アフタヌーンティ(ちびセレブ)
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「そえでね、ぴっこおさんがねえ、えほんよんでくえたの!」
「あの、そらのうえにあるおしろで?」
「うん、そうだよ!」
「いいなあ・・・。」

ここは西の都。カプセルコーポレーションのブラの部屋だ。
かわいいパステルカラーの壁紙に、ふわふわゆれるレースのカーテン。来るたびにどんどん増えるぬいぐるみ、おもちゃのようなレリーフが飾られているベッド。
まるで遊園地みたいな彼女の部屋を、パンはとてもスキだった。
ブルマが簡易テーブルを出してくれて、ちっちゃいレディ達のためにお茶のセッティングをしてくれた。

パンは、角砂糖を何個も入れてちょっと冷めた紅茶をすすりながらブラにこんな提案をした。
「こんど、あたしがブラちゃんつえてってあげう!ブラちゃんだったらぴっこおさんも、またえほんよんでくえるわ!」
「う、うーん・・・。」
考え込んでしまったブラの表情をみて、パンは「どうしたの?」とつぶやいた。

ブラは顎の先をちょっとひっかいて、角砂糖を1コだけ入れた紅茶に口をつけた。
彼女が『いいなあ・・・。』と言ったのは、別にパンがピッコロに絵本を読んでもらったことをうらやましく思っているわけではない。彼や神様の事はスキだったが、ハッキリ言って、彼女の好みの範疇ではないからだ。
あの、ジェットフライヤーでもちょっと手こずる神殿に『一人で飛んでいける事』を、彼女はうらやましく思っていたのだった。

「いいよね、パンちゃんは。ひといでどこでもあそびにいけうもんね・・・。ここにだってすぐにこえるし、おしろにだっていけちゃうし、マーロンお姉ちゃんのトコにだってすぐにいけうモン。」
「ブラちゃんだって、れんしゅうしたらおそらとべうよ!こんどおじちゃんにおしえてもやったら!」
「だめだめっ!」
ブラは頬をふくらませて、側にあったでっかいぬいぐるみを抱きしめた。
「ママはいいよっていってくえるのに、パパは『ぜったいだめっ!!』ってどなゆんだもん。」
「ふうん・・・。」

パンは、自分の『おじいちゃん』とさほど変わらない年齢の『ベジータおじちゃん』の顔を思い出した。
ピッコロも目つきは悪いが、彼も負けず劣らず目つきが悪い。いつも怒っているような顔が、ますますパワーアップして怒鳴るのかと思うと、パンは『うひゃあっ』と言って顔を下に向けた。

「なんでそんなにそらとんじゃだめってゆうのかなあ?」
「パパってちょっとかほごなのよ。ママがゆってたわ。」
「カホゴ?」
ブラは抱きしめてたぬいぐるみをポイっと捨てて、紅茶をすすった。
「こよもっぽいのよ!ばーっかみたい!!」
ブルマにそっくりな口調で言うと、ブラは口を尖らせた。
「そうなんだあ、おじちゃんはカホゴなんだあ・・・。・・・・・・あ、ああっ!」

「どうしたの?パンちゃん?」
「わかった!わかった!」
パンは紅茶のカップをテーブルにそうっと置いて、ブラの方に駆け寄った。
彼女は『やった、やった!』と言って、にいーっと歯を出して笑っている。
「ねえ、どうしたのよ!」
「あたしがこれから、おじいちゃんのとこにつれてってあげる!おじいちゃんだったらおしえてくれるわ!」
「ほんと!」
「うん!」


「だめだだめだだめだっ!!!そんっな事オレがぜっっっったい!!許さんぞっ!!」
「どうして?」
「わかってんのか、カカロットだぞカカロット!!」
パンがブラを抱えて、彼女の家に行こうとしたちょうどその時、ブルマ達に出会ってしまったのだ。
あきれてため息をついているブルマと、ちょっとオロオロしているが楽しそうなブリーフ博士達を後目に、ベジータは逆立った髪が更に逆立つ勢いでブラに怒鳴りつけた。
パンはちょっときょとんとしてブラの後ろにそうっと隠れたが、ブラの方は慣れてしまっているらしく少しも引いてない。

「かかおっと?」
「あたし、オカカおいぎりすきよ!」
「違うっ!!あんな男にどうしてお前が!そんなもん教えてもらわなくてはいけないのだ!!」
大声で、しかもノンブレスで、更に怒鳴るベジータにブラは冷たく言葉を返した。
「パパ、ツバとんでう…。んん、もう!だいだい!パパやおにいちゃんがおしえてくえないかや、いくんだモン!」
「やかましい!!カカロットなんかとにかくダメだっ!!」
「あ、わかった!」
パンはまたニッコリして新たな提案をしてきた。
「ぴっこおさんにおしえてもやったらいいんだわ!」
「もっとダメだっ!!!」


「こんな小さな子供と、対等にケンカが出来る男もめずらしいわよねえ…?」
ブルマは『はあ〜〜〜っ.』と大きなため息をつくと、ベジータとブラをひっぱるようにして、家の中にムリヤリ入れた。


2001/8/24

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