龍球戦隊オズリーブス VS 野菜戦士ベジグルV
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黒羽が夕暮れの住宅地の中を歩いている。黒の上下に黒いテンガロンハット。住宅の塀の上にいた黒猫を見つけて手を出すとすり寄って来るので嬉しそう。猫を撫でながらふと前方の空を見上げる。雲から現れた二つの飛行物体が隣の雲の陰に消える。
黒羽「‥‥鳥‥‥じゃ、なさそうだな。なんだ?」
帽子を被り直し、猫の首筋をぽんぽんと叩くと、首をかしげながら歩いていく。

黒羽から少し離れた坂道、ベビーカーを押しつつ坂を下っていく母親。持ち手のあたりにバッグを乗せている。後方から二人乗りのバイクが走ってくると、いきなりそのバッグをひったくる。
母親「きゃああっ」
バイクの勢いで母親が転び、ベビーカーが離れて坂を下り出す。

悲鳴を聞いて走ってくる黒羽。
黒羽「ああっ」
その目の前を、スピードアップしたベビーカーが通り過ぎていく。大泣きしている赤ちゃん。慌てて追いかける黒羽。広い道に出た所で追いつきベビーカーの前に回る。赤ちゃんの頭部を庇いつつ、そっと車を止める。
黒羽「ふう‥‥」
そこに猛スピードで突っ込んでくる自動車。黒羽、ベビーカーだけなんとか押しやるが避けきれない。自動車、どん!という衝撃音と共に何かにぶつかって止まる(斜め後ろからのカット)。

声「でぇじょぶか?」
黒羽「‥‥?」
黒羽、顔を上げると道着姿のとんでもなく逞しい男の背中。自動車は男の片手で押しとどめられて壊れている。エアバッグの向こうで気絶している運転手。
黒羽「そんな‥ばかな‥‥」
黒羽、はっとしてベビーカーに駆け寄る。泣きわめく赤ん坊を抱き上げてあやす。
黒羽「びっくりしたね〜。もう大丈夫だぞ〜」
道着の男(いきなり覗き込む)「ケガはしてねーか?」
黒羽「たぶん‥‥」
道着の男「ほーら、泣くな〜。オラの顔、見てみろ。ぶぅううう〜」
フグのように膨らむ男のほっぺた。それが思い切りすぼまり、また膨らむ。きょとんとしてから笑い出す赤ん坊。黒羽もほっとしたように笑うと、男に向かって姿勢を正す。

黒羽「危ないところを、ありがとうございました。いったい貴方は‥‥‥‥」
道着の男「ん? オラ、孫悟‥‥」
声「おい、こら!」
声の方を振り向く黒羽。今度は白いマントとターバンの長身の男が立っている。気絶した男を2人引きずっている。ひったくり犯である。
マントの男「ったくお前は。余計なことを言うな」
道着の男「いいじゃんか、別に」
マントの男「ぜんぜん良くない!」
マントの男、2人の若者をどさっと投げだし、黒羽にバッグを渡す。
マントの男「すまんが、あとは任せる。(道着の男に向かって)ほら、いくぞ!」
2人がいきなり空に飛び上がりあっという間に見えなくなる。黒羽、呆然。そこに野次馬が集まってくる。赤ちゃんの母親が黒羽に走り寄る。黒羽、対応に大わらわ。

===***===

同じ頃。森の小路の裏の空き地。赤星、黄龍、輝、瑠衣、有望、そしてベジレッド(実はグレートサイヤマンこと孫悟飯)、ベジピンク(グレートサイヤマン2号ことビーデル)、ベジブルー(グレートサイヤマン3号こと孫悟天)。
赤星「空き地って、このくらいなんだけど‥‥」
ベジレッド「どうかな、ビーデルさん」
ベジピンク「大丈夫。ぴったりのがあるわ」
ビーデル、ケースからホイポイカプセルを取り出し、地面に投げつけると家が現れる。
輝 「うそ! すごーいっっ」
赤星「未来の妖術かっ!?」
瑠衣「やだー。せめて超能力とか魔法とか‥‥」
黄龍「じゃなくて、科学力っしょ、ふつー」
有望「‥‥信じられない。こんなに大きなものを原子化してカプセルに圧縮しているの? リーブ粒子だってスーツ一着が限界なのに‥‥。一歩間違ったら核爆発が起きそう‥‥。いったいどうやって‥‥‥‥。あなた!!」
有望、いきなりベジピンクの手を取る。
ベジピンク「は‥‥はい?」
有望「お願い。どういう仕組みなのか、ちょっとでいいから教えて下さらない?」
ベジピンク「えっ! そ、それはブルマさんじゃないと‥‥」
有望「まあ、開発者の方を知ってらっしゃるのね!? ねえ、何か‥‥」
赤星と黄龍、慌てて有望を押さえる。
赤星「ちょ、ちょっと、有望! ダメだって!」
黄龍「タイムパラドックスってか、そーゆーのまずいんじゃないの?」
有望「あ‥‥。そ、そうね。そのとおりだけど‥‥‥‥。あーん、もう! こんな凄いの目の当たりにして指くわえて見てなきゃならないなんて〜〜〜」
だだっ子のように仰向く有望。溜息をつく赤星。思わず引くその他。
ベジピンクの案内でカプセルハウスの中へ。現代人5人はきょろきょろ。居間へ入る一同。

黄龍「そのカッコのままじゃきゅーくつじゃない? こーゆーとこで変身ってのも‥‥」
輝 「確かに。過去でも変身は解除できるんでしょ?」
ベジレッド「それはもちろん! じゃあ‥‥」
ベジブルー「ちょっと兄ちゃん! ヒーローは正体がばれちゃダメだよ〜」
瑠衣が膝をついてベジブルーの肩に手を置く。
瑠衣「偉いわ、ベジブルー。でもね。戦隊ヒーロー同士はお互いに正体がわかっててOKなのよv だから安心して変身を解いてvv」
ベジブルー「へえ、そうなんだ! じゃ脱ごっと。ほんとはこれちょっと暑苦しいし、重いの」
ベジレッド(小声でこっそりと)「重いの悟天のだけなんだけどね」
変身を解く3人。

悟飯「僕は孫悟飯っていいます。こちらはビーデルさん、そしてこれは弟の孫悟飯」
瑠衣「わあ! ほんとの兄弟だったのね。悟天君よろしく。あたしは桜木瑠衣よv」
悟天「え、えと‥‥。初めまして‥‥」
黄龍「俺様は黄龍瑛那。で、こいつがテル‥‥」
輝 「アキラだよっっ オレ、翠川輝。みんなアキラって呼ぶからそう呼んでね」
ビーデル「あの‥‥。もしかして皆さん、名字と名前と両方持ってます?」
輝 「えっ? えーと、普通そうですけど‥‥。あれ? じゃあ、ビーデルさんって、ビーデルさんだけなんですかっ?」
ビーデル「はい。悟飯君や悟天君は名字があるけど、めずらしいんですよね、そーゆーの」
赤星「へえ。やっぱ未来は色々違ってるんだ。あ、俺は赤星竜太。あと有望は科学者で‥‥。俺の‥‥その‥‥」
赤星、有望を示してわたわたとしている。有望苦笑。黄龍と輝、瑠衣、爆笑。
瑠衣「もう、ダメじゃない、赤星さん!」
輝 「有望さんとリーダーはちょっと前に結婚したの」
黄龍「この国だと結婚すると二人が同じ姓になんの。んで、彼女は赤星有望さんってワケ」
ビーデル「わあ、いいなぁ! 新婚さんね! 悟飯君、素敵よね? ねっ?」
悟飯「え、あ、はい‥‥」
はしゃぐビーデルに赤星顔が赤い。なぜか悟飯も。きょとんとした悟天、悟飯の服の裾を引っ張る。
悟天「‥‥兄ちゃん。シンコンって何? おいしいの?」
一同爆笑。

輝 「そういえば、イエローさんやグリーンさんと連絡は‥‥?」
悟飯「はあ。それが、どうしても気が感じられなくて‥‥」
ビーデル「え、ほんとなの、悟飯君?」
悟飯「うん。たぶん父さん達もそうなんだよ。わかればすぐ来るはずだから。でも、父さんみたいな大きな気を感じられないなんて、どうなってるんだろ」
ビーデル「かなり時代を遡ってるから‥‥そのせいなのかしら」

赤星「あの‥‥。キって‥‥まさか気のこと? 呼吸整えて、身体ん中流れるあったかい‥‥」
悟飯「そうですそうです。それそれ」
赤星「遠くにいる他人の気がわかるってんですか!? なんか探知機みたいなもので?」
悟飯「いえ、普通にただ感じるだけなんですけど‥‥‥‥」
赤星「すっげー! そんな方向に進歩してるとは‥‥。みんな、そんなことできるんですかっ?」
ビーデル「誰も出来ませんよっ! 悟飯君達だけがヘンなんです!」
悟飯と赤星、がくっとこける。

瑠衣「でも2人とも、あのかっこいいコスチューム着てるんでしょ?」
悟飯「やっぱあれ、かっこいいですかっ!?」
瑠衣「はい!」
悟飯と悟天「ですよねぇ!」
黄龍(小さな声で)「そ、そう‥‥?」
瑠衣(黄龍をどついてから)「でもああいう服装の人あんまりいないし、警察に捜索願を出せばすぐわかるんじゃないかしら? 黄色と緑のマントの人を探して下さいって」
悟飯「それがだめなんです。2人とも普通のカッコのままなんですよ。イエローはジャマでやだっていうし、グリーンさんは死んでも着たくないっていうし‥‥」
瑠衣「えええ〜。もったいない〜〜」

輝 「似顔絵書いて探してもらおうか?(スケッチブックを出して)どんな特徴があるの?」
悟飯(悟天をぐいっと押し出す)「イエローは父なんで。悟天そっくりです。あ、歳はとってますが」
悟天「グリーンはピッコロさんでね、顔色が悪いの!」
輝 「か、顔色が‥‥?」
悟天「うん。普通の人だったら死んじゃいそうなくらい」
輝 「‥‥えーと‥‥。ああ、黒人の人とかなの?」
悟天「ううん。緑人かなぁ。触覚が生えてて、耳がとんがってるの」
輝 「み、未来ってそういう人がいるんだ‥‥」

有望「もっと普通にアプローチできないの? 通信機とか携帯電話とか‥‥」
悟天「だめだよ。お父さんもピッコロさんもそーゆーの使えないの。すぐ壊しちゃうし」
黄龍「おいおい‥‥。それでよくタイムマシンなんか操縦できたじゃん」
悟飯「最初の設定は絶対触るなって言っといたんですけどね〜。あはは‥‥」
輝 「そんな‥‥。別の時代とかで迷子になってたらどーするの!?」
悟飯「まあまあ大丈夫ですよ。あの二人がどーにかなるわけ無いじゃないですか。いざって時はとにかくこれ押せば帰れるってボタンがあるし、ピッコロさんが居れば父さんも周りの皆さんに迷惑はかけないでしょう!」
黄龍「ひええ‥‥。俺様、その人達に会うのが怖くなってきた‥‥」
悟飯「と、いうことで、とにかく!」
悟飯、びしっと拳をあげて決めポーズ。

悟飯「我々の使命は、究極野菜を倒しこの世界の平和を守ることなのです!」
赤星「おお! 同感だっ! 久しぶりに燃えてきたぞっ!」
輝 「オレも! みんなで力を合わせるんだねっっ」
ビーデル「そのためには新たな決め台詞を考えないといけないわ!」
瑠衣「きゃーっ それ賛成! あたしも手伝う!」

黄龍「おいってばさ。盛り上がるのはいいけど、どーやって残りの野菜探すの!」
ビーデル「それはそうね‥‥。探知機も効かないし‥‥‥」
有望「ねえ。他の究極野菜も子供をカプセルにする力を持っているの?」
悟飯「たぶんそうだと思います」
有望「さっきピンクがカプセル化された時の電磁波の変化を調べて特徴が分かれば、少なくとも事件が起こった場所は分かるかもしれない‥‥」
悟飯「ホントですか!?」
有望「保証はできませんけど、とにかく調べてみるわ」
悟飯以下3人「よろしくお願いします!」


===***===
翌朝。森の小路で朝食中の一同。未来人3人の前は飲み物だけ。
赤星「‥‥ってことで、警察にはスパイダルの残党らしいって言ってあるから、何か妙なことがあったら連絡してくれると思うんだ」
悟飯「良かった。この時代にも変なのが居てくれて‥‥」
輝 「ねえ、みんなほんとに何にもいらないの? まだ材料あるから作れるよ?」
ビーデル「いえ、大丈夫です。さっき"死ぬほど"食べてきましたから」
瑠衣(ショーケースのケーキを見てる悟天に気づいて)「でも悟天君、あれ、食べたいんじゃない?」
悟天「え‥‥。うん‥‥」
悟飯「おいこら、悟‥‥」
赤星「おお、頼むから食ってくれ! 今、ケーキ余って困ってんだ」
悟天「ホント!?」
瑠衣「一緒においでよ。好きなの切ってあげる」
瑠衣と悟天ショーケースの方に行く。
黄龍「何よ、博士ったら、また何か行き詰まってんの?」
赤星「逆、逆。野菜探知機のために久しぶりにフル回転モードにならなきゃって4つもまとめて焼いたんだ。俺と瑠衣でたくさん手伝わされたんだぜ!」

輝 「ねえ。究極野菜ってあとはどんな種類なの?」
悟飯「スイカとピーマンとトマトです」
黄龍「スイカは果物っしょ?」
ビーデル「私もそう思ったんだけど‥‥」
輝 「確かに微妙なところだよね‥‥」
赤星「中身は果物で皮は野菜じゃねえの?」
輝 「それじゃヘンだよ、リーダー」
赤星「でも赤いトコは炒められないから野菜じゃないし、皮は漬け物にできるから果物じゃないし」
黄龍「なんなんよ、それ!」
悟飯「いや、スイカが果物か野菜かは未来でも永遠の謎なんですが、とにかく今現在、この世界が巨大化したスイカの驚異に晒されていることに変わりはありません!!」

悟天「兄ちゃんの言う通り! 悪のスイカを倒さなきゃ!」
瑠衣と悟天を振り返る一同。悟飯とビーデル頭を抱える。
黄龍「る、瑠衣ちゃん。朝から食うにはちょーっとでか過ぎじゃねー?」
瑠衣半分ずつカットしたケーキを4種類。要は丸ごと2つ分のケーキを両手で抱えている。
瑠衣「だって、これだけ欲しいって言うんだもん。早く、テーブル空けて〜」
悟天「わーい! いっただっきまーす!」
悟天おもむろに2本のフォークで塊のままのケーキを持ち上げて口に放り込む。赤星たち唖然。
悟天「ほへ、おいひい〜」
悟飯(冷静に)「悟天。食べながら喋るのやめなさい」
黙々とケーキを平らげる悟天にショックの4人。黄龍は見てるだけで気持ち悪そう。

「Staff Only」と書いたドアが開き、葉隠と有望が入ってくる。
葉隠「なんとかできたぞい‥‥おお、あなた達が未来から来た方々ですか! すばらしい!」
悟飯「すいません、いろいろとご迷惑を‥‥」
葉隠「何を仰います。人はいつか時間の壁を越えることができるとわかって、儂も残りの人生が楽しみになりました。‥‥で、有望君‥‥‥‥」
有望が少し大きめの装置を皆に示す。
有望「ピンクがカプセル化した時に発生した電磁波の探知機よ。ただこれだと半径20Kmまでしか効かないから、あとは前と同じように気象台とかにも頼んであるわ」
葉隠「お化け野菜そのものの探知機の方は、いかんせんデータが足りなくての。残念ながら次の人参かタマネギが登場するまでお預けじゃ」
輝 「ハカセ。お化け野菜って、あとはスイカとピーマンとトマトなんだって」
葉隠「おお! 未来ではスイカは野菜に決まったか! よかったよかった。虎ちゃんとの長年の賭けに決着がついたぞ! 儂の勝ちじゃ!」
赤星(頭をかかえて)「2人ともなんて賭けしてるんですか、いったい‥‥」

ビーデル(装置を受け取って色々見ている‥‥)「へえ‥‥。なんかえらく大きいと思ったら、これって地図も一緒なんですね。すごく便利そう!」
有望「ええ。あなたたちもわかりやすいようにGPSに組み込んだから‥‥あら?」
悟飯(点滅している装置を覗き込んで)「な、なんかこれ、見つけてます?」
ビーデル「大変! 行きましょう!」
赤星「出動だ!」
喫茶店を飛び出していく7人。

2005/3/22

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