Faraway place  (戻る)


空だ。

空が紅くなってゆく。先ほどまでは真っ青だったのに、だんだん、雲の端が薄紫になって、それがオレンジ色になっている。
青い色を吸収して、空が紅くなってゆく。


「さ、これで飛び立てる・・・。これで君は逃げることができるよ。」
目の前にいるひとは、まるで人ごとのようににこりと笑った。
まるで昆虫のような形をした宇宙船って、この間来た異星のひとがゆってたっけ。たったの10日前だというのに、随分昔のような気がする。
「さ、どうした?早く乗って・・・?」
「あなたは行かないのですか?」
思いつめた顔がこちらに向く。
天才とうたわれたこの子供は、これからこの星がどうなってしまうのか、大人達の行く末がどうなるのか、とっくにわかっているのかもしれない。
自分達の特徴ともいえる、長くて尖った爪を手のひらと共に刺さらんばかりにぎゅっとにぎりしめている。
「わたしは行かないよ。君は逃げてどこかで生き延びるんだ。」
「い、イヤです・・・。みんなと離れたくない。いやだ・・・。」
「聞くんだ。」
その人は自分の肩に手を置いて、目線を自分に合わせるために膝を折り曲げた。

「君は私たちの中でも特に優秀な力を持っている。きっと他の星でも・・・その人達のために、自分のために役立てることができるはずだ。」
「こんな力・・・。今、役立てたい!ドラゴンボールはこんな時のためのものでしょう!?」
「作った物の力を越える願いはムリだ・・・。そう習ったはずだろう?」
彼は柔らかく、少し寂しく微笑むと子供の背に自分の腕を回した。

「この星はダメでも・・・、どこかで苦しんでいる人達は救えるかもしれない。君にはその力がある。」
「でもいやだ・・・。いやだっ、いやだ!」
子供の瞳は涙で潤んできた。雫がとめどなくこぼれてくる。
彼は、子供の小さな手のひらに白い封筒を手渡した。
「これはカタッツからの手紙だ・・・。読んでごらん。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・。」

あとで いくから 待っててくれ

「後で行くから、待っててくれ・・・。」
子供は自分の口の中で、白い便箋に書かれた言葉を繰り返した。
あとで、行くから・・・
「信じて、しんじていいの・・・?」
「もちろんさ。あいつが君にウソついた事があったかい?」
「ないよ・・・ない。」
彼はその言葉を言った事を確認するかのようにうなずくと、子供を半ば強引に宇宙船の中に放りこんだ。

「ぼく待ってるから・・・。あなたも、カタッツも来るのをずっと待ってる!約束だからね、約束だよ!」
「もちろんだ。・・・生きろよ・・・――――・・・。」
飛び立つ際の轟音で、その人が呼んだ自分の名前がかき消されてしまった。


「飛んだか?」
「ああ、急いで作ったわりにはな。ちゃんと伝えておいたから、安心しろ。」
「・・・そうか。よかった・・・。」
カタッツはちょっと微笑むと、地割れが始まった地面を不敵に見つめた。
空がますます紅くなる。

「信じて・・・待ってる、と言ってたぞ。」
「じゃあ、オレ達もこの星の事を信じてみようか?」
「なにがだ?こっちはたったのふたりだぞ。何を信じるんだ?!うわ!」
地面が曲がるのと、上から色々な破片が散らばるのを気にしながら彼は答えた。
「この星が起こしてくれる奇跡をだ。きっとなにかどんでん返しをしてくれるさ!」


星の空がまた紅くなる。
またきっとどこかで、君に会える。
きっとどこかで、君に会うことができると信じてる・・・。




それは、遠い遠い、昔の話。
星が自らの力で起こした異常気象は、ずっとずっと続いて・・・。
ある時糸がきれるようにふっと終わった。




そして、また時がすぎて、その星の危機はまた起こった。


戦いのさなか、一人のナメック星人がこの星に降り立った。
冴えるような気配がとてもよく似てる。
いつかこの星のために力をつくして消えていったひとに。

「ここが故郷・・・か・・・。」



        おしまい。


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ナメック星の一番最初の「最期の日」です。ナメック星を飛び立つちっちゃい頃の神様と、その親御さん、それに若い頃の最長老様(多分、素敵な人だったんだろうと、勝手に設定(・・・おい))。ラストでセリフを言ってるだけのひとがピッコロさんです‥‥。by ラバランプ
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