偉大なるヤムチャ伝説  

 よく晴れたある日の事、仲間たちはカプセルコーポレーションの一室に集まって談笑していた。メンバーは主に旧Z戦士たち……………淋しい男たちの集まりである。
 中でもごく最近淋しくなった、かつその淋しさにおいては誰の追従をも許さない今や別名冬将軍とも呼ばれているあの男……。
「ちいっくしょおおぉ〜っ!!なんで行っちまったんだよブルマ〜〜!!オレよりあのMッパゲがいいってえのかよお!!」
 これは、愛に生きた男たちの、怒号と哀悼の物語である。


「泣いてくださいヤムチャさん、そうして少年は男になるんですから…」
 クリリンはそう言って空のグラスに酒を注ぎ足した。
「オレもねえ、ありましたよ昔……傷つけることを恐れるあまりに冷たく突き放す、そんな愛もあるんです…」
 ふと遠い目でグラスを傾ける。似合わないことおびただしい。
「その通りだヤムチャ、風は二度同じところを吹くことはない………忘れろ」
 天津飯も溜息まじりに言う。もう自分が何を言っているんだかわかっていないのだろう。
「ううう………お前らなんかにオレの辛い気持ちが……」
「そう、ボクたちにヤムチャさんの心は分からない…」
「!……餃子………」
 突っ伏していたヤムチャはガバリと身を起こした。
「でもそれが男というものなんだよ。愛すれど独り…そしてその心には愛した人の残り香だけが残るものなのさ…」
 シニカルかつニヒルな面持ちで(いつもと同じ顔だけど)語る餃子。
「フッ、ボクの台詞じゃないよ。ボクの好きだった映画にあったヤツさ」
 どおりでどこかで聞いたと思った。
「…ヤムチャさん」
 ポン、とクリリンがヤムチャの肩に手を置いた。
「乾杯しましょう。………別れに」
 酔っ払って完バカ状態になっているこの男たちを責める権利が誰にあるだろうか。誰にもある。しかしあえて放っておく、それが愛ってものだろう。



「そういえばクリリンさん、18号さんとはどうなの?」
 あまりに突然な餃子の言葉に、ヤムチャの耳がピクリと動いた。
「………………なに………………?」
「え?あ〜、いやまあアレだよ、昨日もカメハウスに来たんだけどよ…」
「へ〜、いい感じなんじゃない?」
「へへへ〜、いやーそっかなあ〜」
 クリリン、見事なデレデレぶりである。
「おいクリリン………」
「え?」
「てめえ!18号とどうだってんだ!!まさかお二人ドキドキの急接近♪なんてんじゃねえだろうなあ〜!?」
「やだなヤムチャさん、そんなこと一言も」
「ツラが言っとるわい!!お前、傷つけることを恐れるあまりに冷たく突き放す愛はどうした!!」
「それとこれとは」
「違うとは言わさねえぞ!18号にそんな愛、発揮してみろ!!」
「あっ、オレもう帰んなくちゃ。じゃ失礼します!」
「待て、てめえ!!」



「ヤムチャさん、いい加減に落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられるかっ!あのハゲめ〜〜」
「ハゲ差別はいかんぞ」
「…………そういや天津飯」
 と、天津飯を睨みつける。
「ここしばらく泊まってるが、時々出かけちゃ朝帰ってきたりするよなあ…たまに昼間………」
「…………」
「午前様とはいいご身分だよなあ天津飯!え?ひょ〜っとしてお前『あの人』とおさまっちゃったり何だりしてねえだろうよなあ…………」




      間。




「いや別に」
「なんだ今のはあ!!一から十までこと細かく説明してみろーっ!!!」
「さあ、こんなところでクダ巻いてられんな!修行修行!」
「裏切り者―――――っ!!!」
「ホントに落ち着いてよヤムチャさん…」
「くっそおおぉ……どいつもこいつも………餃子!オレの仲間はお前だけだぜ!」
「ヤムチャさん!」
 固く手と手を握り合う二人。だが、
「あっ」
「どうした?」
「もうこんな時間だ!ランランちゃんと約束してたんだった。それじゃあね」
「うおおちょっと待て!!ランランちゃんって何者なんだ〜〜〜っ!!!」


     ――――――――――東映映画『摩訶不思議大冒険』参照。


「くうっ……やはりオレは生涯いちロンリーウルフなのか……」
 そんな『生涯いち』あったものだろうか?
「ヤムチャさま、そんなこと言わないで下さい!」
「プーアル!」
「ヤムチャさま、たとえどんなことがあろうとボクだけはヤムチャさまについていきます!!だから……」
「プーアル……」
 見つめあう瞳から一筋の涙が………美しい主従の愛がここにある。
「…なあプーアル」
「はい?」
「お前、今も変化の術使えるよな」
「はあ」
「じゃあちょっとブル…………」




       龍拳!!!!




 超サイヤ人3に変化したプーアルの龍拳によってヤムチャ、完膚なきまでに没。
 また…………………長い冬が来る。



                                 完

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