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『 さよなら 』僕を今日まで 支え続けてくれたひと





あたりは だんだんと暗くなってき始めていた。
僕の中に まだほんの少し見え隠れする人間の心が
女の子に“パパとママが心配するから帰ったほうがいい”と
やっとの思いで紡がせたのだ。

“側にいてほしい”と願う かすかな思いを 打ち消しながら。



そう、思っていた時。
背中に 電流が走るような 衝撃を、感じた。
僕の後ろに立っている 彼の気は あまりに慣れ親しんでいたものだったから。
「・・・ピッコロ、さん・・・。」
まともに顔を向ける事が 出来なかった。
見られたくない、と思う。  こんな弱い自分を。
多分、一番見られたくなかった相手は 彼だったのに。
「悟飯・・・」
変わらない、声が。
厳しいようで けれど絶えず 自分を包み込んでくれる 穏やかな。
その声に、導かれるように
苦労して閉じたばかりの涙の檻が、開け放たれてしまった。



「悟飯・・・」

見ていたから。

この幼い子供が。

まだ自分に会う前の 無邪気に笑う姿を。

誰に打ち明けることもせず 小さな体を震わせている その悲しさを。

ただ、見つめていた。

心がこんなに苦しいのは、泣いているのがこの少年だからなのだろう。
見ているだけでは あまりに辛くて、降りてきてしまったのだ。
ガラス細工に触れるようにそっと、その体を抱きしめた。
かつてこの子の父親が、小さな息子にそうした様に。

そして、つぶやく。


(悲しいという感情を、押さえてはいけない)

(その悲しみ全てが、自分一人のものだとは 思わないで欲しい)

(忘れるな この世界で息をしている全ての生命が)

(お前に 身を委ねているという事を)

(強くなれ。 今よりもっと、強く。)

(あの時の自分の力を 誇れる程、強く。)

どんなに辛い現実でも、立ち止まらずに、生きて欲しい。
俺は、お前の大切なものたちは、ずっと 見守っているから。
お前を一人には、しないから。



僕は、声をあげて泣いた。
過去の辛さや、苦しみは消えないけれど
時を糧に 今が在るということが、何となく 解ったような気がするから。
強く、なりたい。
大切なもの全てを、守れる程に、強く。


月が、もう随分高いところまで 昇ってきていた。
赤や、ピンクや・・・オレンジ色の花の咲く、この草原で。
僕が泣きやむまで、ずっと背中を支えていてくれた




ピッコロさんは、 泣いてるように 見えた



(人波の中で いつの日か偶然に)


(出会えることがあるのなら その日まで)



『 さよなら 』僕を今日まで 支え続けてくれたひと


 となりに居てくれたことを 僕は 忘れはしないだろう




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