セレブレーションウェディングモード! (前編)
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空は快晴。下界を直接見渡せるくらいに雲は無く、空はどこまでも澄み切っていた。
青い空も、太陽も、花々もみんな、今日幸せになる友人達を祝福しているかのようだった。
「よかったあ、晴れて…。外でやるって言ってましたもんね。」

今日は、いよいよ悟飯とビーデルの結婚式だ。デンデは朝早くから(いつも早いのだが)用意していて、すっかり準備万端だ。
「あとは…。」
彼は花壇に植えられているつぼみの花を、ミスター・ポポの了解を得て小さな植木鉢に移した。一応、お祝いのつもりである。
デンデが植木鉢の上でくるりと指を回すと、つぼみだった花がぱっと開いた。
「ごめんね、ちょっと早く起こしちゃって…。けど、今日はお祝いだから、キレイに咲いていてくださいね。」
自分のしているターバンと同じ柄のスカーフを植木鉢に巻き付けながら、花に優しくつぶやいた。

「おい…。そんなかっこうで土なんかいじるな…。」
「あ、すみません…って、わあ…。」
神殿から外にでてきたピッコロのかっこうを見て、デンデは思わず感嘆の声をあげた。
ターバンは、白い布地の上に美しい幾何学模様がほどこされており、金色の糸で縁取られてあった。それを飾りビーズがいっぱいの紐と一緒に、左耳の上できれいに結んでいた。いつものでっぱりのあるデザインのマントは、青いローブに変わっており、裾のほうに細かく花模様の刺繍がしてあった。ローブの下はいつものかっこうだったが、帯がターバンとお揃いに変わっていて、細い金の飾り帯を上からまいていた。
「……ど、どうだ…?」
「す…すてきですよっ!ホントに!絵巻物でみた砂漠の騎士みたいです!」
瞳をきらきらさせて、自分のカッコをホメるデンデにピッコロはちょっとだけ微笑むと、持っていた茶のマントを右肩にひっかけるようにして金具で止めた。
「たまには、いいだろう。」
「そうですね。」
いつも、着たきりの二人の共通意見だった。


ミスター・ポポがやってきて、デンデが作った植木鉢に丸いランプのようなガラスの風よけをかぶせてくれた。
「お祝いだから、落とさないよう、気をつける。」
「ハイ。ありがとうございます。」
「…ピッコロは、持ったか?」
「ここに入っている。」
ピッコロは自分の懐をポンとたたくと、ポポは安心したようにホッとした表情になった。
「さて…。じゃあ、行って来る。」
「神様、ピッコロ。二人によろしく。」
「わかりました。伝えておきますね。」
ふたりは『お祝い品』をちょっとかばいながら、スピードを緩めて悟飯達のもとに向かった。


結婚式…といっても、家族や友人達を囲んでのパーティに似たものだった。悟飯とビーデルが会場に選んだレストランは、規模こそ小さいが内装などがとてもこっていて、店主のセンスの良さが伺えた。
みんなに囲まれて、真ん中に立つ今日の主人公達はとても幸せそうだった。二人とも、ずっと笑顔が絶えない。
「おめでとう、悟飯くん!こーんなカワイイお嫁さんもらっちゃってえ!幸せ者ねっ!。」
「あ、…ありがとう、ございます。て、照れる…なあ、もう。」
ブルマに「このこのっ!」と肘でつつかれている悟飯の顔は、頬が落ちるのではないかというくらいの満面の笑みだった。そばに寄りそうビーデルも、チチと仲良くおしゃべりしていて、すっかり『母娘』になっている。
「いいよなあ、悟天…。あんなステキなひとが今日からおまえの『お姉さん』だぜ…。しんじらんねえよ全く…。」
トランクスは心底うらやましそうに悟天にボヤいたが、本人は一瞬ポカンとして黙り込み、ポンっと手を合わせた。
「あ、そ、うわ、そうじゃん!!お…おねえちゃんなんだあ…。お姉ちゃん、かあ。えへへっ!」
悟天は両手を顔の前ですりすりとさすって、兄に負けないくらいの笑顔を作ると、トランクスは彼の頭を「調子に乗るんじゃねえって!!」とげんこつでグリグリやった。
そして、父親の悟空はというと…。
いつもどおり、バカみたいに大量の料理を目の前にして、次々に平らげていく。食べている合間に「う〜ん、これうんめえなあ!」だの「おっ、こっちもいけるぞ。」だのつぶやいている。はっきりいって、息子の結婚に喜んでいるのか、料理を食べることに喜んでいるのかわからない。
そんな悟空のとなりで酒を飲んで、悟空の料理へのつぶやきにひとりつっこみをいれているのはサタンだ。いつもの通り、陽気で娘の晴れ姿にひときわうれしそうだった。
ピッコロは、このふたりが親戚になるのかと思うと、急に笑いがこみ上げてきて口元がゆるんだ。


ところで。
盛り上がりも最高潮な、幸せいっぱいの空気に包まれている会場だが、彼は先ほどからその優秀な聴力を持つ耳で、ある音を聞いている。地球人には、たぶん聞き取れないのだろう。だれも気にとめてない。
デンデの方も気がついているようだ。時折彼の方を向いて(まだピッコロさんも聞こえますか?)とテレパシーで話してくる。
音に邪悪さは感じられないが…。
これは…?


「ピッコロさん、ごはんたべないの?あたしがもってくる?」
「む。…オレ達は水だけでいいのだ…。」
「そうなの?」
バイキング形式になっている立食スタイルのパーティで、ワイングラスしか持っておらず、しかもなにかにぼおっとしている彼に、気を遣って話しかけてきたのはマーロンだ。
ちょっと前までは舌足らずでクリリンの腕に抱っこされていたが、今ではとっても大きくなり、今日は母親とおそろいのグリーンのワンピースを着ていた。
マーロンは自慢の金髪を指でいじりながら、ビーデルのほうをじっと見た。
「ビーデルおねえちゃん、すっごくすっごくキレイだね!」
「そうだな。」
「悟飯お兄ちゃんもとってもかっこいいなあ…。」
「…そうだな。」
「ねえ、ふたりとおしゃべりしてこようよ!」
ピッコロはデンデと違って、進んで皆と交じって楽しくおしゃべりすることができないんだ…と、マーロンは父親譲りの観察眼でなんとなく感じ取っていたらしい。
ピッコロに食べ物をすすめに来たのは、彼に話しかけるための、彼女なりの『口実』なのだ。
そのことがわかるピッコロではないが、マーロンが自分を気遣っているのはなんとなくわかったらしい。素直に彼女の言うことを聞いて、皆の輪の方に寄ってきた。


「おっ、第2の父親の登場だぜ。」
「いっしっし…。おもしろくなりそうだなあ…。」
意地の悪い陰口が聞こえてきたが、とりあえず悪意がないことはわかっていた。しかしピッコロはクリリン達の方を、持ち前の鋭い瞳でギロっとひと睨みすると、デンデとおしゃべりしていた悟飯の前に立って彼の肩に手を置いた。
「…幸せに。悟飯。」
「…!あはっ!!ありがとうございます!ピッコロさん!!」
たったの一言だけだが、できの良い弟子は師匠の言葉の裏側まで完璧に読みとることが出来た。
いつもどおりの、口元だけで微笑む変わらない笑顔がなによりうれしかった。
その師匠は、隣にいる最愛のひとにも声をかけてくれた。
「マーロンがホメていたぞ。」
「まあっ。…うふふっ!」
ビーデルは頬をちょっと赤くして、ピッコロの方をみつめてニッコリ笑った。
「ピッコロさん、来てくれて本当にありがとうございます…。すごくうれしいです。」
「フン…。ところで。」
ピッコロは悟飯のそばにいたデンデが手ぶらな事に気がつき、植木鉢の行方を目で追った。
「祝いの品は受け取ったようだな?」
「ええ!とってもかわいいお花…。」
ガラス玉のなかに入っている植木鉢はビーデルの腕の中にあった。持っていた小さなブーケととてもよく似合っている。「神様って、センスがいいですよ!」と笑って、そおっと抱きしめた。デンデも、気に入ってくれた様子の二人を見てうれしそうに笑った。

「ピッコロさんも、みなさんも…。こんなにたくさんのひとに、こうやってお祝いして頂いて、ボク本当にうれしいです…!ホントに…。ボク。」
「悟飯さんたら!シメに入るのはまだ早いですよっ!!」
ちょっぴり涙ぐんでいる悟飯にヤジをとばしたトランクスの言葉に、一同は大きな声で笑いあった。

ああ、この幸せがずっとずっと続いてくれますように…。
みんな、そう願わずにはいられなかった。

奇妙な音が少し大きくなって、ピッコロの耳に届いた。


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