アフタヌーンティ  (戻る)

「まったく・・・順序が逆だべ、あのこ達は・・・。おなかに赤ちゃんがいるってのに、新婚旅行なんていっちまっただ・・・。悟飯だって心配してたのに、ビーデルったら大丈夫だか・・・?」
チチはちょっと不機嫌そうに、しかしニコニコ笑ってメイドロボが運んでくれた紅茶に唇をつけた。アールグレイの良い香りがする。
彼女はキレイに淡い色がつけられた、繊細なデザインの角砂糖を何個もその中に入れてまたすすった。
「そんな心配することないわよ〜。チチさんたら今度はビーデルちゃんに過保護になっちゃってるわね。」
側にいる18号に、コーヒーをいれてあげているのはブルマだ。18号も黙ってマグカップの中にコーヒーが満たされていくのを待っている。

「だいたい、結婚してから子供ってできるもんだべ?」
「あら、あたし結婚してないわよ。そういえば。」
思わず、18号の黙々とコーヒーをすする手が止まった。
「・・・そう、なのか?」
「ええ、自分でもすっかり忘れていたけど。」
「ああ、そうだっただな〜。ベジータさは恥ずかしがりだから・・・。」

ここは、西の都のカプセルコーポレーション。一階のテラスでおしゃべりに華を咲かせているのは息子が結婚したばかりのチチに、ブルマ、それに18号の3人だ。
この美しい女性達のダンナ共は、夕ご飯の買い出し。かわいい子供達は、島暮らしのマーロンを喜ばせたくて、遊園地に行っている。
こうして集まるのは悟飯とビーデルの結婚式以来なので、おしゃべりも彼らの話題が中心だった。

「ああいうのは甲斐性なしってゆーのよ。だいたい、別にいいじゃないのよ。できちゃ
った結婚じゃなくって、お互いスキスキで結婚したんだしさ。チチさんだってそうじゃない?」
「え・・・?う〜ん・・・。」
チチは「たはは・・・。」と上目遣いになって、あさっての方向を向いた。
「な、なんだその『え?』は?」
「おらと悟空さは、結婚してから恋したみてえなモンだべ・・・。」
「は?」
「いや、だからよ。ちょっと若すぎたんだべ。やるとこなすこと!」

チチはきょとんとしている18号の背中をばしばしたたくと、頬が桜色に上気した。「いや〜、まいっただなあ・・・。」とニヤニヤしながらつぶやいている。
「お、おかしな奴ら・・・。」
「そういう18号は、どうしてクリリンくんと結婚したのー?」
「う・・・・・・。」

しまった。矛先が自分に向いてしまった。
18号はその場から「フン!」と言ってどこかに行きたい気持ちになったが、マーロンがトランクス達に遊園地に連れていってもらっている。
ムリヤリマーロンを連れて家に帰ったら、彼女にも、クリリンにも怒られそうだ。
「はあ・・・。」

「そうだべ。どういういきさつで結婚しただ?いつのまにやら結婚しててよ。ハガキがある日ポンっと届いて。」
「何?ハガキ!?」
18号は思わず座っていたイスを後ろにひっくりかえして、チチに詰め寄った。
「あら、18号ったら知らなかったの?『結婚しました〜!』ってハガキさ、送られてきたのよ。」
そんなこと、彼女の夫は一言も言ってなかった。だいたいあの狭いカメハウスの中で隠し事はちょっと不可能なハズなのだが、いつのまにそんなもん書いて送ったんだ?
18号の氷のような鋭い瞳の色が、急にめらめらと燃えるように濃くなり、頬が先ほどのチチのように真っ赤になった。

「・・・・・・あいつ〜〜〜っ!」
18号は(口ではともかく)、実力ではこの3人の中で一番強い。そんな彼女が怒り出したらどうなることかわかったモンではない。
少し焦りつつ、しかし楽しげにチチとブルマが彼女を押さえた。
「ちょ、ちょっと18号ったら、そんなに怒らなくても・・・。」
「そ、そうだべ。大好きな人をみんなにジマンしたかったんだろ?きっと!」
「う・・・うう〜〜っ・・・。」
「な?おちついて・・・。」

「けど、クリリン君をダンナさんにするなんて、18号ったらオトコ見る目あるわよ。」
「フン。」
「そうだべ〜。おらのトコの悟空さなんてひでえぞ。予告なしに家を空けたり、死んじまったりよ。」
ミもフタもない事をこともなげに言ってみせたチチを、18号は目をまんまるにして見つめた。
「じゃあ、どうしてそんな奴と一緒にいるんだ・・・?」

チチは、『うーん・・・むずかしいなあ。』と子供に言うように彼女に向かってつぶやいた。
「惚れられたモン勝ちじゃねえか?恋ってよ。」
「え?」
「最初にホレた方が負けなんだべ・・・。悟空さが気ままなことしてても、結局は許しちまう自分がいるだ・・・。時々、自分でもイヤになるだ。悟空さってば、確信犯なトコがあるような気がするだよ。なーんも知らなさそうな目で見てさ。」
チチの話をなくなりかけのコーヒーを継ぎ足しながら、ブルマはニヤニヤして聞いていた。
「クスクス・・・、そういう面ではアタシは勝ち組ねー!ベジータってば、アタシにホレてるわよ。もちろん、今もねー!あいつ今でもあたしがヤムチャと話していると、すごい目でニラみつけてんの!ガキみたいだわ!あっはっはっはっ!!」
まるで少女のように夢見がちな目で宙をみつめるチチと、豪快に笑いまくるブルマの顔を交互に見ながら、18号は濃いコーヒーをすすった。
「ご、ごちそうさま・・・。」


「そういや18号はどうなんだ?」
やばい。またあたしに矛先が向いた。
ちくしょう。
「このコは勝ち組でしょー?クリリンくんに惚れられてるもんね〜っ!」
「う、うーん・・・。」
「なに?どうしたの?もしかして、18号も負け組?」
「う・・・・・・んん?」
急に下を向いて、口をもごもごさせる18号をチチとブルマは顔を見合わせて、くすくす笑った。
「あーっ、わかっただ。18号ってば、最初は相手の方が自分の事をスキだったのに、いつのまにやら自分の方が夢中になってるってパターンだべ?きっと?」
「・・・・・・そ、そんなこと・・・!」
「あはーっ!図星でしょ?」
「うるっさいっ!そんなことないっ!ばーかっ!」
18号はすでになくなっているハズのコーヒーをすするマネをして、近くのメイドロボのお盆にどか!とマグカップを乗せた。

「アハハ、めんこいなあ18号ったら!」
「が、ガキ扱いするなよ・・・!」
「あはは、ごめんごめん。18号ったら、からかいがいがあって・・・。」

ブルマが笑い、空に目を向けると見覚えのある影がみっつ確認出来た。3人とも大荷物を抱えている。そのすべては食料なのだが。
そして、あと1時間もたてば、ほとんどはサイヤ人たちのハラの中に収まる事になってしまうのだろう。

「あら?愛しいダンナ様方のお帰りよ。ちゃんと買い物できたのかしら?」
「悟空さったら、まーたクリリンさんに迷惑かけてんじゃねえべか?」
「おーい!クリリーンっ!夕食も、お前が作れーっ!」


もうすぐ、食べ盛りの子供達も帰ってくることだし・・・。
そろそろ、妻とおかあさんに戻るだか?
・・・そーだなっ!


2001/8/19
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