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デジャ・ヴュの風景(やさしいきもち)

「いやあああああっ!!」
ピッコロの顔面に向けて、小さな少女のつま先が勢いよくヒット!!…するかと思ったが、ピッコロは彼女の足首を宙で乱暴につかんで、自分の目の前に上下逆さにさせた。
「よし、今日はここまでだ。」
「あ、ありがとうございましたあ…。」

逆さに吊るされたまま、力無く答えた少女の名前はサヤ。あの…孫悟空の子孫、だ。
どっち向いているのかわからない黒い髪がそっくりだ。そして何より、サイヤ人の血を引いている証として、シッポが生えている。
サヤは吊るされたまま、腕を大きく伸ばして思いっきり伸びをした。その反動で彼女の上着はずるずると下がって、上半身がだらしなくはだけた。
あわてて上着をなおそうとする仕草も見せないサヤに、ピッコロは大きなため息をついた。
「おい、人前でハダカになるなと神に教えられたばかりだろ。」
「え?は、うん…。でもさあ、どうして女は裸になっちゃいけないの?男だったら問題ないんでしょ?」
「うむ…それは…。」
ピッコロは返事に困り、いったん彼女を床におろした。それと同時に神殿からばたばたと騒々しい音が聞こえてきた。

真っ赤な顔をして、全速力でこちらに駆けて来る少年…メディだ。目つきも、逆立った髪の毛もベジータにそっくりだ。しかし彼は黒髪ではなく、少しだけ紫がかっている。なにより彼にはシッポは生えてない。
シッポ付きのサヤの場合は、先祖返りと言ったほうが良いのかもしれない。
「おいこら、お前なんでハダカなんかになってたんだよ!!」
「え、だってピッコロさんに足首つかまれちゃってさ。身動きとれなくって…。」
「は?!なっ…!!」
短絡的な考えがメディの頭の中を瞬時に駆け巡ったらしい。顔がゆでだこのように真っ赤になり、金縛りにあったかのように固まっている。
「ふ、ふざけんなよ、てめえら!!げ…下品なマネしやがって!!や、や、や、っややらしいっ!!どすけべ!!ばかっ!!!」
「どう考えたら、そんなことになるんだお前は…。」
「うっ、うるっせえ!!ピッコロさんのばかっ!!ぐれてやるぞオレ!!」
「はいはい…そこまでですよ、メディ…。」

口を尖らせて彼の後を追いかけてきたのは、この星の神であるデンデだ。だが、いまとなってはもう、その名で呼べるのはピッコロだけだが。
サヤとメディはもちろん、敬愛をこめて『神様』と呼んでいる。
「だっ、だっ、だってだって!!神様聞いてよ!!このふたり、オレの知らないとこでや、や、やらし…。」
メディの言葉が言い終わらないうちに、デンデは彼の額に自分の手を乗せた。
こうすると、デンデの見ていた風景が、彼の頭にも伝わるのだ。
「誤解はとけましたね?」
「は、はい……。」
普段は穏やかで、物腰も静かな神様だが、怒らせるとピッコロよりもどうなるかわかったものではない…というのは、一年間のここでの生活でイヤと言うほどわかっていた。
メディは、これがあと2年も続くのか、と考えると軽いめまいを感じた。
「さあ、長い間の勉強と修行で、メディもサヤも疲れたでしょう?夕食にしましょう。」
「やったーっ!!」
「……めまいを感じたのは、おなかが減ったから、かあ…。」




「もう、夜も遅いぞ…。そろそろ部屋に帰って寝ろ。」
「もうちょっとだけだから、ね?またなにかお話して。」
「……。」
サヤは夜になると、時々こうやってピッコロの元に遊びにくる。大抵は、夜が遅くなる前に、眠気に負けて自分の部屋に戻るのだが、今日はいつもと違ってまだいる。
「ねえ、ピッコロさん…。」
「わかった…。」
彼女はにっこり笑うと、上機嫌でベッドに腰掛けているピッコロの隣に座った。
「ね、あたしってさ、ご先祖様の中で…だれに一番良く似てるの?」
「あいつだ。言っただろ…。その、どこ向いてるのかわからん頭がそっくりだ。」
「違うよ。そうじゃなくって…、中身は?」
「…それも、あいつだろ。」
常識もまったくわかってない、しかも細かいことは気にしない。
なにより、強くなりたいという貪欲とも呼べる気持ちがよく似てる…。

「お前はそっくりだ…。良く似ている。」
「ふうん。…えへへっ。」
「なにがおかしい?」
サヤはベッドに転がりながらくすくすと笑った。彼にそっくりの、しかしちょっと柔らかい髪が、ベッドにちらばる。
「あたし、あたまわるいからさ、昨日勉強したこともすぐに忘れちゃう。だけど、ピッコロさんや、神様は、何百年も前のあたしたちを覚えていて…、すごいなって思ったの。」
「……フン。」
「きっと、ピッコロさんも、神様も、ずっと昔のあたし達のこと…すっごくすっごくすっご〜く、大好きだったんだね。」
だいすき、という単語がサヤの口から飛び出して、ピッコロは思わず彼女の方を振り向いた。

「それでさあ、きっと…昔のあたし達も…ご先祖様も、ピッコロさんたちのこと、だいすきだったんだわ。」
「なぜわかる、そんなこと…?」
「あたし、はじめてピッコロさんの顔見たとき、なんかね、…えへへ、嬉しくなっちゃったの。初めて見たはずなのに…。」
「…なに?」
サヤは絹のシーツをあたまからかぶり、ベッドからちょっとだけ起きて、ピッコロの手をとった。
「だけど、ようやくわかった!なんで嬉しくなったのか…。きっと、昔のあたしも好きだったから、ピッコロさんのこと…初めてみたのに嬉しくなったんだ…。」
サヤはひとなつこい笑顔を彼に向けて、彼の指先を握った。
本当に、…そっくりだ。いや、あいつだけじゃない…。彼の血をわけた子供達にも。
おぼろげに思い出すのは、自分をいつまでも変わることなく慕ってくれた弟子のこと。
その弟で、天真爛漫な少年。
弟子のことを心から愛していた、大切にしていた少女。
その間にできた、可愛らしい子供…。
思い出しても、思い出しても、つきることのない大切な者達。
そして、はるかな時を超えてもかわらない笑顔をくれる少女がいる。


「…サヤ?」
気がつくと、サヤはピッコロの指先を握ったまま、ベッドに手足を投げ出して眠ってしまっている。
こんな時間まで起きていて、しかも昼間はずっと修行にあけくれて、疲れてないほうがおかしい。
そう考えられるようになった自分に、ちょっと苦笑しながらピッコロは彼女の髪を撫でてやった。
彼はちいさなサヤを押しつぶさないよう、一緒になってベッドに転がると毛布を全部彼女にかけて目を閉じた。
「今日はもう、休むか…。」


明日は早い。
昨日と明日の夢を見て、今日はもう休もう…。
次の未来を見るために…。


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名前の解説
サヤちゃんの方は、悟空→ごくう→一文字ずらしてさけ(笑)→英語でサーモン→サモン→後ろの一文字ずらしてサヤ…です。
なんか、今思ったのですが、サイヤ人だからサヤちゃんでもいいのでは…。
ベジの子孫のメディはですね…ベジ→一文字ずらしてボス(爆笑)→コーヒーのBOSS→ボス漫→ゴルゴ13→M−16(ゴルゴの愛銃…ってなんでこんなこと知ってるんだあたしの職場の皆さんは…)→Mサイズ→メディウムサイズ→メディ…ってわけです。長かったあ〜!!
あ、でもこれも今思ったのですが、エムっぱげだからエムでメディウムでもよかったなあ…(ごめんなさい、ごめんなさい〜〜〜!!)
以上、名前の解説でしたっ(おい…)!『ヒマそうだな〜、アンタ…』と思われた方、大正解です