愛しい人にサヨナラ
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今のうちに公言しておくけれど、私は兄貴が好き。
格好良くて頭も良くて優しくて
そう 彼は私のヒーローなのです。


そんな兄よりいい男なんて、そう簡単に見つかる筈がない。


そんなに近くにいい人なんて、いる訳ないじゃない。









「ねぇブラちゃ〜ん・・・。ちょっとだけでいいからさぁ〜?」
「嫌!!絶っっっ対に入ってこないでよ!?」
「・・・・・・おじさん、泣いちゃうかも・・・(泣)」
「可愛く言っても駄目!」
「何ダヨー!入れろコンチクショー!」
「逆ギレしたって、私あなたなんかに教わる気はありませんから!!」
只今私は、ドアを挟んで向こう側のこの男と格闘の真っ最中。
この孫悟天という人は、『自称』今日から私の家庭教師・・・って人なんだけど。
でも私はそんな事、悔しいから絶対に認めてあげない。


だってお兄ちゃんってば、可愛い×2妹が試験前だっていう時に、

いきなりコレはあんまりじゃない!?

・・・私だって、仕事が忙しい事ぐらいは解っているつもりだけど。



けどそこは誰だって、意地ってもんがあるでしょう?




「大体悟天さん、本当に家庭教師なんて出来るの?」
「・・そりゃあまぁ。一応大学は出てるしさ。」


何よ、その頼りなさ。


やっぱり男は、頼り甲斐のある人でないと。・・・お兄ちゃんみたいな。


「だけど私はお兄ちゃんに教えてもらいたいの!」
「あー、解るよ。あいつ頭良いもんな。」
「そうよ、お兄ちゃんは何だって出来るもの。・・・ねぇ、解ったならもう帰・・・」





「俺にしてやれる事なんて本当、限られてるからなあ・・・。」






(その時の彼の声が、何故かひどく 重みを帯びて響いてきて。)


(聞いているこっちの方が、苦しくなってしまいそうな。)


(そんな声に、ほんの少し。)



(・・・ほんの少しだけ、胸の奥が高鳴った。)







「ブラちゃん?」
「・・・え!なっ何!?」
「今日のところは帰るよ。でも、また明日来るからさ。
可愛い顔を覗きにね。」



スタスタと廊下を歩く音が、ゆっくり遠ざかっていった。




・・・何よ。うわさ通り(というか、パンちゃんから聞いた通り)の、

唯の軟派男じゃない。

家庭教師の話だって、何も言わずに二つ返事でOKしたそうだし。

まったく、いくら私が可愛いからって!



・・・それにしても、随分しつこかったな・・・・・・・・・・と。



ドアの前にノートが一冊、こちら向きに置かれてあった。メモと一緒に。



『 ブラちゃん、試験前なんだって?ここに俺なりに、対策問題まとめておいたから。

  解らないとこがあったら、いつでも教えてあげるよ。 

                             君の王子様より 』




「・・・何よ。例題、まとめただけじゃない・・・。」









夜。




「げっ・・・お兄ちゃん、これ何・・・?」

冷蔵庫いっぱいに、きれいに並べてあるそれは。

「栄養ドリンク・・・?」

「ああそれ悟天がさ、俺が元気ないからって持って来てくれたんだ。」

「・・・悟天さんが・・・」






『 俺にしてやれる事なんて、限られているから。 』





もしかして、家庭教師を引き受けたのも。


お兄ちゃんが、心配だったから・・・?





(お兄ちゃんよりいい男なんて、いる筈ない・・・よ・・・)




「な?結構いい奴だろ?」

「・・・・・・。」







認めてなんて、あげない。





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