DB的眠り姫もどき童話風味II
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 昔々のお話です。

 とある国のとあるお城。
 そこでは、その国の姫の誕生日を祝って、パーティーが開かれておりました。
 ずんちゃっちゃ。ずんちゃっちゃ。
 ワルツの流れる中、肩に小さな黒猫を乗せた、これまた小さな王は一人娘である姫に言いました。優しそうな風貌の所為でいまいち威厳が無い王です。持っている杖だけが妙に背が高く、アンバランスさを醸し出しておりました。
「姫、二十●歳の誕生日、おめでとう」
 にこにこ顔の、とても二十●歳の娘を持っているとは思えないくらい若々しい王妃も言いました。頬に手を当て、笑みを絶やしません。朗らかと言えば聞こえは良いのですが、彼女のそれは例え天変地異が起ころうと小揺るぎもしない、単なるのんびりやタイプの笑みにも見えました。
「ええ、二十●歳のお誕生日おめでとう。貴女ももう、こんなに大きくなってしまったのねえ」
 姫は豪奢なウルトラ・マリンブルーの髪をばさり、と振り払い、王と王妃を振り返りました。瞳には怒りの炎が燃え上がっています。
「大きい声で二十●、二十●って繰り返さないでくれる!?他の連中に聞こえるじゃない!!」
「あらあ、だって本当の事ですもの」
「だから、そーいうのをやめてよって言ってるじゃない!!」
 そう、姫は今年二十●(伏せ字)。本来ならとっくにお嫁に行っている年頃なのですが、彼女は如何せん気が強く、我が儘で、好奇心と野次馬根性が旺盛という救いようのない性格であった為、なかなか貰い手がつきませんでした。先日も、彼女は隣国の王子との婚約を解消したばかりです。そんな状態で二十●歳の誕生日を祝われても、姫が嬉しくもないのは道理です。最も今、姫は王や王妃より遙かに大きな声で怒鳴っているため列席者にも会話はまる聞こえなのですが、周知の、また暗黙の事実であるらしく、誰も敢えてその辺を突っ込もうとはしませんでした。
「もう!楽しくも何ともないのよね!テロでも無いのかしら!?ったく、最近のテロリストどもは根性無いんだから!」
 物騒なことを言いつつ(周囲の人々がびびって姫から離れて行きます)、姫は自分の椅子にどっかと座りました。肘掛けを指でこつこつと叩きながら、苛ついた表情を隠そうともしません。
「姫、そんな怒った顔をしていてはますます嫁の貰い手が無くなるよ?」
「天然系キャラでも言っていい事と悪い事があるのよ、父さん!!?」
 その時です。
「ほーっほっほっほっほっ!!」 
 突然、けたたましい笑い声がホールに響きました。皆、何事かと声をした方を振り返ります。
 そこに立っていたのは、白い身体に紫の頭部、そして長い尻尾を持った、どう見ても人間ではない生物でした。表が黒、裏が赤のいかにもなマントを身に付け、首元で蝶々結びにしています。
「なっ!あ、あれはっ!!」
「悪い魔法使いだ!!」
 列席者達が悲鳴を上げながら次々と逃げ出して行きます。姫や王、王妃達は驚いて身構えました。
「ほっほっほ・・・・・・この私をパーティーに招待しないとは、随分となめた真似をしてくれますね」
「い、いや、それは・・・・・・」
「あんたなんか呼ぶ訳無いじゃない、このオカマっぽい逆切れ爬虫類!!!」
 フォローしようとした王の言葉を遮ってはっきりきっぱり言い切ったのは、勿論この姫です。悪い魔法使いのバックにびし、と亀裂が入りました。
「ほおう・・・・・・爬虫類?爬虫類と言いましたね、この礼儀を知らぬ小娘は?」
「あんたなんかと一緒にしたら爬虫類の方が可哀想だったかしら?お呼びじゃないの、さっさと帰りなさいよこの口だけエイリアン!!!」
「言いやがったなこのアマーっ!!?」
 あっさり切れた悪い魔法使いはつかつかと姫の前まで歩み寄ります。ざわ、とどよめいた人々を尻目に、姫はすっくと立ち上がり悪い魔法使いを睨み返しました。悪い魔法使いの手には、先端にお星様のついた魔女っ子系スティックが握られています。悪い魔法使いはそれを降りかざしました。きらきらきら。煌めく星が宙を舞います。
「姫!!お前は近いうちに、薔薇の刺に指を指して死ぬだろう!!!」
 とす。
 スティックの星の角が姫の額を直撃しました。一瞬、しんと静まりかえるホール内。
 額に穴の空いたまま、姫はふるふると震え始めました。手の甲に浮き立っている青筋が、遠目からでもはっきりと判ります。
 そして姫はたった一言言いました。
「つまみ出しなさい!!!」 
「こら、おめえまた何か悪さしようとしてるな?」「お父さん、ちゃんとそっち、押さえててくださいよ」兵士その一と兵士その二に両腕を掴まれ、悪い魔法使いは「ホントだぞ!!ホントなんだからなーっ!!?」と、未練がましくも引きずられて行きました。ぺしぺしと床を叩く長い尻尾が、何処か哀しげでありました。
「全く!何て奴なのかしら。失礼しちゃうわ」
「いや、それより・・・・・・」
 王は慌てた様子で言いました。
「薔薇の刺で指を指して死ぬというのは本当かい?だったら大変じゃないか」
「あらあら、大丈夫なのかしら〜?」
「ふん!あんなの虚仮威しよ!気にするだけ時間の無駄だわ」
 王と王妃は(台詞だけは)姫を心配しましたが、姫は全く取り合いません。悪い魔法使いを城外へ放り出して戻ってきた兵士その一が言いました。
「姫がまた何かやったんじゃねえか?あいつ我が儘だしさ」
「お、お父さん!!聞こえますよ!!?」
 兵士その二が止めましたが時既に遅し。姫の耳にはしっかり入っておりました。そちらを向きさえせず、姫は判決を下します。
「あんた一週間ご飯抜きの刑!!」
「げ!そんなあ〜!!」
「あ〜あ・・・・・・」
 うるうると瞳を潤ませながらこちらを向いた兵士その一に、仕方なく兵士その二は「僕のご飯、分けてあげますから」と耳打ちしました。それでとりあえず、兵士その一は大人しくなりました。
「大丈夫よ!この私がそう簡単に死ぬ訳無いじゃない!!」
「しかし・・・・・・そうだ、私が何とかしよう」
 王は立ち上がると、その身体には大きすぎるマントを翻し、自分の部屋へと戻ってゆきました。
「みんな〜、大変なことになっちゃったから今日は解散よ〜」
 緊迫感の無い王妃の言葉に、その場はひとまず解散と相成ったのです。



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