セレブレーションウェディングモード!(後編)
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結婚式は大盛況のまま、夜遅くに終わった。おなかいっぱい食べて満足げに腹をさすりながら眠っている悟空。その隣で酒が回りすぎたらしいサタンが一緒になってぐっすり眠っている。そんな二人を抱えているのがトランクスと悟天。クリリン達もほろ酔い気分で、ホテル行きのジェットフライヤーに乗り込んだ。
悟飯もビーデルも同じ所に泊まるらしい。正装から着替えて一緒に乗り込もうとしたとき、ピッコロに呼び止められた。
「悟飯、ビーデルを借りるぞ。」
「えっ?…ビーデルに用事なんですか?」
「…そうだ。」
ピッコロと悟飯以外の全員が一抹の不安を感じたが、悟飯はすでに乗り込んでいたビーデルの手をとって外におろした。
「すぐに戻る…。」
そういうと、ピッコロはビーデルを促すようにして、レストランの裏手の方に連れていった。
「…おい、悟飯。まずいんじゃねえか…?ピッコロとビーデルちゃんを二人きりなんかにさせて。あいつ、彼女になにするかわかんねえぞ…。」
「なにいってんですか。ピッコロさんがそんなことするわけないじゃないですか?」
心配そうにつぶやくクリリンに、悟飯はあっけらかんと答えた。
(そう思っているのって、悟飯さんだけだよね…?)
(うん。にいちゃんだけだ…。)
トランクスと悟天が不安げにジェットフライヤーの窓から、遠ざかっていく二人を見つめていた。

そんな中、デンデだけはなんとなく気がついていた。なんとなく…。
あの音は…きっと、とてもすてきなことの前兆なんでしょう。
きっと…。


「ど、どうしたんですか…?わたしに用事って…?」
「これだ。」
ピッコロは懐から、ポポから預かっていた『お祝いの品』を取り出した。ちょうど、手のひらに乗るサイズのガラス玉で、玉の中にまた3つの玉が入っている。
「…すごくきれい…。あの、これ…?」
「ポポが作ったものだ。これが朝日。こっちが日暮れ。これが星空…。それぞれの時間帯の光を固めて作ったものだ。今は、夜だから星空が光っている…。」
「うわあっ…。」
女の子はロマンティックなムードに浸るのが大好きな生き物だ。
もちろん、ビーデルだってそれは変わらない。ピッコロからの意外な『お祝い品』を、明かりにすかして見ながら彼女は心から喜んだ。
「こ、こんなすてきなもの、頂いていいんですか?」
「かまわん。ポポが二人のために作ったものだしな、それに…。」
「それに?」
ピッコロは急に表情が柔らかくなった。まるで、悟飯に話しかけるときのように、優しく。
「ちょっとやそっとではこわれない。」
「へ?」
「…子供は、いろんなものを触りたがるものだろう…?」
ビーデルは反射的に、自分のおなかをかばうようにしてがばっと抱えた。彼女の頬は、ポポが固めた夕焼け空の光のように真っ赤に染まった。その頬を自分の両手で包んで体をくねらせた。
「あっ、え…っ。」
「……フン。」
「い、いつ?いつわかったんですか…?」
ピッコロは、まだ少しだけ気が動転しているビーデルのそばに寄ると、自分の右肩に引っかけていたマントを彼女にかけた。
「ここに来てから、妙な音がずっと聞こえていた…。泉がわくような、心地よい音だ。」
「この子の…音?」
「そうだと気がついたのは、おまえと話していたときだ。お前から一番大きく聞こえたからな。」
彼は芝生の上に静かに座ると、彼女の方をちらりと見た。
「悟飯には…、まだ話していないのか?」
「い、いそがしかったから!お互い、式の準備とかで…。悟飯くんたらてんてこまいだったのに、これ以上頭の中をパニックにさせたら悪いと思ったんです。それで、式が終わって…、今日!話そうとしたのに、まさかピッコロさんに先に話しちゃうことになるなんて!」
ビーデルはくすっと笑って、彼の隣に座った。自分の腹を愛おしそうにさすって。


「はらの中の子供も…。お前達のことを祝福しているようだった。」
「そんなこと…?わかるんですか?」
「悟飯が皆に礼を言っていたときが、一番音が大きかったからな。」
「わあっ。」
彼女はピッコロからもらった、光を集めた玉を腹にくっつけてまだ見ぬ子供に話しかけた。
「それは、『お父さんたら、泣いちゃってて情けなーい!』って思って音を大きくしたのかも、ねーっ?」
「フン…。」
「ウフフ、この子きっとピッコロさんにとてもなつくと思います…。だって、お母さんの次に自分をみつけてくれたんだもん、ね?」
「…なに?」

ビーデルの、自分の腹に話しかける様子はすっかり母親になっている。
ついさきほどまでとは違う、母性あふれるきれいな顔だ。
彼女の瞳も、腹をさする手も、すべてが優しくなっていることに気がつき、ピッコロの表情もつられて優しくなった。
「今度は、3人で…。神殿に遊びにいきますね。」
「ああ。」
にっこり笑ったビーデルの顔に、急に雨がふったかのように涙がどっと出た。
彼女の涙はとめどなくあふれて、白いシャツに波紋を落とす。
「お、おい…?どうした急に?」
「あ…、あははっ!今日はいっぱいいろんなことがありすぎて…!ふふっ、ど、どうしよう?涙とまんない!あは、あはははっ!!」
「おい…。……。」
ピッコロは彼女の肩にポンと手を置くと、それが合図だったかのようにひっく、ひっくとしゃくりはじめた。
さっきまでの、母親の顔とはうってかわってまた少女に逆戻りしたかのようだった。

これで、あと十月十日たったら子供を持つ親となるのか…?と思うと少々頼りない気もしたが、それをきっと愛弟子が支えるのだろう。
生まれてくるこどもも、きっと彼女や悟飯にとってかけがえのない存在になっていくのだろう。
「よくできているな、地球人は…。」

ピッコロは、まだしゃくりあげているビーデルを立たせてから、彼女の顔をちょっと乱暴にマントで拭いて、二人で皆の所に戻っていった。



「やっぱり、あの音は悟飯さん達の子供の音だったんですね。」
「うむ…。」
神殿に戻ったピッコロとデンデは元通りの生活に戻っていた。
今日も天気は晴れ。雲が少しかかっているが、そよ風が吹いていい天気だ。
「おなかの中で10ヶ月もまたなくちゃいけないなんて…。お母さんも、子供も、大変ですよね…。」
デンデは自分の腹をさすって「自分の中に10ヶ月も違うひとが入っているなんて…。」とつぶやいた。
「タマゴでうめないのは不便だな…。あれだと、苦しいのは一瞬だからな。」
「そうなんですか…。…え?」
ピッコロは言ったあとでしまったと思った。
「ピッコロさんて、タマゴ産んだことあるんですか?」
「み、ミスター・ポポから聞いているだろう?ずっと、昔の話だ。生まれかわる前の、な。」
「…そうですか…。」
デンデはしばらく考え込んで、タイルの床を見つめていたが急に「あ!」と(彼にしては)大声を上げた。
「ここの神殿って、3人で使うにはちょっと広いと思いませんか?」
「そ、そうだな…。」
何を言い出すんだこいつは…。まさか。まさか…。
「ボクもタマゴ、産もうかな?そうしたら、ちょっとはにぎやかになりませんか?」
予想はしていた答えだが、いざ聞くと頭がわれるように痛くなった。『ふたり?それとも3人くらいでしょうか?うーん。それでもここは広いですよねえ…?』と勝手に家族計画を立てている地球の神に、ピッコロは久しぶりに大声で怒鳴りつけた。
「ふざけるな!神がこども産んでどうするんだ!!もう少し、身の上をわきまえろ!!」
「じょ、冗談ですよ、もう…。あ!」

青いボディのジェットフライヤーの姿が遠目に見えた。
ガルウィングのドアを宙で開けて、手をふっている悟飯の姿も見える。
彼の背中にダッコひもでくくりつけられているのは、『音』の正体だ。
「やっときてくれたんだあ!ピッコロさん、パンちゃんですよ!」
「そのようだな。」


十月十日たって生まれてきた天使が、ようやく天界にやってきた。
彼女のお話は、またこれから…。

    (おしまい)

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