江戸ラゴンボール ヤム太郎江戸日記
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 江戸は深川カプセル長屋、遊び人侍ヤム太郎とお付きのプー太郎はそこに住んでいる。
 2人は今日も仲間たちの溜まり場「飯屋かめはうす」に入り浸っていた。
「ねえヤム太郎、あんたもう見た?」
 と、カプセル屋の一人娘おブルが言った。
「何をだ?」
「最近大陸から来た鶴仙雑技団よ。空飛んだり腕が生えたりしてスゴいのよ、ねえおランさん!」
「ええ!出てる子もとってもかわいかったし…」
 と、答えたのはかめはうすの看板娘おランだ。
「2人で見に行ったのか?オレも誘ってくれりゃよかったのに」
「だってあんた家にいなかったじゃない!それに2人で行ったんじゃなくてかめはうすのみんなで行ったのよ、亀じいさんやウー吉も一緒に」
「そうか。じゃオレたちも見に行ってみるか、プー之助!」
「でも評判なんでしょう?簡単に見られますかね」
「大丈夫よ、見物料はすごく安いから」
「よし、じゃあ決まりだな。行くぞプー之助!」

 
 芝居小屋へ行く途中、橋の下になにやら人だかりができていた。遊び人侍ヤム太郎としては黙って通り過ぎるわけにはいかない。
「ちょっと見に行ってみようぜ」
「ヤム太郎様、野次馬はよくありませんよ!」
「堅いこと言うな。おっ、ちょっとごめんよ」
 と、人をかきわけて行くと、見慣れた面々が揃っていた。
 同心見習いの悟飯之介とベテラン同心ピッコ郎、岡っ引きのクリ五郎である。
「あっ、ヤム太郎さんじゃないすか」
「ようクリ五郎、どうしたんだ?」
「いや、男の土佐衛門があがったんすよ」
 クリ五郎の足元には男の水死体がムシロの上に転がっている。
「どれ。おお、こりゃひでえな」
「あっヤム太郎さん、ダメですよこんな所に来ちゃ」
 死体の検分をしていた悟飯之介が、覗き込むヤム太郎を制した。
「気にすんなよ。しかしこのホトケ、見覚えがあるな」
 高そうな服を着た、なかなかの男前だ。
「えっ、本当ですか?」
「悟飯之介、そいつの言うことは当てにならんぞ」
 ピッコ郎はあくまで冷たい。
「誰だったかな、確か…」
 そこへ、
「オッス!みんな、仕事終わったか?」
 と能天気な声がやってきた。
「よう、悟空太!」
 悟飯之介の父、悟空太である。
「と、父さん!仕事中は来たらダメって言ったじゃないですか!」
「そうだぜ悟空太、悟飯之介のジャマしちゃ」
「かてえこと言うなよ悟飯之介もクリ五郎も」
 ヤム太郎と同じことを言っている。
「仕事、まだ終わんねえのか?」
「見たら分かるでしょーが、今土佐衛門の検分してるんですよ!」
「へ〜、そうなんか………あっ、こいつは!」
 死体を見るなり、悟空太の顔付きが変わった。
「父さん、知ってるんですか?」
「ああ、こいつ、青之丞ってヤツだ!」
「そうだ、青之丞だ!」
「ヤム太郎さん、思い出したんですか!?」
「ああ。確かこいつは『赤布一家』の一人で、陰間茶屋の常連だったらしいぜ」
 遊び人のヤム太郎は、そういう情報には通じている。
「赤布一家の奴が何で土佐衛門に…」
「いや、よく見ろ悟飯之介」
 と、ピッコ郎は十手で青之丞のこめかみを指した。そこには何か固い物で突いたらしいくぼみができている。
「これは…?」
「おそらく死因はこれだ。凶器は何かわからんがな」
 それから3人は専門的な会話に入ってしまったので、ヤム太郎たちはそこを離れることにした。
「やれやれ、これから雑技団を見に行こうってのに縁起でもねえモンに出くわしちまったな」
「あれ?おめえらも雑技団に行くんか?」
「おう、悟空太もか?」
「ああ、じゃあ一緒に行こうぜ!」
 厄介どころが2人揃ってプー之助はとても不安だったが、ともかく3人連れ立って行くことになった。


2001/05/26

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