アフタヌーンティ(Amusement!) (戻る)

太陽の光が眩しい。雲一つなくて、自分達をまぶしく照らす。帽子をかぶることで、ようやく日差しは威力を押さえてくれた。
ブルマはカプセルコーポレーションのエントランスで、着替えに時間のかかる息子達をイライラしながら待っていた。傍らには、オシャレしてまだかと待っているマーロンと、あまり面白くなさそうな顔をしている18号がいる。
場の雰囲気を読んでない息子が、明るい声をあげてようやく駆けてきた。

「あっはーっお待たせ!ちょっと待たせちゃってごめんな、マーロンちゃん!」
「遅すぎよ、まったく!女の子をエスコートするのよ。もう少しイイカッコしたらどうなのよ?」
女の子を散々待たせた割にはあまりにラフな恰好で現れたトランクスに、ブルマは目がキツくなった。
「かあさん、そんなカッコしていったらオレが乗り物乗れないジャン。一緒に遊びたいよ、な?マーロンちゃん?」
「うん!」
トランクスは5つ年下のマーロンとニッコリしながら顔を見合わせた。

マーロンの方は、ひまわりの花がプリントされたワンピースを着て、いつもの二つに結わえた金髪に白いリボンをしていた。リボンの調子を調べるために髪に持っていく手には、ビーズと貝殻で出来たブレスレットをしており、ちょっぴり日焼けした肌によく似合っていた。都に遊びに来ると言うことで、きっとめいっぱいオシャレしてきたのだろう。父親譲りのひとなつこい目がきらきら輝く。
トランクスのカッコは履き古したジーンズに、ジャケット。普段着とまったく変わってない。けれど、その中身から湧き出る凛々しさとちょっと気品に似た空気は、そうだれでも持てるわけではない。ブルマは目もとがだんだんと自分のダンナに似てきたトランクスを見てニヤリと笑った。
・・・やっぱアタシの子供ねー、何着ても形になるわ。

カメハウスで過ごしているマーロンはたまに来る西の都がとてもスキだった。彼女にしてみれば、街全体がおもちゃ箱のように魅力的なのだろう、どこへ行ってもおおはしゃぎで喜んでくれるので、案内のしがいがある。
と、いうわけでトランクスは「じゃあ、ホントの『おもちゃ箱みたいなところ』に連れてってあげるぜ!!」とマーロンと彼女の母親に提案したのだった。
母親、18号は最初ちょっと心配そうに瞳を曇らせた。彼女はなんだかんだ言って、娘の事をいつも一番心配している。案内役がトランクス達だということも、少し考え込む理由になってしまっていたのだがマーロンの『行きたい』攻撃に押し負ける形で承諾したのだった。

「おい、悟天?お前用意できたのかよ?」
「うん、大丈夫だよ。さっ行こうマーロンちゃん!」
悟天はおろしたての洋服に身を包んで、ちょっとだけ満足そうだった。兄のお古ばっかりで、服を買ってもらうのも久しぶりだったから。
彼はマーロンの手を取って自分の背に乗せると、空中にすっと浮かぼうとしたがトランクスが急に彼の足を引っ張った。

「うわ、何するんだよトランクスくん!」
「なんでお前がマーロンちゃんを背中にのっけてくんだよ?オレだよ。」
「どうしてだよ、ボクが先だよ。」
「オレは14なんだぜ、おれの方が年上だもん。オレがのっけてく!!」
「イヤだよお。」
「ちょっとちょっと!!おめえたち!!」
いつまでも終わりそうにない会話をえんえんと繰り広げる二人に、チチのカミナリが飛んできた。

「いつまでたっても出発できねえべ!!マーロンちゃんも困ってるだろ!!早く行くだ!!」
彼女のカミナリで、ようやく二人は悟天の背中でちょっと困り顔をしてるマーロンに気が付き、行きは悟天が彼女をおんぶしていく事になった。
「じゃあ、行ってきまーす!」
「おかあさん、行ってくるね〜っ!」

彼らの母親達は、ようやく出ていった子供達を目で追いながら、ため息をついた。
「行きであんなにモメて大丈夫だか・・・?マーロンちゃんが心配だべ・・・。」
「ん・・・、うーん・・・。」
ブルマは難しそうな顔をするチチと18号を、一階のテラスの方へと案内した。
「大丈夫よ、チチさんも18号も。トランクスも悟天くんも、ひとりっこと弟でしょ?ちょっと兄さん風吹かせてみたいのよ。」
「ほーんとに、ガキなんだから!あの子達は!!」
「さっ、ホラ。」
ブルマは右手を差し出して、テラスを指さした。まるでガラス張りの温室のようで、どこかのサロンにも雰囲気が似ている。可愛らしいデザインのテーブルに、ちっちゃな椅子が3つ用意されていた。
「あたし達は、アフタヌーンティといきましょっ!」


さらさらの紫色の髪をちょっとかきあげて、自分をニッコリ見つめる。「次はあれに乗ってから、あそこでおやつでも食べよっか?」って、いつでも自分を気遣う。青い瞳は優しくて、にぎった右手はちょっと暖かい。
悟天の左手は少しだけ湿っぽくて、汗をかいてるみたいだった。「ボクは今度あれに乗りたいな、マーロンちゃんはどうかな?」なんて言って、自分が一番楽しそうだ。
『かっこいいお兄ちゃん』と手をつないで遊園地を歩き回るマーロンは、満面の笑みを浮かべていた。乗り物も、たくさんの人も、色とりどりの甘いパフェもみんな楽しいものだったが、一番はなんといっても歩き回っている時だった。

すれ違う女のひとがみんな振り返って、ちょっと頬を赤くしたり、口笛を鳴らしたり。
うらやましそうな目で自分を見つめている。
トランクスお兄ちゃんも、悟天お兄ちゃんも、どっちもとってもカッコいいもん。
まるで王子様に連れられているみたい。
えへへっ・・・みーんなあたしたちのことみてる!

マーロンはニッコリ笑って、二人の王子様の手をぎゅっとにぎった。
「ん?どうしたの?」
「なんでもなーい!ねえ、こんどあれにのろうよ!」
彼女はちょっとした『ゆうえつかん』にひたりながら、くすくす笑った。


「うわあ、まっか!いちごがいーっぱい!クリームも、アイスも!」
マーロンはウエイトレスが運んできたいちごパフェを見て、自分の頬も真っ赤にした。
「もっと、いーっぱい頼んでもいいんだぜ!」
「えへへ・・・大丈夫だよ、これできっとおなかいっぱいになっちゃう!」
柄が長いスプーンで、ゆっくりイチゴだけとって口に入れる。甘酸っぱいいちごの香りが口の中に広がって、彼女はそれだけで満足そうな顔をした。

「すっごーく、おいしい!」
「えへへ・・・だろー?悟天もどーだ?それのお味は?」
「うん、おいしい!チョコパフェだっけ、これ?マーロンちゃん、ちょこっと食べる?」
「食べる!食べる!」
マーロンとお互いのパフェを一口ずつわける悟天を、トランクスはちょっとだけあきれ顔で見つめ、「ふーん」と鼻を鳴らした。
「ガキっぽいんだから、悟天はさあ。パフェなんて男は普通食べないんだぜ。」
「けど、おいしいものはおいしいもん。トランクスくんも食べる?」
「お前、人の話聞いてんのかよ!?」
マーロンはふたりのやりとりをくすくす笑いながら、またパフェをほおばった。
今度はチョコといちごの味がする。

屋外にあるこのカフェに座っていると、色々な物が目に飛び込んでくる。さっき乗ったばかりのメリーゴーランドに、大道芸のピエロ達、キャンディを売っているきれいなお姉さん、それに自分達以外のたくさんのお客さん。
マーロンは人酔いしたかのように瞳をぱちぱちと上下させて、口を開けた。
「西の都って、色んなものがたっくさんあって目移りしちゃうよね。」
「うん!」
「そ、そりゃ二人とも山と海に囲まれてるしな・・・。」
トランクスはちょっと苦笑いしつつ、二人の顔を見た。

かたや山に囲まれていて、小鳥のさえずりで朝起きる悟天。もう一方のマーロンは海の波音が子守歌状態。
トランクスはこの二人の住んでいるところへ遊びに行くのはスキだったが、住むとなったらはっきりいってゴメンだった。常にたくさんの人とものに囲まれて育った環境の彼にとって、あんなところで暮らすと考えるだけでも頭が痛くなる。

「二人ともさ、もっとでっかくなったら・・・、イヤ今でもいいや。オレんちで暮らせばいいじゃん!悟天もマーロンちゃんも、毎日色んなとこ連れてってあげるしさ!もっとおいしいいちごパフェもごちそうしてあげるって!」
我ながら名案だ!と思いつつトランクスは二人にニッコリ笑ったが、悟天もマーロンもポカンとしている。
「え・・・?あれ?ど、どうしたのさ?」

「わかってないなあ・・・。トランクスくん、チョコパフェも遊園地もさ、たまーにくるから楽しいじゃない。毎日だったら飽きちゃうよ?」
悟天は『ね?』と諭すようにトランクスをみつめる。彼の妙に大人っぽい口調に、トランクスは「む・・・。」と口をもごもごさせた。

「あたしもそう思う!いちごパフェも、トランクスお兄ちゃんも、悟天お兄ちゃんも、たまーに会うからわくわくするんだわ!お兄ちゃんも、たまにカメハウスに遊びにくるから、楽しいでしょ?」
「ああ、そっかあ・・・。」
マーロンはまたニッコリしながらいちごパフェをほおばる。ソースがかかって、ビー玉みたいに光っているいちごをじっと見た。
「だからまた今度遊びに来た時に、そのもっともっともーっとオイシイパフェをごちそうして、お兄ちゃん!」

空はすっかり赤くなり、西の都はオレンジ色となる。マーロンは、今度はトランクスの背中に乗せてもらって、空中散歩を楽しんでいた。
トランクスも、もちろん悟天も遊園地に行くのは久々だったので、彼女に便乗して遊び回る事ができたので満足そうだ。郊外の遊園地がだんだんと遠ざかり、街が近づくにつれて建物が少しずつ密集してくるのが空から見るとよくわかった。

マーロンはトランクスの背中に乗りながら、遊園地のある方向を何度も振り返り、くすくす笑った。
「いいことがどーんって、一日で終わっちゃうより、楽しみが毎日ちょっとずつあるほうがいいな。あたし。」
「そうかなあ?オレはどーんと毎日あった方がいいけどな。」
「だから、毎日そうだったら疲れちゃうって言ってるじゃない?」
「オレ、体力あるもん。」
「そういうことじゃなくてさあ、・・・子供なんだから。ん?」
悟天はカプセルコーポレーションから薄い煙がひとすじ上っている事に気が付いた。

「トランクスくん!煙でてるよ、なんだろう?」
「ああ、かあさん達が夕食の用意してんだ!父さん達、無事に買い物できたんだ・・・。ちょっと見直したぜ。」
「ねえ、バーベキューなのかなっ?早く、はやく行こうよ!」
「オッケイ、しっかりつかまっててね!」
トランクスは彼女の体を右手でちょっとだけ押さえると、スピードを早めてカプセルコープの中庭を目指した。
たくさんの料理を張り合うように食べてる父親達と、それを苦笑いで見つめているクリリンさん、それに料理の準備に忙しそうな母親達の姿が見えた。

早く行かなくちゃ、食べるものなくなっちゃう!
わあ、いそがなくちゃ!
ちょっと、まってよ二人とも〜っ!!


明日はおとうさんと一緒に空へお散歩に行ったり、あさってはおかあさんと一緒にお菓子を作ったり、あさっては亀さんと海にでかけたり。
毎日、毎日、ちょっとずーっと・・・すてきなことが一個ずつあったら、いいな。

おしまい。


2001/10/25
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