照 光  


「よっ、悟飯。おはよう!」
「あ、父さん、おめでとうございます」
「あ、そっか、そっか。おめでとう、だったな!」



(ちがうよ、おとうさん。今日はお正月だから、おめでとうございます、でしょ?)
小さかった頃の自分の言葉が蘇る。
毎年毎年、新年の明けるたび、父の言葉を言い直した。



「悟飯ちゃん、明けましておめでとう。今年もがんばるだぞ」
エプロンで手を拭きながら母が流し台から振り返る。
「はい、母さん。今年もよろしくお願いします」

「しっかし、悟空さの変わらねえのにも困ったもんだ。
 今朝も起きた途端、なんて言ったと思う?
 『なあ、チチ、これでもう、あれ、食っていいんだよな』だと!
 これじゃ悟天ちゃんとぜんぜん変わらねえだ」


僕は思わず吹き出した。
年末の3日間、父は母の厳命で正月料理に近づけてもらえなかった。
母と僕がダイニングの大きなテーブルで色々な食材を準備していくのを横目で見ながら、
悟天と一緒に大掃除に精を出していたのだ。

「だってよぉ。チチの正月料理食うの七年ぶりなんだぞぉ。
 ちっとぐらい味見させてくれたって、よかったのによ」
「だーめだ。悟空さが味見したら、あっという間に一皿なくなるべ」


そんなことねえのに‥‥と不満げな父の顔は、七年前と何一つ変わらない。
少し変わった感じがあるとすれば、それは僕の背が伸びて、父を見上げていないからだ。


この人の‥‥
希望しか映らないその強い瞳も
全てを受け入れてくれる温かい微笑みも
いつも僕の前に差し出され、僕を導き、
そして突き放す瞬間にさえ、僕を信じてくれるその大きな手も‥‥

少しの揺るぎもなく、ありのままに、
今、ここに父がいる‥‥。



いきなり背中にどんっと重みが飛び乗ってきた。
「にいちゃん、おはよー!」
耳元で元気のいい声が響く。

「おはよう、悟天!」
僕は手を上から回して、弟の両肩を掴み、とんと上に投げ上げる。
ふわりと宙に浮いて、前に回ってきた小さな両肩を手で包んで言った。

「でもな、悟天。今日は特別に『おめでとうございます』って言うんだよ。
 1年の始まりの日だからね」
「あ、そっか! あーっ じゃ、今日はもう、あれ食べていいんだねっ」
歳の離れた小さな弟は、ぼんと飛び降りると、今度は父の肩のあたりにとびついた。
「やったー! おとうさん! やっとゴチソウの食べられる日になったんだー」

うーん。そういう解釈もありか。
ま、いいけどね、父さんも、悟天も。


悟天はゴムまりのように、テーブルの方に弾んでいってしまった。
僕の視線に気づいて、父が僕を見つめ返し、ふわっと笑った。

軽く右拳を握り、歩み寄った僕の胸のあたりにすっと突き出す。
ばらりと広げた左掌でその拳を受けた。


今の僕なら、父の手すら、包むように受け止めることができる。


「今年も、よろしく、悟飯」

「こちらこそ、父さん」


陽の光に照らされて、新しい一年が始まる。

大地に降り立った太陽のかけらのような、この人の光に‥‥。


2002年 元旦

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昨年はみなさまに大変お世話になりました。
なぜかドラゴンボールにはまり、同人の世界など何も知らないままにDB文庫へ投稿を始め、思いもよらずホームページなど作成し‥‥。なぜにこの年齢で(笑)こーゆーことになったのか不思議いっぱいの1年でした。

このHPに参加して下さったひゆーさん、ラバランプさん、ゆうさん、るいさんはじめ、多くのみなさんの素晴しい作品の数々に感動し、触発され、そして自分の作品にも温かいお言葉をいただき、そんなこんなでやっていく毎日がひたすらに楽しい‥‥というのが正直なところです。

また今年もこんなふうに幸せにやっていけたら、とても嬉しいと思います。
みなさまどうぞ今年一年、またよろしくお願いいたします。

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