神様のお勉強(恋って・・・?)    (戻る)

おいしいものを食べることもない、だれかに恋することもない、じゃあ、あんた達ナメック星人は、いったい何を楽しみにして生きてるの?

こんなことを、ふとブルマから問われたことがあった。
たしかに、口にするものは水だけ。地球人のように、誰かに恋こがれることもない。そもそも、その食欲とか、恋愛感情といったものがわからないから、しょうがない。
自分には、わからなくていいものだとピッコロは考えていたが、目の前にいる、まだ少年といってもよい神にとっては、結構な問題のようだった。
「いくら話をきいてもよくわからないんですよね、こればっかりは・・・。」
デンデは、視線を下界の風景からピッコロの顔にシフトした。
「食欲っていうのは、なんとなくわかりました・・・。僕達だって水しか飲まないけど、我慢していると、ほしくてほしくてたまらなくなる。けど、恋・・・っていう感情はどうしてもわからないんです・・・。一人の人を独占したいっていう気持ちがどうしても・・・。」
「・・・・・・。」
ピッコロは答えようがなかった。そんな感情は持ったことがない。いや、持てないといったほうが正しい。

「僕、ブルマさんに聞いたことがあります・・・。恋するっていうのはどういう気持ちになるのかって。」
「ほう。・・・どんな気持ちだ?」
「気持ちがよくなるって・・・。そのひとのそばにいるだけで、声を聞くだけでいい気持ちになれるの、胸がいっぱいになるのよっていってました。」
「そうなのか?」
ピッコロは威勢がよく、軽快で好奇心旺盛なブルマの顔を思い出した。
「ハイ。もっといろいろ聞きたかったんですけど・・・。」
デンデは、踏みつけそうになっていた自分の服の端をちょっとつまんで、また下界に目を向けた。
「けど、ちょっとだけわかったんです・・・。恋っていうのが、ちょっとだけ。僕,地球にきて神になって・・・驚いたのが、夜の存在と・・・ベジータさんなんです。」
「・・・なるほど。」
ナメック星のベジータは、まさに殺戮と破壊を楽しんでいるフシがあった。自分の思い通りにならないと、簡単に人を死に至らしめようとしていた。
以前の自分のように・・・。
デンデだって、蹴り飛ばされたのはベジータが最初で最後だろう。
はじめて、ベジータの顔を神殿で見たとき、デンデは思わず悟飯のマントのそばに隠れてしまった。悟飯は「大丈夫だよ。」となだめるように言っていたが、デンデがベジータとまともに目をあわせることができるようになったのは、本当につい最近のことなのだ。

「僕、本当に驚きました・・・。ベジータさんが、自分以外の人にやさしくなっていたのが・・・。」
「・・・・・・。」
「で、僕考えたんです・・・。恋ってきっと、やさしい気持ちになれることなんですね。」
「ん・・・?」
「僕には考えられないくらいの量の、やさしい気持ちを大好きな人に詰め込んで、詰め込まれるから、『胸がいっぱいになる』んだ。」
デンデは、自分の両手を胸の前でぱちんとあわせて、まとめてみた『恋』の考えにちょっと満足げにうなずいた。

「けど、僕は悟飯さんも、ピッコロさんも、ポポさんも・・・大好きですけど、それとこれとは違うんですよね、きっと・・・。」
デンデは、タイルの床をカッと軽く蹴るとピッコロの方に向き直った。
「ずっと、ずっと、この星で暮らしていたら、いつかわかるときがくるのかな・・・?」
「それだけわかっていれば十分だ。デンデ・・・。」
あまり納得がいってない、といったようなデンデの肩に手をおき、神殿の方に促した。

ピッコロは、正直デンデの言葉に驚いていた。彼は地球のことをわかりたい、ここのひとが何を考え生きているのか、とずっと言っていた。
いつのまにか、神として成長していた・・・。
自分よりも、いつのまにかずっと。

知らぬ間に成長してゆく小さな神に、彼はちょっとだけ憂いと期待のまなざしを向けた。


2001/05/04
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