳の達人だったが、スポーツとしての拳法を嫌い、ルール無用の喧嘩を好んだ。これという相手がいれば、やり合うためだけに遠くまで出向く。当時、喧嘩負け無しで名前の通り始めた赤星に勝負を挑み、二度、拳を交えたあと、いきなり消息を絶った。

高校の時より一回りがっちりして、しなやかさに鋼の強靱さが加わった気がする。顔つきは成熟して、かつてのようなぎらぎらした闘気は感じられない。ただ、確かに笑んでいるのに、近寄りがたい冷たさが漂っていた。

「‥‥へえ‥‥。こんなところで君と逢うとはね」
的場は視線を合わせることなくそう言うとそのまま石段を上がった。墓石に歩み寄ると、花受けの菊を無造作に抜き取って脇に投げ捨てる。あっという赤星の一声を無視すると、薔薇の花束を墓石の前に置いた。くるりと向きを変えて区画から出てくる。

「なにすんだよ! ったく、せっかく逢えたってのに、いきなり‥‥」
「こんなことで、自分のやったことが許されると思ったら大間違いさ」
赤星の不満げな声が、ぴしゃりと遮られた。
「許される‥‥って‥‥?」
赤星の目がきょとんと丸くなる。的場が昔のままの、少し高い通る声で、静かに言った。

「‥‥‥‥君はマヌケだよ‥‥。僕の前に顔さえ出さなければ、生かしておいてあげたものを‥‥」
笑みを浮かべたまま近づいてくる。記憶の中の的場はこんな冗談を言うタイプではなかった。だが、その態度はごく親しげで、こいつも歳をくって変ったのかと赤星は思った。

「!」
スナップの効いた猛烈な右拳が赤星の鳩尾にめり込んだ。反射的に両手で受けたが、重心をずらすのが後れる。赤星は数歩後によろめきながらも辛うじて足場を保った。
「な、なにを‥‥!」
続いて同じ右拳がアッパー気味に迫る。スウェーとステップバックで、既に膝横に入ろうとしていたローキックもぎりぎりで交わした。ちょっと手を合わせてみるといったお気楽な気配ではない。殺気がゼロから一気にレッドゾーンまで跳ね上がる、そんな感じだった。

「待てよっ!」
距離をとった赤星に白い疾風が突っ込む。繰り出される矢継ぎ早の攻撃をひたすらに防ぐ。的場が実際に使っているのは右手と足だけ。なのに異常に早い。高校時代は実力はとんとんと踏んでいたのに、この10年で追い越されてしまったのは確かのようだった。

制止の叫びがことごとく無視される。それでもなお赤星の心を占めているのは、怒り以上に困惑だった。自分にもう少し気配りというものがあれば、的場の家出を止められたのでは、という気持ちは確かにあった。それでもここまで憎まれる筋合いは無い気がする。

常ってわけにはいかねえが、ずっと気にかけてきたんだ‥‥。なのに、なんで‥‥こんな‥‥!

反撃無しと踏んだのか大振りの右拳が飛び込んで来た。一瞬左に避けると見せて、逆側に身体を開く。突きの変化した肘打ちを両手で受けると強く押し返した。相手の膝裏を蹴りすくって、そのまま後ろに距離を取る。的場もバランスを崩しただけですぐ体勢を整えた。その口元には、今やはっきりと嘲笑が刻まれていた。

「‥‥‥いいだろう。少しは抵抗してくれないと、こっちもつまらない」
「説明しろ、的場っ 俺がいったい何したってんだ!」
「ハッ 君にそんな演技の才能があるとは思わなかったよ。よくそこまでしらを切れる‥‥」
「俺にはマジわかんねえよ! だいたい、いきなり家出して、ガッコもやめて! 消えちまったのはお前の方じゃねえか! あのあとどれだけ探したと思ってんだよ!」

「君が卑劣なやり方であんな風評を流したりしなければ、僕だってしばらくはあそこにいたさ」
「風評だ‥‥? ‥‥‥まさか‥‥、お前が俺に負けたって、あの噂か!?」
「それ以外に何がある?」
「ま、待てよっ 俺は知らねえ! 俺だって、お前がいなくなって驚いて、お前の高校行って、そこで初めて聞いたんだ! あの勝負、事故のセイで途中になってんじゃねえか!」

的場の顔から笑みが消えた。顔の前に黒い革手袋の左手をあげる。
「‥‥今まで、君みたいなヤツ、殺す価値もないと思っていた。だけど、こうやってまた、そのお坊ちゃん面を見ると反吐が出そうだよ。消してやるさ、永久にね」
今までほとんど使われなかった左手。赤星が反撃を躊躇ったもう一つの理由‥‥。あの時の事故で大きな傷を負った‥‥その左手‥‥。

的場がゆっくりとその手袋を取る。赤星の目が吸い寄せられるように大きく見開かれた。手袋の下から出てきたのは精巧な感じのする黒い義手だった。
「そ‥‥れ‥‥‥」
「科学の進歩ってのは便利だよね。麻痺が残った元の腕より、もっと役に立つモノをくっつけてくれたよ」

的場が左袖を少し引くと、赤星に見せつけるように、その腕をゆっくりと捻った。赤星は言葉を失っていた。それは、普通の生活に役立つ‥‥という感じのものではなかった。鈍く輝く黒い金属が、朝の光に晒されて、ひどく禍々しく見えた。
「金属探知機のある所でも、義手だとわかるとたいてい通してくれるのさ。それも同情ぶってね。仕事にはほんと役立ってるよ」

赤星は、自分の鼓動がやけに大きく響いてくる気がした。こいつは、いったい‥‥

的場が左手にまた手袋をはめた。手首を少し曲げ伸ばしする。きしきしいう音が聞こえて来そうだ。
「さて‥‥。昔のよしみで見せてやった。だからもう、手加減はしないよ?」
的場の磨き上げた黒い革靴がとんっと地を蹴った。ほれぼれするようなバネを見せて一直線に飛び込んでくる。赤星はぐっと奥歯を噛みしめると今度は自分から踏み込んだ。

的場の右の正拳をむしろ間合いを詰めて避けた。拳が首の付け根をかすって熱い痛みを感じる。両手でその危険きわまりない左拳を押さえると同時に、相手の身体に左膝を叩き込んだ。的場の左足が赤星の残った右足を内側から払う。赤星は躊躇いもせずに重心を前に倒すと、左腕ごと的場を地面に抑え込もうとした。

急に的場の左手が有り得ない方向に回転して、赤星の腕を掴もうとした。赤星はぎょっとして手を離し、勢いのまま地面を一回転して立ち上がる。その時には既に的場が間近まで迫っていた。フック気味に入ってきた右拳を思わず右掌で受けてしまう。空いた右の脇腹に的場の左拳が飛び込んだ。

しまったと思った瞬間、内臓が口から飛び出そうな衝撃が走り、息が止まる。視界が暗転して、まろぶように後ろに逃れ、そこで崩れた。かろうじて片手で上半身を支え顔を上げた。
角度はずらしたはずだ。身体も実していた。だのになんて衝撃だ。こんなものをストレートに喰らったら、殴られ強い赤星をしてどうなっていたかわからなかった。

的場が白いきれいな歯を見せて、にっこりと笑った。
「もう少し強くなってるかと思ったけど、期待ハズレだね。それとも僕が強くなりすぎたのかな? 若かったとはいえ君みたいなヤツを一瞬でもライバルと思ってたなんて、自分が恥ずかしいよ」

じゃり‥‥と革靴が踏み出す。
「そのうえ‥‥ついてもない勝負に勝ったなんて云いふらすヤツをね‥‥」
「‥‥ち‥‥違う! 俺はそんなこと‥‥云ってねえ!」
「君はただの偽善者さ。でももう、それも最期だ」
的場の眉間に自分を嫌悪する縦皺が刻まれるのを赤星は見た。端正な顔立ちだけに、ひどく酷薄な感じがした。両膝と片手で本能的に後じさる。だが蛇に睨まれた蛙のごとく身体がうまく動かなかった。

的場の黒手袋が何かを弾いた。目の前にキラリと金色のコインが落ちた。
「三途の川の渡り賃だ。持っていくがいい。今の君程度の腕で、この僕の‥‥超一流の殺し屋であるハンドに殺されるなんて、とっても光栄な話なんだよ、赤星君?」
「‥‥殺し屋‥‥?」
「そう‥‥」的場は喉の奥でくっくっと笑った。
「その意味では君に感謝すべきかな? 情とか、つまらんものを全部捨てさせてくれた君にね!」
「まと‥‥ば‥‥!」赤星が、押し殺した悲鳴のような一言を発した。

的場の身体にくんと力が漲ったとき、砂利を踏む多数の足音と話し声が聞こえてきた。墓参客のようだった。的場はすっと身体の力を抜き、両足を揃えると白い襟を正して髪と胸のチーフを整えた。そして這い蹲って自分を見上げる赤星に、再びにっこりと笑いかけた。
「一応墓参りのお返しをしないとね。恐怖の数日間。次までその命、預けておいてあげよう。云っておくけど、何をやってもムダだからね」
胸のポケットから濃いサングラスを出してかけ直すと、的場は振り返りもせずに遠ざかっていった。

赤星の全身からくたりと力が抜けた。汗まみれの額を腕に埋めてうずくまると、荒い息を数度ついた。顔を上げると、金色のコインが目に飛び込んできた。

不気味な髑髏のレリーフが彫ってあった。


===***===

「はいっ 喫茶『森の小路』で‥‥あ、マスター‥‥え、黒羽さん?」
電話に飛びついた輝が、受話器を黒羽に差し出す。
「黒羽さんっ マスターからだよっ」
黒羽はおやおやという風に肩をすくめると、受話器を受け取った。
「よう、どうしたね?‥‥ん?‥‥‥‥ああ、わかった」

黒羽の声がちょっと真剣になったのを輝は聞き逃さない。
「どうしたの? 何か‥‥」
「いや、なんでもねえよ。旦那のやつ、面白い刀剣屋を見つけたから来いとさ」
「あは、マスターも黒羽さんもそーゆーの好きだねっ」
「ったく、ガキみたいだからな、あのお人は‥‥。じゃ、坊や、店番を頼みますよ」

いかにも自分も店を見ていた風の言葉を残し、敬礼もどきの手振りで店を出ていく黒羽を見送りながら輝は微笑んだ。だって、黒羽さんだけで店番したら、いったいどういうことになるんだろ? まずお客さんの注文とるでしょ‥‥それで、コーヒー淹れて、サンドイッチ作ったり‥‥‥


後輩の可愛い想像のネタになっているとも知らず、黒羽は悠然とした態度で店を出た。輝の視界から抜けるといきなり早足で裏の居住棟に回る。赤星が自室から携帯で自分を呼び出すなど、あまり考えられないシチュエーションだった。幸い黄龍は佐原探偵事務所に行っている。瑠衣は‥‥黒羽にとってはあまり幸いでないことに、黄龍にくっついてやはり事務所に行ってしまった。一人娘の瞳がヨーロッパに行ってしまったために、書類の整理やらなにやらが大量に滞っているためだった。

「森の小路」の奥にある居住棟は、傍目にはごく普通のアパートに見えるが、中身は広めの長期滞在型ホテルのような作りだ。各部屋にはユニットバスと簡単なキッチンがあり、ベッド、デスク、ロッカーといった最小限の家具は用意されている。1階に2部屋、2階と3階に5部屋ずつあり、黄龍と輝と瑠衣の部屋は2階だ。葉隠たち科学者も仕事が忙しければ空いた部屋に泊まった。

赤星の部屋は1階の一番出口に近い箇所。その奥が黒羽の部屋。最初に出来たのがこの二部屋だったのでこうなった。ノックして赤星の必要なものしかない殺風景な部屋に入る。部屋の主は机の椅子を移動してくると黒羽に勧め、自分はベッドに座った。少し照れくさそうな笑顔は浮かべているものの、なんだかひどく疲れたような感じで、まったくいつもの赤星らしくなかった。

「わりいな。ヘンな呼び出し方しちまって」
「どうしたんだ、いったい?」
「いや‥‥ちょっと個人的な相談でさ。お前、ハンドって名前の殺し屋のこと、聞いたことある?」
「名前だけは聞いたことがある。拳法の達人で、武器を使わずに殺しをやるらしいな。ターゲットがかなりの使い手か、ターゲットの用心棒に強いヤツが入ってないかぎり引き受けないって話だ。で、殺しの現場にコインを残していく‥‥」

「それって、こんなヤツ?」
赤星が黒羽の前で掌を開いた。金色のコイン。黒羽はそれを取り上げると、試すがめつ、何度かひっくり返した。表に髑髏、裏には左手の骨格がレリーフされている。
「オレも‥‥初めて見るが、話とは合ってるな。いったいどこで、これを‥‥?」
コインから視線を上げると、赤星がひどく苦しげな表情を浮かべていた。

「そいつ‥‥どのくらい殺してるんだろう‥‥」黒羽の問いには答えず、そう言った。
「さあ‥‥。たいていは悪党同士のつぶし合いで、どちらかに雇われるケースが多いらしいが、カタギの殺しでも、じつはハンドが絡んでたって噂のあるヤマはある。名前が売れてからだって大物ばっかり十やそこらはやってるだろうから、その前から入れれば‥‥」
「そう‥‥か‥‥」
赤星がほうっと息を吐くと目を閉じて仰向けた。と、その顔が痛みをこらえるように一瞬歪み、手が右の脇腹を強く押さえ込んだ。黒羽の眼差しがすっと険しくなる。

「お前‥‥‥。まさか、ハンドにやられたっていうんじゃないんだろうな!?」
「‥‥なんとか直撃は避けた。たいしたことはねえ‥‥」
「おい、ちゃんと話せ。いったい、どういうことだ!?」
「‥‥‥‥知り合いだったんだよ、そいつ‥‥」
「なんだって?」
「‥‥‥昔、高校の時に行方不明になっちまったダチがいるって、云ったことあったろ? 西条さんにつなぎつけてもらって‥‥。で、今日、ひょんなことでそいつに会ったんだ‥‥‥」

沈黙が続いた。普段の赤星は聞かれるままに自分の事を話すタイプで、こんな様子になることはあまりなかった。黒羽は先を促さなければならなかった。
「それで? なんでやり合うことになったんだ?」

「‥‥俺があいつを騙したって思ってて‥‥俺を‥‥殺したいって‥‥。俺、そんなことしてねえんだ! でも‥‥勘違いしても、ムリねえのかもしんねえ‥‥‥」
食いしばった歯の間から押し出すように呟く。
「‥‥殺し屋なんて‥‥‥‥‥‥」
そのまま深くうなだれてしまった赤星に、黒羽は珍しくかける言葉に窮した。

「‥‥‥‥赤星、何があったかは知らんが、ハンドがお前を狙ってるとあっちゃ、オレとしても黙ってるワケにはいかねえな。こっちのつて使って、あと警察にも‥‥」
「それは‥‥! ‥‥あ、いや‥‥」
顔を上げた赤星は、視線を少し泳がせ、黒羽を見て引きつった笑みを見せた。
「もしあいつがお前の云うような腕利きの殺し屋なら、見逃してくれたりしねえだろ? きっとそんなホンキじゃねーんだよ。ほら、今日、いきなり会ったからさ。俺の方もびっくりして、まともに受けらんなかったし。ちゃんと気を付けるよ。しばらく防護服とか‥‥」

「ごたくもたいがいにするんだな。自分の立場はわかってるはずだ。お前の命、今はお前だけのもんじゃない。それに、ハンドがすでに何人も殺してるのは事実なんだぜ?」
「‥‥わかってる‥‥。でも‥‥‥あんとき、俺が、もう少しなんとかできてたら‥‥‥」
「お前さんの悪いクセだよ。そうやってなんでも責任を感じちまうのは。だが、過去にこだわっても仕方ねえだろう。今となっちゃハンドを助ける道は一つしかない。逮捕して罪を償わせるんだよ。旦那ならハンドの囮ってヤバイ役目も務まるだろうしな」

赤星は泣き笑いのような表情を浮かべた。
「‥‥‥‥また、アイツに恨まれるな‥‥‥‥」
「ほっとくんだな。恨まれたって、死にゃしないさ」
黒羽がにやりと笑って答えた。


2002/6/30

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