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体が  重い


雨音が  耳鳴りみたいだ


壊れたテレビの雑音のような  その音に


僕は


魅せられていたのかも、しれない。



「ただいま、お母さん・・・。」
「・・・悟飯ちゃん!!」
母が座っていた椅子が、ガタッと床に倒れかけた。

僕は黙って 母の表情が凍り付くのを見つめていた。
何故って 帰ってきた僕の衣服には 赤いシミが点々と滲んでいたから。

これは、僕のものではない。

散歩に行くと言って立ち寄った町で、数人の男達にからまれた。
無抵抗だった自分に対して、彼らは実に下らない理由で
喧嘩腰につめよってきたのだ。

僕は、無性に 腹が立った。

お父さんが命をかけて守ってきた人間達を

何事もなかったかのように 忙しなく動く街並みを

どうしようもなく  嫌悪した

気づいた時には もう、僕は・・・


「けがしてるでねえだか!!大丈夫だか!?
 雨もふってきたから、探しに行こうとしてたんだぞ・・・。」
「いえ、これは・・・。大した事じゃないんです・・・。
 さっきぼぅっとしてたら、ぶつけちゃって・・・。」
よくもまあ、こんな見え透いた嘘がつけたものだと思う。
僕は いつの間に こんな人間になったんだろう?
母の声が、しぐさが。
胸に突き刺さるようで、いたたまれなかった。
「今日は色々あって、疲れたから・・・。もう休みます。
 心配かけてすみませんでした・・・。」
「悟飯ちゃん・・・。」




悟飯が部屋を後にして、再び静寂が訪れる。
けれど それとは裏腹に、チチの心は揺れ動いていた。
息子はいつから あんな顔をするようになったのだろう?
悟空は、その死と共に 悟飯の心さえも持っていってしまったのだ。
誰よりも優しく 穏やかで 
それでも決して子供らしさのあふれる笑顔を失わなかった

あの、幼い子供の 心さえも。

死んだ人間は 生き返らない。 どんなに愛しい相手でも。
それは彼女自身、痛烈な程に感じていたことだから。
それ故に、彼の苦しみは切ないくらい、この身を通して伝わってくる。


涙が、 あとからあとから  溢れ出していた。




『 さよなら 』と言えば君の 傷も少しは癒えるだろう?



『 あいたいよ・・ 』と 泣いた声が 今も胸に響いている



(不器用すぎるあの子も 季節を越えれば)


(まだ見ぬ幸せな日に 巡り会えるかな)




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