<1> (2) (3) (4前) (4後) (5前) (5後) (6前) (6後) (戻る)

デジャ・ヴュの風景

あの時から、何百年過ぎたのだろうか…?
すべては、束の間の風景だったような…。今、がゆめ…か?

「ねえ、ここをのぼれば仙人様がいるんでしょ?あたし…のぼってみる。」
「ばかばかっ!何言ってんだよお前…。ムリだっつの。てっぺんがみえねえぜ。」
「だって!!」
黒い瞳に黒い髪の毛、そして尾を持った少女は、黒みがかった紫色の髪に青い瞳の少年に踵をかえした。
「ココをのぼったら、力が何倍にもなるお水…くれるんでしょ?あたし、やるもん。」
「けどよ。」
「あんたは、みんなのカタキを取りたくないの!?いいよ、あたしひとりで行って来る!!」
少女は、塔のへりにつま先を引っ掛けたかと思うと、するするとサルのようにのぼっていった。それを見て、あわてて少年も追いかける。
「ま、まてったら!!なんでいっつもこうなんだよてめえは…。」


「いつか、見たことがある風景だ…。もう、思い出せん。」
「それ、地球の言葉で『デジャ・ヴュ』っていうんだそうですね…。」
二人の異星人が、空に浮かぶ神殿から少女達を眺めていた。一人は、顔に深いしわが刻み込まれている。しかし、その体は鍛え抜かれていてどうにも顔と不釣合いだった。鋭い目が、遥か彼方の地上をさすように見つめている。
もう一人は杖を持ち、毎日ここからこの星の住人達を見守っている神だった。青年といえばそう見えるし、それ以上にも見える。先の異星人よりもいくらか優しいまなざしをしていた。
自分たちにとって、大切な人達がいなくなってしまってから、もう幾年過ぎたのだろうか。
…それさえも忘れてしまった。

地球は今、小さな危機に瀕している。自分たちが経験してきたような、とてつもない危機ではないけれど。
自分が作った魔法の玉をめぐって、人々の間で争いゴトが起きているようだ。
「忘れられていた…ドラゴンボールがまた、争いごとの原因になるなんて…。」
「…いや。」
初老の異星人は、かすかな音をとらえた。
神殿に上がってくる音だ。…カリンからもらった鈴もあるようだ。
りん…りん、りん…。

「あいつは、争いごとだなんて、これっぽっちも思ってはいない…。」
「…!そうですね…。」
「ドラゴンボールがまた奇跡を起こしたようだな…。」
神を、奇跡を越える力を秘める者達が、もうすぐ来る…。いつか、見た風景が、もうすぐここに…。


「こんにちはっ!!ねえ!!神様〜っ!!いるのーっ!!」
「で…でかい声で…。もう少しなんとかならねえのかよ…。」
黒い瞳に、黒い髪。大きく高い声とシッポ。まつげが長く、幾分大きな目をしていることを除けば、子どものころのあいつにそっくりだ。隣にいる少年も、いつかみた異国の王子によく似ている。逆立った髪の毛に、挑戦的な目つき。ちょっと大人びた仕草…。
少女は、鈴を手のひらでもてあそんで、だれかが出てくるのをひたすら待っていた。
一番最初に出てきたのは、ターバンを巻いた体格の良い黒い肌の持ち主だったが、緑の手がそれをさえぎった。
尖った耳を持つ青年が奥から出てきた。
「…あなたが、神様なの?」
「ええ…。ここにいるわたしは、あなたの…遠い昔の、あなたに導かれてやってきた者です。」
神と名乗った者はにっこり笑って、少女から鈴を受け取った。
「あなた達のことを…何百年も前から待っていました…。この方も。」
神が振り返った先を少女は目で追った。神の背後から、鋭い目を持つ者が現れた。
しかし、自分を見つめる表情は楽しげだ。
「どうやら、隠居はこの辺でおしまいらしいな…。」
「ええ。」


いつか見た風景が現実になってゆく。感覚が、夢から醒める。
デジャ・ヴュがデジャ・ヴュでなくなってゆく。
束の間だったハズの風景が、色を取り戻す…。

奇跡への第二ステージが、もうすぐ始まる…!

2001/06/13

<1> (2) (3) (4前) (4後) (5前) (5後) (6前) (6後) (戻る)