岐路 ―私はロボット 外伝―  


孫悟空が死んだ・・・・・・?
信じられん・・・・・・。
なんということだ!

必ずこの儂が殺してやると誓った
暗殺などという生ぬるい方法ではない。
あの男の最も得意とする土俵で、あの男を殺す。

自らの力が及ばぬ者がいることをその身に思い知らせ、
この儂を怒らせたことに許しを請わせ、
絶望と苦痛にのたうちまわらせて、なぶり殺すと!

ピッコロとの闘い、ベジータとの闘い、あの男の全てを偵察し、
あの男を殺すためだけに、人造人間を作り続けてきた。
その日のために、自らに改造を加えてまで生きながらえてきた。

レッドリボン軍・・・・・・。愚か者の集まりだったが隠れ蓑には絶好だった。
潤沢な資金、労働力・・・・・・。ヤツらを利用して世界を征服し、
この儂の天才を認めなかった科学者どもを跪かせる。
全世界を跪かせてやる!
あの偽善者どもを!

儂のその夢は、たった一人のガキによって壊滅させられた。
この儂の考えた道筋を、よりによってあんなガキに妨害されるなど、絶対に許せん!
あの男は死なねばならぬ。この儂の手で。この儂の手になる人造人間によって!

なのに・・・・・・。
それが、よりによって病死だと!


失敗作の8号のあと、8体の人造人間を独力で作り上げた。
特に16号には、過去、どんなロボットも持ち得なかった戦闘力を与えた。
いざというときは敵に密着し自爆させる。自己保存本能のない全人工製ならではの機能。
この爆発に耐えられる者など、いるはずがない。

そのうえ今までの常識をうちやぶる回路を組み込んだ。
相手の脳内電流を読む回路・・・・・・。敵の考えを読むためだ。
孫悟空の強さは力だけではない。闘いの技術が非常に優れている。
あの男の動きは全てプログラミングしてあるが、相手の動きが読めるに越したことはない。

だが・・・・・・全人工製の人造人間は、儂の憎しみを理解しなかった。
できるだけ残虐にという儂の望みを解さない。殺せというとあっさり殺してしまう。
16号にいたっては、何が悪かったのか、いっさい殺しをしない。
普通の命令は聞くのに、実験動物など殺すどころか逃がしてしまう始末だ。

そのうえこいつの顔を見ていると、なぜか気分が悪くなる。
何かを思い出すような気がする・・・・・・。遠い昔の・・・・・・。

図面上では最高傑作のはずなのに、どうしてこうなるのかまったくわからん。
15号まではどうせ実験体だ。すべて破壊した。
そして16号は眠らせてある。
人間ベースでは16号ほど強力にすることは不可能なのだ。
これが最強の人造人間であることは変わらんだろう。
そう、イザというときは抱きつかせ、自爆させてしまえばいい。

ただ、どちらにしろ人間ベースの人造人間も造らねばならん。
人間ベースなら、儂の望む殺し方をさせられるはずだ。

次の二体の元になる材料もすでに捕らえてある。
たとえ一人で失敗しても、もう片方の改造の時に臓器が使えるよう双子を選んだ。
できれば一卵性がよかったが、しかたあるまい。
若い姉弟。健康で丈夫で、そしてあどけない外見。
そうだ。この可愛らしい顔の化け物に殺される時、
あの正義面がどう変わるのかも、一興となるはずだった・・・・・・。


ここに来て、まさか孫悟空を失うとは・・・・・・。
儂はこれから、どうしたらいいのか・・・・・・。
この憎しみをどうしたらいいのか・・・・・・。


そうか・・・・・・。
何を悩むことがある。
こうなったら人間どもに恐怖を与えてやればいいだけだ。
人造人間を使って適当な都市をひとつ滅ぼし、
それで儂の言うことを聞かせれば・・・・・・。

孫悟空がいないなら、人間ベースの人造人間で充分だ。
むしろ16号はジャマかもしれん。
できそこないの8号と同じことになる可能性もないわけではない。

爆破しておくか。
少しもったいない気もするがな。

儂は16号のカプセルを開いた。
いつものように、巨体が無言で立ちあがる。


この目・・・・・・。この目だ・・・・・・。いったいなんだというのだ?
儂を、哀れむような・・・・・・目・・・・・・。


「16号、テストだ。外に出て、ずっと上空に上がれ」

16号は黙って外に出た。空を仰ぎ、次の瞬間に惚れ惚れするスピードで空に上っていく。
研究室に戻ってレーダーを見る。
高度1万キロ。この位置ならいいだろう。

自爆のスイッチを入れる。

空気中を衝撃波が伝わってきた。

これでいい。

あのおかしな失敗作はコンデンサーのひとつも残らず消し飛んだ。

さあ、あとはあの二人をベースに人造人間を造るだけだ。
儂の新たな最高傑作にしてやる。
まっているがいい。
世の全ての凡人どもよ・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


眠れる姉弟の哀しみ、癒えることなく、
哀しみ去りし後、生まれ出づる憎悪は
枯れない泉の如くその身を満たす。

造られし意味は、すでに土の中に眠る。
小さきものの手足を生きながらにもぎ取る
幼子の非道、行き場を失い。

そうして季節がふたまわり巡りし頃、
人の姿を借りた二つの厄災が飛び立つ。

その手はその身の創造者の血に染まり。
ただひたすらに命という名の玩具を求めて・・・・・・


                     (了)


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このお話は「私はロボット」の本編を読んでいただかないとわかりません。
本編で16号のお話書きました。で、16号のいなかった未来を書いてみたのがこれです。
しかし・・・・・・まさかドクターゲロの一人称を書くことになるとは・・・・・・。
原作だと「わたし」と表記されているんですが、「儂」にしてしまいました。
完全にイッちゃってます、このドクターゲロ。

じつはこれが私が初めて書いた未来編です。
自分でもあきれております。。。。。。

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