Precious Darling!
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ポッドは、カリン塔一帯の静かな森の中に転がっていた。あんなに猛スピードで墜落したはずなのに、なぜか森への被害は少ない。クレーターが出来ている訳でも無ければ、おれた樹木もほとんどない。どうやら墜落する瞬間に、反重力が働いてポッド自身も森も守ったらしい。
そのことがわかる悟天ではなかったが、とにかく中の者を助けようとポッドに近づいた。
その時だ。聞き覚えのある声が頭の上から聞こえた。
「お〜い!!ごてえーん!!」
トランクスだ。大きめの白いパーカーが太陽の光を反射する。悟天も手を振って彼を迎えた。
「よお、神殿に向かっていたんだけど、コレが見えたから・・・。中にいるヤツ、早く助けないとヤバイんじゃねえか?」
「うん!」
「よーし、いくぞ悟天!」
二人はポッドのそばまで近づいて、入り口(?)のような所をムリヤリこじ開けようとした。
「あっづ!!あっちいな〜。考えてみたらあたりまえか・・・。」
「トランクスくん、気でそおっとあけよう。」
「おう。」
ふたりの手のひらが、ふわりと柔らかい光につつまれ、ポッドの入り口(?)を少しずつ焼き切った。
ポッドは金属のような光沢があり、トランクスがさわった感触もまさにそれだったのだが、焼き切る音は紙ににている。
「ふ・・・不思議な感じだなあ。変なの・・・。」
「うん・・・そうだね・・・。!あ、見えたよ、人だ!」
はらはらと落ちた金属片や、くずれてしまった布張りの内装などをよけると、出てきたのは自分達とあまり変わらない年頃のこどもだった。瞳を閉じている。まだ、気はかろうじて感じる事ができるので死んではいないようだ。
宇宙人・・・というと、タコのようなモノを想像していた悟天だが(重複するが、彼の父は宇宙人のサイヤ人であり、トランクスの父もそうだったり、兄の師匠も宇宙人だったりする)自分たちとあまり変わらない姿にちょっと驚いた。違っているところといえば、ピッコロのようにとがった耳、細い腕に埋め込まれている宝石のようなもの・・・このくらいだ。
薄緑の長い髪の毛が腕にからまって美しい模様のようになっている。姿だけは女の子のように見えるが・・・。
「うわあ・・・絵本でよんだようせいみたい・・・。宇宙人ってキレイなひとなんだね。」
「バカッ!死にかかってるんだぞ。はやく神様んとこつれていこうぜ。」
「うん。」
そういうと、悟天はその宇宙人を抱えようとした・・・が、トランクスの腕がそれをジャマした。
「なんだよ、トランクスくん。」
「オレが運ぶって。おまえはその宇宙船を運べよ。もう、冷えてるし。」
「ええ〜っ。」
「いいの!!オレはこの子をは・こ・ぶ・の!おまえは宇宙船!!わかった!いい!?」
「うん・・・。」
トランクスが強引なのは今に始まった事ではない。だが、今回の強引ぶりは悟天もちょっと目を見張った。
ふわふわでさらさらした色素のうすい髪の毛。その髪と同じ色をした長いまつげ。自分の母親であるチチとも違う、兄のガールフレンドのビーデルとも違う、この宇宙人に悟天はさわってみたくてしょうがなかった。


神殿には、ピッコロに呼ばれていたデンデがすでに待機しており、二人が連れてきた宇宙人に手をかざした。
「かみさま・・・このひと、だいじょうぶ?」
「ええ、命に別状はありません・・・。だけど、おかしいなあ。もう目がさめてもいいんですけど・・・。」
薄緑色のまつげは閉じたままだ。よほど体力を失っていたらしい。悟天とデンデが心配そうに顔をのぞきこんだ瞬間、まつげがふわりと動いた。
「あ、目がさめた?」
宇宙人は目をあけた。ぱちぱちと大きな瞳を動かして、今自分がいる状況を必死でつかみ取ろうとしている。大きな瞳も、髪の毛やまつげと同じ色をしている。動く瞳が加わった顔はますますきれいで、トランクスは思わず顔を赤らめた。
「あ、あの・・・あたし・・・。」
「ここはね、地球っていうんだよ。でね、この場所はかみさまの神殿なの。」
「??・・・?カミサマ・・・?」
「ほら、このひと。」
悟天が指をさした方向に、にっこり笑っているデンデの姿があった。デンデの後ろにミスター・ポポがいる。彼はガラスのコップに水をなみなみと注いで、宙に浮かんでいるお盆に置くとそれを持って宇宙人のほうに持っていってやった。
「た、助けてくれてありがとう・・・。」
「ねえ、ぼく悟天っていうの。孫悟天!お名前、なんていうの?女の子なの?」
「レイン・・・。女です・・・。」
レインと名乗った少女は、ポポにお礼を言ってコップを手に取った。と、コップの水面になにかが映っているのがわかった。彼女の頭の上から誰かがのぞき込んでいるのだ。
振り返ると緑の肌をした、さっき紹介された「カミサマ」に容姿がそっくりな大人の姿があった。
かなり悪い目つきに、自分と同じようにとがった耳。高い背。自分の倍はありそうな大きな体に、レインはちょっとびっくりしているようだった。
レインはしばらくぼおっとその姿をみていたが、急にはっとなりコップをかしゃりと落とした。
「・・・?どうした、まだ具合が悪いのか・・・?おい、・・・ん?」
ピッコロの言葉を遮って、レインは彼の体に(といっても、彼女は床にすわっていたので、彼の足に)飛びつくように抱きついた。瞳にはうっすらと涙までにじんでいる。
「お。おい、なんだキサマは?どうしたんだ、おい、こら!」
めずらしくピッコロがうろたえている。悟天達は、最初あっけにとられていたが、彼の『おい』だの『コラ』だのという言葉がおもしろくてくすくす笑っていた。
しかし、レインの一言でそれらは一気に凍り付いた。
「パパっ!パパでしょ?あたし、会いたかった・・・!っ今までずっと探して・・・。」


しーん・・・
しーん・・・
しーーーーーーーーーん・・・ ・・・・・・
和やかだった神殿の雰囲気を、しばし静寂が支配した。

悟天はトランクスを見た。トランクスはデンデの顔をみた。デンデはポポの顔を見て・・・ポポはピッコロの顔を見た。
その場にいる全員のなんとも言えない目線がピッコロにつきささる。
「ちょ、ちょっとまて!!そんなわけないだろ!!!!おい!何固まってんだキサマら!!聞いてんのかーーーっ!!」

2001/05/26

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