昇化 


なんて、強さだ。

オレは衝撃を受けていた。
未来から来たベジータの息子から告げられた人造人間17号と18号の存在。

それがここまで強いとは・・・・・・。このオレが、まったく歯がたたなかった。
いや、オレばかりではない。超サイヤ人となったベジータとその息子でさえ、
たった二人のあの若造に、いいようにあしらわれた。

これでは、いくら孫悟空でも、勝てん。
この3年間、あの男とずっと修行してきた。今のアイツの力はわかっている。
アイツがイザとなった時、予想外のパワーを発揮するのは何度も見てきたが、
しかし・・・・・・。

「お先真っ暗だな」
いつもは不敵な三つ目の、気弱な言葉でオレは我に返った。

「おまえたちは、孫悟空の家にいって、アイツをよそへ移せ。
 すべては孫悟空の病気が治ってからだ」
地球人どもにそういって、また考えた。

それで、どうする・・・・・?
人造人間たちの狙いは孫悟空だ。
だが、奴らがトランクスが言った通りの連中なら、悟空だけ殺して、それで済むとは思えん。
それに悟飯は・・・・・・? 悟空の息子であれば、標的になると考えた方が妥当だ・・・・・・。

(すべては孫悟空の病気が治ってからだ・・・・・・)

・・・・・・オレは・・・・・・どこかで悟空を頼りにしているのか?
このオレ様ともあろうものが、よりによってあの男を・・・・・・!?

バカな!
そんなことは、認められん!
このオレが、誰かを頼りにするだと!?

力が必要だ。あの人造人間達に匹敵する力が!
それも早急に、そして確実に!
それには・・・・・・。


「なんだよ、その顔。何か作戦でもあるんじゃないのか?」
チビがいきなり訊ねてくる。
「教えろよ、ピッコロ。仲間じゃないか」

「仲間だと!? 調子にのるなよ! このオレがいつキサマらの仲間になった!」

無遠慮な人なつこさがアタマに来る。この男はいつもそうだ!
「ふざけるな!! オレは魔族だ!
 世界を征服するためにキサマらを利用してるだけだということを忘れるな!」

オレは空に飛び上がった。

そうだ、すべて利用しているだけだ。
同じように、ヤツのことも利用してやる。
オレのパワーの一部として呑み込み、消滅させてやるぞ。



オレは、もう一人のオレと向かい合った。
醜く年老いたナメック星人。

神になるために、オレを・・・・・・正確にはオレの父を切り捨てた。
生まれたその瞬間から、コイツに対する激しい憎しみが、オレの中にあった。
孫悟空に対する憎しみなどそれに比べればどうということはない。
これだけ憎いのに、同体であるが故に殺せない事実が、理不尽だった。

コイツとの同化など吐き気がしそうだが、オレのパワーアップのためと思えば耐えてみせる。
それでコイツが消滅するなら一石二鳥だ。ドラゴンボールなどクソ食らえだ!


「では、基本となるおまえがこの私に触れるのだ」
神のヤツが言った。

「よし」
オレは左手をのばし、ヤツの胸にあてた。

「はっ!!!」
ヤツが気合いを込めた。

「ぐっ・・・・・・!」
掌から何か温かいものが入ってきた。

や、やめろ・・・・・・、ダメだ、入ってくるな!

ダ、ダメだ。オレがオレでなくなる! これ以上はダメだ!!
左手を、ヤツの胸から離そうとした。

「な・・・・・・?」

皺だらけの4本の指が、オレの左手首をがっしりと捕まえている。

(恐れるな、ピッコロ!)

だ、誰が恐れるか! だが、約束が違う! 基本はオレと言ったはずだ!

(その通り。基本はおまえだ)

ウソをつけ! キサマから流れ込んでくるものは、オレを・・・・・・オレを違うものにする!
またオレを追い出して、キサマは自分のいいようにするつもりだ!

(違う。私はきっかけに過ぎない。おまえが感じているのは、おまえ自身だ。
 この温かさは、おまえの中にあるものだ)

そんなはずはない! オレはピッコロ大魔王だ! こんなものとは無縁のハズだ!

(思い出せ、ピッコロ。おまえが孫悟空の息子をかばって死んだ時、何を思った?
 ナメック星で、何を考えて孫悟空を助けにいった? 思い出せば、わかるはずだ)

そ、それは・・・・・・。し、しかし・・・・・・!

(逃げるのか、ピッコロよ。自分から言い出したことだぞ)

なんだと! オ、オレは逃げたりはせんぞ! どんなことからも!

(・・・・・・ピッコロよ。私はずっと、おまえと、おまえの父親に、詫びたいと思っていた)

なんだと?

(私は神になろうと思うあまり、おまえの父親を心の中から追い出してしまった。
 しかし、それは間違いであった。真の神であろうとするならば、悪の心を追い出すのではなく、
 悪の心と善の心を融合させ、昇華させる形に進むべきであった。

 私のやり方が間違っていたばかりに、おまえの父親は悪の心だけを押しつけられて、
 私から別れ、憎しみを増大させて、大魔王となった。
 そして、おまえは、生まれたときからその憎しみを背負って生きねばならなかった。
 すまないことをしたと、ずっと詫びたかった)

フン、父も、オレも、最初から生まれるべきではなかったと言いたいのか。

(そうだとも言えるし、そうでないとも言える。
 おまえは、悪の心から生まれながら、それにとらわれなかった。
 それどころか、その内に、慈悲の心すら作り上げた。
 おまえの存在は、大きな意味を持っているのだ。
 この同化で、おまえを基本としたのは、おまえの力のためだけではない)

・・・・・・もし、そんなものがオレの内にあるのだとすれば、それはただ、孫悟空と悟飯の、
あの親子の甘さがうつっただけだ。オレがもともと持っていたものではない。

(おまえは気付きたくないだけだ。真実の自分に・・・・・・。
 だが、もうよい。これ以上私は私でいられない。あとはおまえの一部となるのみだ。
 おのが信じるままに、進むがよい。我が、息子よ・・・・・・)

お、おいっ!


ヤツが消えた。
そこにはオレだけがいた。

気を巡らす。
もうヤツの気はどこにも感じられない。
指の先から足の先まで、間違いなく、オレだ。
だが、強大なパワーがこの身に宿っているのも事実だった。


「神様・・・・死なないでください・・」
神殿の忠実な番人の声が後ろから聞こえた。

「もう、神ではない」オレは答えた。

では・・・・・・オレは・・・・・・誰だ・・・・・・。

受け継いだ遠い記憶のなかのユンザビットの情景が浮かんだ。
この星にたった一人でたどり着き、たった一人で生きてきた頃の記憶。
オレは・・・・・・!

「もう神でもピッコロでもない・・・・・・。本当の名も忘れてしまったナメック星人だ」

そうだ。たった一人で生きてきた。あの時からずっと。
ひとつであったときも、ふたつであったときも・・・・・・。


(教えろよ、ピッコロ。仲間じゃないか・・・・・・)

仲間だと・・・・・・?

フン・・・・・・。悪くない。
どちらにしろ、あいつらには面倒をみてやる者が必要だ。

オレは神殿の番人を振り返った。

「いってくる」

神殿の石畳を、思い切りよく蹴った。

                 (了)





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神様になるために、悪い心を追い出して、それがピッコロ大魔王になったっていうのが、
連載当初からえらく気になってました。そんなんでいいのかしら? って感じで。
あと「もう神でもピッコロでもない・・・・・・」というピッコロさんの台詞が
とても好きだったので・・・・・・。ちなみにタイトルは昇華+同化です。

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