第14話 悪夢の旋律!小さな友情
(前編) <後編> (戻る)

昼下がり、ギターを弾きながら歩く黒羽。曲が終わり、ギターを肩に担ぐ。人通りのある通りに入るが、ふと不審げに帽子を上げる。至るところで音楽が流れている。町のあちこちで頭を抱えて苦しむ人々。店の中からよろけながら出てくる女性。壁にもたれかかる人も多い。黒羽のすぐ前、電話ボックスに寄り掛かってうずくまる男性。

黒羽 「大丈夫ですか、しっかりして下さい」
男性 「ううっ…と、突然頭が割れるように……」
黒羽 「他の皆さんも?」
男性 「はい、みんな急に……うっ」

開け放たれた店のドアから流れる音楽、曲の盛り上がりにかかる。音が大きく、曲調が激しくなる。一斉に更に苦しみだす人々。

男性 「うああっ!」
黒羽 「!今救急車を………うっ!?」

黒羽の意識が不自然に揺れる。頭の奥で甲高い音。

黒羽 「な…これは…!」

店のドアに目をやる黒羽。

黒羽 「あれか!!」

店に入る。店内の人々も苦しんでいる。黒羽、スピーカーの電源を消す。一人また一人起き上がる店の人々。

店員 「あ、あれ…?」
店員2 「今のは?」

店を飛び出し、外の様子を見て愕然となる黒羽。見境なく暴れ回る町の人々。やたらに物を壊し、振り回している。一様に目つきが尋常ではない。

黒羽 「ばかな……一体何が!」

飛んできた看板を避ける。辺りを見回す黒羽。

黒羽(心の声) 「どこだ、音楽はどこから…」

意識を強く保ちながら、町中の音楽という音楽を消して回る黒羽。屋内の人を助けるが、外の状況は依然として変わらない。町の外、建物の壁に大きなスピーカーを発見。

黒羽 「あれかっ!」

建物に入り、階段を駆け上がる。外壁に出て、スピーカーを開けて配線を切る。他のスピーカーも同じように切っていく。町から音楽が消える。正気に返り始める町の人々。一息ついて帽子をかぶりなおす黒羽。が、ハッと港の方を見る。

黒羽 「まずい!!」




港。昨日黒羽と会った所に座っている茂少年。ポケットからハーモニカを出して吹こうをしたところ、黒羽が走ってくる。

黒羽 「茂くん!!」
茂 「あ、お兄さん!」

駆けつけて茂の目の高さにしゃがむ黒羽。

黒羽 「茂くん、ハーモニカは吹いちゃだめだ」
茂 「え…?ど、どうして!?」

茂の両肩に手を置く黒羽。

黒羽 「いいかい茂くん、よく聞くんだ。原因は分からないが、今音楽を流すのは危険だ」
茂 「…なんで?ねえお兄さん、どうして!?お兄さんギター教えてくれるって言ったのに…」
黒羽 「…茂くん。今音楽を聞くのは本当に危ないんだ。まず頭が痛くなって、自分の意志とは関係なく暴れだ…」
茂 「お兄さん、ボクのこと分かるって言ったのに!ボク、施設ではうるさいって言われるからハーモニカ吹けなくて……お兄さんも施設の人と一緒だ!!」

走り去る茂。

黒羽 「茂くん!!」

追うように手を伸ばす黒羽。が、入り組んだ港の中に消えてしまう茂。

黒羽(心の声) 「茂くんは頭のいい子だ、きっと今の話も分かってくれる。…………だが…」

後ろから車のクラクション。振り向く黒羽。柵の向こうに白いパトカー仕様スポーツカー停車。運転席から出てきた男、黒羽の前に駆け寄り立ち止まる。

早見 「おう、いたいた黒羽健!」

テロップ(警視庁警備局特命課 特警刑事 早見瞬)

黒羽 「おう、特警の早見瞬か」
早見 「こんなとこで何やってんだこのバカ!このクソ大変な時だってのに」
黒羽 「分かってる。音源は絶ったか」
早見 「あ、あったり前よお! オレの担当区域はまだだけどよ。それよりお前、頭はやられてねえだろうな」
黒羽(自分を親指で指差して) 「見ての通りさ。お前こそどうだ」
早見 「正気も正気、大正気よぉ。とにかく特殊L部隊は何をやっているんだ! つって本部長お冠だぜ。早くおめえらも動けよな」
黒羽 「それだ! ちょいと借りるぜ!」

車に乗り込み、ホイルスピンさせて発車。あっという間に去って行く。

早見 「あーっ、オレのレゾンスコード!!」

追いかける早見。が、すぐ諦める。

早見 「あの野郎! また本部長に怒鳴られるじゃねえか…」





森の小路の前に停まるパトカー。飛び出てくる黒羽。店内になだれ込むように入る。コンポから流れる音楽、頭を抱え込んで苦しんでいる赤星たち。

赤星 「く、黒羽…!!」
黒羽 「くっ!!」

カウンターを飛び越えて中に入り、音を消す。立ち上がる面々。

赤星 「黒羽、一体どうなってんだ?」
黒羽 「見た通りさ。さっきも特警が来たが、この辺り一帯の音楽には有害音波が流れ込んでいる!」
黄龍 「それってあんたの歌のこと?」
赤星 「ゆ、有害音波!?まさかスパイダルの陰謀か!!」
黒羽 「そうに違いない!特警が動いているのが何よりの証拠だ!」
瑠衣 「音楽にスパイダルの音波だなんて…町の人たちは大丈夫なの?」
黒羽 「特警はその救出と防止に当たっている!」
翠川 「どこかにまた怪人が!?」
黒羽 「まだ見つかっていないが、必ずどこかにいるはずだ!」
赤星 「よおし!町の人たちは特警に任せて、俺たちは元凶を追うぞ!」
黒羽 「待て! その前にオレたちも音波を防ぐ必要がある」

顔を見合わせる黒羽以外の4人。

黒羽 「?」
赤星 「それなら心配いらねえぜ、黒羽!博士!!」

葉隠、厨房から登場!

葉隠 「話は聞いた!」(耳からイヤホンをはずす) 「この超小型超音波遮断装置を量産すればいいんじゃ!!」
黒羽 「何ぃ、すでにそんなものが!?さすがは博士、抜け目ありませんね」
赤星 「それを改良し、妨害音波を出す装置を作りオズブルーンに搭載すれば!」
博士 「そんなもん1時間もありゃあ充分じゃい!」
赤星 「よおーしみんな!俺と黒羽は博士たちを手伝う、黄龍と瑠衣、翠川は特警と協力して人々を救ってくれ!1時間後ベースの格納庫に集合、出動だ!!」
4人 「おおっ!!」





暗い格納庫。暗闇の中に鉄の塊の気配。次々にランプが点灯、赤や黄色にの光に照らされるメカたち。それぞれの色の光の下のセクター5台。コンソールの全スイッチが入るレッドハリケーン。赤いアラームが着く。その横のオズブルーン。翼の下に新しい装備。全てが緑色のアラームに切り替わる。響き分かるエンジン音。滑走路にセンターラインにビームが走る。

人口音声『オールシステムグリーン レッツターン ジ イグニッション オープンザスロットル!!』

赤星 「発進!オズリーブス!!」

格納庫を飛び出していくイエロー・グリーン・ピンクのセクター。レッドハリケーン、オズブルーン。






  

格納庫を飛び出したオズブルーン。通信が入る。

赤星『おい黒羽、大変だ! 今、西条さんから連絡があったんだが、音波を喰らった人は暴れるだけじゃ済まねえぞ!』
黒羽 「何ぃ、どういうことだ!」
赤星『同士討ちだ!人間同士殺し合いを始めちまう!! しかも音波による洗脳の第二段階、つまり正気を失って暴れ出した時点で筋力や瞬発力、耐久力は通常の3倍以上になる!!』
黒羽 「何だとお!!死者はぁ!!」
赤星『まだだ!ただ特警の一人は助けに入って重傷らしい!! 音波の方は頼むぜ!』
黒羽 「分かった!今すぐ何とかする!!」
赤星『今、音波処理の出来てない区域の地図を送る! 頼りにしてるぜオズブルーン!』

大きく旋回して市街地に向かうオズブルーン。



人々が暴れ回る町中。その人々を気絶させて回っている特警。服もボロボロになった若い刑事。

テロップ(警視庁警備局特命課 特警刑事 島正之)

島 「こんなことはしたくないんですけど…救急隊もここには入れませんからっ!」

飛び掛ってくる男性に当身を食らわせ、近くで暴れる女性の首筋に手刀を当てて気絶させる。角から数人の人を担いで現れる傷だらけの刑事。

テロップ(警視庁警備局特命課 特警刑事 柴田丈)

島 「柴田さん!」
柴田 「おう島!ひでえもんだぜこっちは」

ビルの階段から身を乗り出すハデな刑事。髪をかきあげて大げさな動作でまくしたてる。

三上 「ここなんて目も当てられないネ!だいたいヒトデ不足ヨ特警はぁ、ボスは何してんだよ!」

テロップ(警視庁警備局特命課 特警刑事 ジャン三上)

柴田たちの側に停まった大型ワゴン車。窓から顔を出す刑事。

テロップ(警視庁警備局特命課 特警刑事 竹本徹)

島 「隊長!これでこの区域の被害者は全員救出しました!」
竹本 「ホレ、乗っけてってくれい」

車から降りる竹本。気絶させた被害者たちを車に乗せる刑事たち。

三上 「隊長!ボスは何やってんのこんな時に?ハアーイ!」
竹本 「本部長は西条と早見と人探しだよ。連中、まあたどっかに怪人を潜ませてるに決まってるからなあ」
柴田 「で、どうなんだい」
竹本 「網にかかったってよ。L部隊に今連絡を入れたらしい」
三上 「L部隊ぃ〜? イマイチ信用しきれないのよネ奴ら!」
柴田 「そうだぜ竹さん、オレも今度ばかりはジャンに賛成だ。あんな素人どもより、オレたちが出向いた方がよかないかい」
島 「ムチャですよ柴田さん!僕らL部隊みたいに武装してないんですから…」
三上 「ボスのマクシミリアン・マークUがあるじゃねえか。アンダスターン?」
竹本 「わりとしつこい、お前らも。L部隊とオレたちとじゃあ管轄違いだ」

柴田、ふと顔を上げる。驚愕の表情。

柴田 「竹さん、危ねえ!」

大きな看板を振り上げて竹本の後ろに迫っている男。が、ふっと意識をなくし倒れこむ。慌てて受け止める竹本と柴田。後ろに乗りつける黒い覆面車と赤い車。赤い車から早見、黒い車から風間。

風間 「間に合ったか」

サングラスをとって空を見上げる。飛び去っていくオズブルーン。駆け寄ってくる刑事たち。

竹本 「終りましたよ」
風間 「ご苦労。あとは救急隊とL部隊に任せる」
島 「本部長、田口さんの怪我は!?」
風間 「全く心配いらん」
柴田 「そりゃよかった!これでこの件も一件落着って訳だ」
風間 「そうもいかん、我々はこの騒ぎに乗じた事件の捜査に当たる。思わんところでスパイダルに当たるかもしれん」
三上 「またあ〜!?冗談!何人かアセロポッドも混じってたんですゼ」

車内から叫ぶ西条。

西条 「本部長!!」
風間 「どうした」

赤い車に集まる特警。車内、カーナビに似たモニターに数個のランプが点滅している。

風間 「なにっ、まだ被害者がいたのか!」
早見 「ちっきしょう、全部退治したと思ったら!」
島 「早見さん『退治』はないでしょう」
柴田 「どこだ!」

西条 「港だ!」
風間 「そこまで移動していたか」

無線機を取る風間。

風間 「風間だ! 聞こえるかL部隊! 怪人と残りの被害者の位置が分かった!」





港。埠頭に座る茂少年。

茂 「お兄さん…」

ハーモニカを手にとって見る。必死の様子の黒羽がフラッシュバック。

茂 「さっきはあんな事言っちゃったけど、きっと本当に訳があったんだ。今度会えたら謝らないと…」

小さな溜息。

茂 「お兄さん、怒ってるかな……」

突然背後から伸びる何人もの手!完全に顔色の変わった人間たちが茂を襲う!

茂 「うわあーっ!!」

茂の首を持ち上げる!だんだん首が鬱血してくる。狂気の表情の大人たち。茂の手からハーモニカが落ちる。その時頭上を滑空するオズブルーン!翼の下から音波。大人たちの顔色が戻り、正気に返る。が、すぐに気絶。海に投げ出される茂!場面一転、オズブルーンのコックピット。素顔の5人。

赤星 「着装!」
4人 「着装!!」

着装した5人、回転しながらオズブルーンから飛び降りる。ブラック、地面を蹴って茂を抱きかかえまた埠頭に着地。茂を立たせて、茂の目の高さにしゃがむ。

ブラック 「大丈夫かい、坊や」

茂の霞んだ視界に、見えたのは黒羽の姿。

茂 「…お兄さん!」(視力が戻る) 「………オズ、リーブス…………?」

ブラック、転がったハーモニカを拾って茂に手渡す。

ブラック 「ここは危ない。さっ、早く逃げて!」
茂 「う、うん!」

逃げていく茂。

レッド 「出て来い怪人!!そこに隠れているのは分かっているぞ!!」

倒れている人々の中から不気味な声。

『ふははははは、ばぁれぇたぁかぁ……』

人々の体から青い光が煙のように立ち昇る。それが集まって形を作り、コウモリの怪人が現れる!

レッド 「出たなスパイダル!」
オンパコウモリ 「我が名は誇り高き暗黒妖夢族最強の戦士、オンパコウモリ!! 作戦が破られてしまった以上は仕方がない、我が最強の能力で貴様らを直接地獄に叩き込んでくれるわ!!」
ブラック 「地獄に落ちるのは貴様だ!!音楽は人々の希望!それを悪用し、あまつさえ罪もない人々を操り傷つけたオンパコウモリ!! 貴様だけは絶対に許さんっ!!」
レッド 「龍球戦隊!」
5人(名乗りポーズ) 「オズリーブス!!」

翼を広げ天を仰ぐオンパコウモリ。

オンパコウモリ 「いでよアセロポッド!!」

はるか彼方からトンボ返りしながらやってくる大量のアセロポッド隊。

ブラック 「フッ。おいザコ、おいでおいで」

殴りかかるアセロポッド。その拳を上に払って開いた顔面にパンチ。一歩前に出て上体を倒し、後ろに来た一体に後ろ蹴り。蹴り上げた足をついて反転、振り向く勢いで一体を殴り倒す。一歩後ろに溜めて飛び回し蹴り。着地と同時に消える何体ものアセロポッド。

レッド 「今さらアセロポッドで歯が立つかっ!」

アセロポッドの蹴りを上に持ち上げ倒し、後ろから来たアセロポッドの腕を取り背負い投げ。投げの後しゃがみこんだところに襲い掛かってくる一体に飛び上がりアッパー。横から来る一体の首に足刀。蹴り上げた足で地面を蹴りつけ、一瞬溜めて構え。アセロポッドの胸に一撃。消えるアセロポッド。

イエロー 「そうそう、人海戦術は効率悪いっての!リーブラスター!」

横っ飛びでリーブラスター連射。次々とアセロポッドに命中、消えていく。地面を転がり連射。また消えるアセロポッド。イエロー前転して立ち上がり、腕の下から後ろに発射。アセロポッド消滅。


グリーン、連続バック転。その周りを何体ものアセロポッドがバック転で追う。バック転途中の逆立ちの状態でアセロポッドを蹴りつける。腕で飛び上がって着地、サマーソルトキック! 消えるアセロポッド。

グリーン 「ちょっと出来るからって見せびらかすからだっ!」


リーブラスター・ブレードモードをバトンのように頭上で回転させるピンク。ブレードを取ってアセロポッドたちに向ける。

ピンク 「いいわねっ、いくわよ!」

リーブラスターをホルスターに戻して、掛かってきた一体に足払い。倒れたところへチョップ。背後から来たアセロポッドを蹴り上げる。振り下ろされた拳を頭上で受け止め、振り返り様に手刀当て。
  
ピンク 「もうひとついかが?」
アセロポッド 「もうけっこう!」
ピンク 「えいっ!!」

ピンクの飛び二段蹴り。アセロポッド消滅。

レッドを中心に集まる5人。

レッド 「オンパコウモリ!次はお前の番だ!!」
オンパコウモリ 「ぬううっ………ちょこざいなこわっぱども!我が能力見て驚くがいい!!」

翼を広げるオンパコウモリ。翼から怪音波が!海面が震え、空気が揺れ始める。街灯が割れ、コンテナが崩れる。

オンパコウモリ 「どうだオズリーブス!!手も足も出まいハハハハハハハハ!!」

翼を羽ばたいて音波を強める。埠頭に波が砕け、コンテナが大破。船にひびが入る。

オンパコウモリ 「ふはははははは、死ねオズリーブス!!」
5人 「リーブラスター!!」

オンパコウモリの体にレーザー!爆発。
  
オンパコウモリ 「ぐあああっ!!なっ、なにぃ!?」

平然としてリーブラスターを構えている5人。

レッド 「残念だったなオンパコウモリ!!お前の音波攻撃に何も備えていない俺たちだと思ったか!!」
イエロー 「俺様たちはちゃーんと耳栓しといたのっ!」
オンパコウモリ 「な、なんだとぅ貴様らあ〜……」
レッド 「行くぜみんな!」
4人 「おうっ!!」
5人 「ドラゴンスターバズーカ!!」

バズーカ登場、照準を合わせる。


レッド 「発射!!」
オンパコウモリ 「ぎゃああああああ!!!」

オンパコウモリ大爆発。



コンテナの上に現れるアラクネー、息を飲む。

アラクネー 「おのれオズリーブスめ、またも邪魔をするかっ!!かくなる上はオンパコウモリよ、蘇ってコンビナートを襲い東京中を火の海にするのだっ!!」

ディメンジョンストーン制御光線。巨大化するオンパコウモリ。

レッド 「リーブロボ、発進!!」

オズベースから飛んでくるリーブロボ。搭乗する5人。

ブラック 「まずい!奴はコンビナートに向かっているぞ!」
レッド 「くそっ、目と鼻の先じゃねえか!絶対に近づけさせん!龍球剣だ!!」

スイッチを押すレッド。龍球剣が現れ、剣が光を放つ。

レッド 「龍球剣!」
5人 「リーブクラッシュ!!!」

巨大オンパコウモリを一刀両断、大爆発。





「スパイダル基地。BIの前に跪いているアラクネー。

シェロプ 「全く…これだから庶民は度し難い!! 今回の作戦少しは考えたかと思ったが、やはりこの程度だったようだな。全くもって救い難い!薄汚い下衆め…!」
スプリガン 「侯爵は甘いぜ、少しは考えたも何も、オレはハナからこうなるんじゃねえかと思ってたぜ。ま、他人のすることにゃ口出しはしねえがね」
ゴリアント 「ヒーッヒッヒッヒ!!いやあ笑わしてもらったぜぇアラクネーよ! あんだけ大口叩いときながらよお、期待通り大失敗やらかしてトンボ返りしてくんだもんなあ!」

3人、哄笑。アラクネー、無視。

アラクネー 「申し訳ございません司令官。この失敗、罰は甘んじて受けます…!」
BI 「もうよい、下がれ」
アラクネー(顔を上げる) 「はっ!?」
BI 「貴様、侵略の何たるか、征服の何たるかを全く分かっておらん…。今後しばらくの作戦指揮は許さん!下がれっ!!」
アラクネー 「は、はっ…!!」

3人の嘲笑を背に去って行くアラクネー。

BI 「静まれ痴れ者どもっ!!」

静かになる3人。

BI 「貴様らの馬鹿笑いも聞き飽きたわ! アラクネーの作戦は失敗に終った…。次なる戦略は立ててあるのだろうな!」
ゴリアント 「へい!!」

ゴリアント、シェロプとスプリガンを押しのけて前に出る。

ゴリアント 「ご心配なく、もう放してありまさあ。とっときの奴をね! 暗黒暴魔獣最強、最悪の奴を……!!」




静かで穏やかな港。気落ちした様子で座り込んでいる茂少年。向こうから黒羽の声。

黒羽 「茂くん!」
茂 「お兄さん!!」

駆け寄ってくる黒羽。走り寄る茂。黒羽の後ろには赤星たち。

茂 「お兄さん、ごめんなさいボク…」

黒羽、茂の肩に手を置いて、茂の目に高さにしゃがみこむ。

黒羽 「いいんだよ茂くん。それより大変な目にあったみたいだね。大丈夫だったかい?」

微笑む黒羽に重なる、茂の脳裏に浮かぶブラックリーブス。『大丈夫かい、坊や』とハーモニカを渡す。

黒羽 「どうした?…顔に何かついてるか」
茂 「ううん。ボクは大丈夫!ゴメンねお兄さん、ボク…ひどいこと言っちゃった」
黒羽 「分かってくれたらいいんだよ。お兄さんも悪かったんだから。ごめんな」

黒羽の後ろの黄龍、黒羽を指差して赤星に何か訴える。苦笑する赤星。

茂 「ううん、そんなことないよ!…ねえ、それよりお兄さんって……」
黒羽 「なんだい?」
茂 「………何でもない。ねえ、それよりね、施設の人がこれからは施設でもハーモニカ吹いてもいいって!」
黒羽 「そうか!よかったなぁ」
茂 「でも、またギター教えてくれる?」
黒羽 「もちろん。この前教えたのは覚えてるか?」
茂 「うん!」

黒羽の横に座る茂。黒羽、茂の頭を撫でる。

黒羽 「よおし!じゃあ今日はお詫びの気持ちも込めて、お兄さんが歌を歌ってあげよう」

黒羽のひと言に慌て出す赤星、黄龍、翠川。

赤星 「く、黒羽ちょっと待った! お前それはちょっと…」
黄龍 「せっかく事件も解決したってのに!」
翠川 「茂くん、この耳栓つけて!」
黒羽 「なんだお前ら、その態度は」
瑠衣 「そうよみんな。茂くんも黒羽さんの歌、聞きたいわよね?」
茂 「うんっ!お兄さんの歌聞きたい」
赤星 「茂くんなんてことを!!」

騒ぐ一同に重なるナレーション。

ナレーション 「時代も国境も越えて人々を繋ぎ、心安らぐ音楽がある。誰もが優しい気持ちになれる、また新たな美しい音楽が誰の心にも流れる世界。健は、そんな素晴らしい未来を見た気がした。この小さな音楽家の、輝く瞳に」

===***===(エンディング)===***===
(前編) <後編> (戻る)