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僕は、必死になってそう遠くない家路を急いでいた。
別れ際に告げられた、あの人の言葉の意味を
一刻も早く 知りたくて。

(帰るんだ、悟飯・・・)

(お前を大切に思う者達が、待っている・・・)

父さんは・・・もう、いない。
家には母さん一人しか、いないはずなのに。
・・・でも。

でも もしも、この予感が当たっているのなら。


「お父さん・・・」

記憶の波が、押し寄せてくる。


(平和な世の中をとりかえしてやるんだ。)
(学者さんになりたいんだろ?)
あの時僕には勇気がなくて・・・
(ここまでよくやったな悟飯)
(母さんにすまねぇって いっといてくれ)
戦いに歓喜する自分の体が、嫌で嫌でしょうがなかったんだ。
あなたの言葉がなかったら・・・きっと、勝てなかった。

(だいじょうぶ、勝てる!自分の力を信じろ!!)
いつだってその言葉が、僕の勇気に。


だからもしも、この予感があたるなら。

もう一度、僕に力を。

優しい未来を受け止められる、勇気を ください。



「お母さん!!」
飛び込むように、玄関のドアを押し開く。
その場所に、いつものように母は座っていた。
隣にしゃがみ込むように、祖父の姿もあった。
何かが、違う。
「悟飯ちゃん・・!」
母の顔が、突然に驚いた表情から、
恥ずかしそうな、けれど幸せを隠しきれないようなそれに変わる。

両手が ゆっくりと、お腹の下にあてられるのを

僕はただ、眼を動かせずに眺めていた。

「悟飯ちゃんは、お兄ちゃんになるの・・嫌じゃねぇだか・・・?」
一歩一歩踏みしめながら、母の横に並んだ。
そして、抱きつく。
頬をつたう涙が、とても あたたかい。
「・・嫌なわけ、ないじゃない・・・。」



この気持ちを、何て呼ぼう。

歯がゆいようで けれど包み込むように優しい  この感覚を

僕はきっと、忘れない。


そして  いつの日か
願いごとを紡ぐようにそっと  君に話せたら。
まだ見ぬ、光の未来を生きるであろう この子に。



幸せの原因は、今だ昏々と 目覚めの時を待っている。



『 ありがとう 』




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